スポンサーリンク

ソビエト連邦崩壊時、北方領土関連の国会での議論を調べてみました 我が国の領土の支配を取り戻そうという議論はあったのか⁉

今回は北方領土問題について、過去の国会の議論を調べてみました。まず、北方領土問題についての解説動画を紹介しておきます。

日本人にとって、解決が非常に難しい問題ですが、解決には日本人の世論の喚起が欠かせないでしょう。

さて、現在も北方領土を実質支配しているロシア(旧ソ連)について憲政史家の倉山満さんの以下の書籍に興味深い記載がありました。

ロシアの法則

一、何があっても外交で生き残る
二、とにかく自分を大きく見せる
三、絶対に(大国相手の)二正面作戦はしない
四、戦争の財源はどうにかしてひねりだす
五、弱いヤツはつぶす
六、受けた恩は必ず仇で返す
七、約束を破ったときこそ自己正当化する
八、どうにもならなくなったらキレイゴトでごまかす

思い当たるところが多々あります。非常に厄介な隣国であるという意識が必要でしょう。

さて、この北方領土問題を解決する(取り返す)ために絶好のチャンスであったのが1991年のソ連崩壊です。第二次大戦の終戦時のごたごたの際に北方領土をソ連に支配されたのであるから、ソ連崩壊のごたごたの際には逆に日本が北方領土支配を取り戻す絶好のチャンスだという考え方ができると思います。

この時期の国会での北方領土に関する議論を参議院調査室にご尽力いただいて調べてみました。

かなりの分量になり、この記事後半に掲載しておきますが、まとめると以下の通りです。

主要な論点としては、1991年8月のクーデター以降のソ連・ロシア情勢を踏まえて、

①我が国の北方領土問題解決に向けた方針の在り方、
②ソ連とロシアのいずれを交渉相手として交渉を進めていくべきか、
③対ソ(対ロ)支援の在り方

のほか、その時々のソ連・ロシア情勢についての外務省の認識や交渉の状況等が議論されております。

特に、①に関しては、国会論議を見ている限りでは、クーデター発生前の1991年4月にゴルバチョフ大統領が訪日し、海部総理との間で署名した「日ソ共同声明」のラインで対応していくとの基本的な政府の方針が、クーデターやその後のソ連崩壊を受けて、大きく変わったということはないように見受けられます。

とのことです。絶好の好機を生かして何とか北方領土支配を取り戻す、などのような考え方はなさそうで残念な限りです。

一国会議員として、地道に動きつつ有権者の皆様に領土問題について少しずつ考えるきっかけを与えていければと思っています。参議院調査室の方、どうもありがとうございました。

以下、ソ連崩壊前後の北方領土問題に関する主な動向と国会論議です。

○ソ連崩壊前後の北方領土問題に関する主な動向
(平成3(1991)年4月)
・ゴルバチョフ大統領訪日、「日ソ共同声明」署名(歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島の四島が平和条約において解決されるべき対象であることを初めて文書の形で明確に確認)
(同年8月)
・ソ連におけるクーデター
(同年9月)
・ロシア共和国ハズブラートフ最高会議議長代行訪日(領土問題を「法と正義」に基づいて解決すること等の考え方を表明)
(同年11月)
・中山外相訪ソ
(同年12月)
・ソ連崩壊
(平成4(1992)年1月)
・渡辺外相訪ロ、日ロ首脳会談(ニューヨーク)
(同年3月)
・ゴズィレフ外相訪日
(同年5月)
・渡辺外相訪ロ

○ソ連崩壊前後の北方領土問題に関する主な国会論議

【第121回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成3年8月22日】
【第121回国会 参議院 予算委員会 第2号 平成3年8月26日】
【第121回国会 参議院 予算委員会 第3号 平成3年8月27日】
【第121回国会 衆議院 外務委員会 第2号 平成3年8月30日】
【第121回国会 衆議院 政治改革に関する特別委員会 第3号 平成3年9月13日】
【第121回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号 平成3年9月19日】
【第121回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号 平成3年9月25日】
【第122回国会 衆議院 本会議 第3号 平成3年11月11日】
【第123回国会 衆議院 本会議 第2号 平成4年1月28日】
【第123回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成4年2月4日】
【第123回国会 参議院 外務委員会 第1号 平成4年2月27日】
【第123回国会 衆議院 予算委員会 第12号 平成4年3月5日】
【第123回国会 衆議院 決算委員会 第2号 平成4年3月25日】
【第123回国会 衆議院 外務委員会 第9号 平成4年5月6日】
【第123回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 平成4年5月21日】

【第121回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成3年8月22日】
○草川委員 おはようございます。草川でございます。
昨日来から我々も国民の一人としてテレビにくぎづけになるという、こういう状況でございます。特にソ連の歴史的なクーデターの失敗があったわけでございますが、この失敗に至った原因あるいはまた経過、そしてまたゴルバチョフ大統領の消息の確認、あるいは非常事態委員会のメンバーの現状、そして完全に制圧をされているのかどうか、そのあたりをまず外務大臣からお答え願いたい、こういうように思います。
○中山国務大臣 昨夜来のモスクワにおきますクーデターの失敗と申しますか、この状況について、私は、やはり民主主義、自由というものを求めるソ連の国民が、エリツィン大統領を中心にこのクーデターの武力による弾圧、これに徹底的に抵抗する強い姿勢を示した、また国際世論はこれを支持したといったところに今回の一つの大きな特徴があったと考えておりまして、今憲法秩序が回復しつつあると考えております。
政府といたしましては、今回の政権獲得にとられた一連の措置に対して、武力行使の即刻停止と強い自制を求める等の意見を発表してまいりましたが、事態が我々が期待したとおりに進展をしたことを心から喜んでいる次第でございますが、改めてソ連の国民の決意と勇気に敬意を払いたいと考えております。
この政権奪取の試みの後、どのような形できょうから、ゴルバチョフ大統領がモスクワにもう帰っておられる時間だと思いますけれども、どのような形でこの混乱を収拾されていくのか、あるいはまた、これからこの自由と民主主義を基調とする新しい形のソ違というものが新思考外交をさらに広げられて、我々の国とも領土問題を解決して平和条約を結ぶという姿勢を一層強められることを心から期待をいたします。
なお、経過等具体的な事実につきましては、政府委員から御答弁をさせていただきます。
○兵藤政府委員 事実としての経過は、昨夜来の経過は御存じと思いますので、先生の御下間のうちの、今回のクーデターがこういう形で終結しつつある背景と申しますか、その点について一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。
なお、まだ不透明な点が若干ございます。例えば八人の国家非常事態委員会のメンバーが現在どうなっているのか、どこにいるのかというような状況については、なお確たる情報がございませんというようなことも含めまして不透明な点はございますけれども、現段階で申し上げますと、例えば、このクーデターを起こしたこれらの関係者のクーデターの計画というもの、あるいはその具体的な施行の段取りといったようなこと自体の中にいろいろな問題点があったように見受けられると思います。
それから、この指導者たちの間の結束がどの程度の結束であったのかという点につきましても、これに疑義を抱かせるいろいろな情報があることは御存じのとおりでございます。
それから一方、エリツィン大統領の指導のもとに、六年間のペレストロイカ、グラスノスチの持つ価値というものをソ連国民が肌で体得していた、その結果としてのモスクワでのこの非常に強い抵抗というものが一つあった。
それから、一枚岩、一糸乱れぬ統制を持つとされていたソ連の軍の組織、指揮命令系統、KGBの指揮命令系統というものにもいろいろな亀裂があるということが図らずも露呈したという要素もあろうかと思います。
それから、大臣の御指摘のございました国際世論というものがこれを厳しく糾弾をしていったというようなこともその背景としてあろうかと考えておる次第でございます。
○草川委員 次は、総理にお伺いしたいと思うのですが、ただいま外務大臣の方からも、また局長の方からも、エリツィンの指導のもとに、あるいは中心にというようなお言葉がございました。エリツィン共和国大統領の果たした今回の役割というものは私も大変大きいものがあると思いますし、それからまた、今後の政治的な基盤は強まると思います。そういうことを含めまして、総理は今回のクーデターの失敗についての認識をどのように受けとめられておられるのか、お伺いをしたい、こういうように思います。
○海部内閣総理大臣 エリツィン・ロシア共和国大統領の果たした役割というのは、クーデター発生直後から、テレビの映像なんかにもあらわれておりますように、文字どおり先頭に立って、憲法の手続に背反する行為に対しては民衆は立ち上がれということを体を張って行動したわけでありますから、私も昨夜遅くようやくエリツィン氏と電話回線が通じましたので、そのときにまずそのことを高く称賛をいたしました。同時に、エリツィンの方からは、国際社会の世論というものが、そういったペレストロイカに対して、保守派からのあるいは力によるこのような違法なクーデターに対して国際世論が支持してくれたということが大きな心の支えになっておる、日本の国民の皆さんや日本の支援というものも、声援というものも大きに感謝しておるということを率直に言っておりました。
ただ、その時点ではまだ、軍隊は撤退しつつあるけれども、完全に見通しが定着しておらないことと、一つの懸念としては、ゴルバチョフ大統領のところへ出ていった、当時は八人の最高会議の議員という言い方を私にはされたのですけれども、それとゴルバチョフ大統領のところで退陣の署名をしろというようなことが行われるのじゃないか、自分は、ゴルバチョフ大統領は絶対署名しないものと信じておる、健康上の理由でやめたということになっておるが、絶対にゴルバチョフは健康だということを繰り返して言っておられました。そういった連携と心の支えというものが今度のクーデターをこのような形で終息に向かわせた。
先ほどの情報では、ゴルバチョフは日本時間のけさの八時ごろにはもうモスクワに戻っている、こういうことが確認されておりますし、また、つい先ほどブッシュ大統領からも電話がありまして、自分は今ゴルバチョフ大統領と直接電話で話して、彼の安全なこと、そして彼が状況を掌握していることを確認をした、電話がつながったからおまえにも伝えておくけれどもということで、いろいろな話もございました。
今後、どのように落ちついていくかということは、まだ不透明な点が確かに残っておりますし、最高会議においてはやはり裁判にかけろというような決議がきのうもなされておるわけでありますから、ソ連の国内の情勢がどうなっていくかということについてはまだ不透明なところがありますけれども、国際社会でこういった民主化の努力というものが確保されていくように、また冷戦時代へ戻ることはもうこれで絶対ないと思いますけれども、そういったこととともに、ペレストロイカや新思考外交の世界的な適用が、ゴルバチョフ大統領の復帰というのでしょうか復権というのでしょうか、それによってさらに確実に進んでいくようになることを強く期待し、日本もそれに支援をしていかなければならぬという考え方をここで申し述べておきたいと思います。
○草川委員 ブッシュ大統領からも電話があったというお話をただいま聞いたわけでありますが、国際社会の、特に西側の果たした役割、支援の役割が今回大変大きかったというのが今も御答弁の中に出ておるわけでございますが、昨日私も傍聴をしておりまして、与党の中からも、日本の態度は諸外国に比べ一歩おくれている、歯切れが悪い、国際的なイメージも悪いじゃないかという大変手厳しい批判があったようでございますが、私は改めて総理に、今のブッシュ大統領のお話あるいはまたエリツィン大統領のお話、いろんなお話を聞いておるわけでございますが、日本の果たした役割というもの、国際的な西側の一員としての役割について自負があるかどうか、改めて総理の御見解を賜りたい、こう思います。
○海部内閣総理大臣 御意見や御批判がいろいろあることについては、これは率直に聞かなければならぬと思いますが、今回のことに関しましても、事態が起こりました第一報を受け取ったときはちょうど政府・与党連絡会議のさなかでございましたので、健康上の理由でやめたとか、戒厳令がしかれたとか、錯綜するいろいろな情報が飛び込んできました。直ちに安全保障議員懇談会を開いて情報収集を始めるとともに、そして政府の態度をきちっと決めて、このような憲法違反の極めて強い法秩序に対する異常な事態、これに対しては深刻に受けとめておるという懸念を表明するとともに、さらにこのことについて人道上の問題からゴルバチョフ大統領の生命の保証を強く求めたり、あるいは武力行使はこれは絶対に停止すべきであるということを、ソ連大使館を通じてあるいは政府声明を通じてこれを全世界に主張しましたし、また、きのう予算委員会が終わった直後に私の方からコール首相に電話で話しておるときに、アンドレオッチ首相からも電話がありまして、ヨーロッパに対する問題や日本の考え方等についても率直に伝えて、そういった交流の中で、基本的にこのような考え方、このような態度で、ソ連に対する現状が変わるまではこれは支援も当面停止するということで圧力をかけるとともに、やはり正当に選ばれた民主的な手続に従った政権の存在というものを人権とともにきちっと国際世論が支持していく、それには日本としてはきちっとした態度を表明し、対応をし続けてき先考えております。
○草川委員 大変国際的な首脳と連携をとって行動してみえるという御答弁でございますが、さきのゴルバチョフ大統領の来日で北方領土問題が進展をしなかったのは、ソ連国内での保守派に配慮をせざるを得なかったのではないか、こういうことになっておるのではないかと思うのですけれども、今回のこの保守派のクーデターの失敗、特にこの保守派の主張というのは、他国からも国境線の譲歩を求められている、これに我々は断固としてというような発言もあったようでございますから、その保守派が失敗をしたということは、北方領土問題に進展の期待というものができてきたのではないだろうか、我が国にとっては、こういうように思うのでございますが、その点の御見解はどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。
○海部内閣総理大臣 四月に東京でゴルバチョフ大統領と日ソ首脳会談を、時間を延長し会合の回数も六回にしてやりましたのは、ほとんどがこの領土問題をどう認識するか、これを解決して平和条約を結ぶことはどうするかという点に大半の時間を費やしたと言って言い過ぎではありませんけれども、きょうまで公式文書に出ておらなかった歯舞、色丹、択捉、国後島、この四つの島の名前を明記する、これは共通の認識で書きましたし、領土問題を解決して平和条約を結ぶことが両国にとって一義的に大切なことであるという認識もきちっと書き込むことができました。
ただ、今から思えば、対談を通じて、ソ連国内にもいろいろ意見がある、日本に日本国民の世論があるように、ソ連の国内にもいろいろな意見や考え方があるんだということで、四島の主権を直ちに認めるという共同声明にならなかったことは、今にして思えばそのような国内の背景や国内の状況等も作用しておったんだろう、私も率直に受けとめましたし、その後の学者や評論家の皆さんの意見等もそういったことになってきておりました。
今度のあの三日前の異常な事態のときには、領土問題に関する幾らかの発言、声明がありましたから、あれは全部無効であるということがまたきのうの最高会議で否決されておりますし、また、ゴルバチョフ大統領の復権によればそれはもとへ戻るわけでありますから、やはり共同声明の原点まで戻ると思いますけども、ただ一つ、七月のロンドン・サミットのときに、ソ連の新思考外交がユーラシア大陸の西の端だけで結実するのではなくて、アジア・太平洋でも、すなわち東でも結実することが世界の平和と安定のためには大切だから、北方領土問題というのは日本とソ連の二国間問題ではなくて、サミット諸国共通の、要するに世界の平和と安定のために大事なことなんだという認識が共通の認識として持たれたわけでもあり、そのことはゴルバチョフ大統領自身がその直前の私との会談や七プラス一と言われる全体会議でも繰り返し主張されたテーマでありますから、記憶に新たなところだと思います。
私は、引き続いて原則に従ってソ連のペレストロイカの正しい方向性を支援していく基本的な態度で拡大均衡で進めていきますけれども、あくまでまだ平和条約が結ばれていないということは非常に異常な事態だと言っても言い過ぎではありませんから、このことに関する共通勿認識をゴルバチョフ大統領との間に持っておりますから、さらに積極的にどうしたらいいのか、第二次世界大戦で決まった戦後の国境線を力で変えてはいけないというヘルシンキ精神というものはこれは私も尊重しますし、そうであらねばならぬと思っておりますが、北方領土のことは、委員もよく御承知のように、第二次世界大戦が終わった後において、スターリンの膨張主義の過ちによって、八月の二十九日の指令によって九月の三日までかかって戦後の平和時になってからの不法な占拠であったということは、ヘルシンキ・プロセスからいってもこれは全く別個の次元の戦後の不法占拠でありますから、これに対しては強く主張をしていきたいと思っております。
○草川委員 ですから、なるがゆえに、総理の御答弁なすったような情勢なるがゆえに、この今日のチャンスを利用して対ソの経済支援というものを改めて考え直すべき時期が来たのではないか、そのことによって重い扉というものをあけていくことが私は必要ではないかと思うわけであります。特に、このクーデター問題について、アメリカを初め先進各国は経済支援の凍結を打ち出していたわけでありますけれども、これが全面的に撤回をされる可能性というのは出てきたと思うのです。そういうことを含めて、私はこのロンドン・サミットで踏み込めなかった対ソ金融支援など、西側諸国の本格的な支援を改めで打ち出す時期が来たのではないか、こういうような考え方を持っております。
そういう考えをひとつ中心にしながら、私は日本として新たに対ソ支援協議の首脳会談というべき、これは外相レベルでも結構でございますけれども、そういうレベルでの会議を開催するというようなことを日本は積極的に提議をしてもいいのではないか、こんなように思うのでございますが、その点はどのようなお考えか。あるいはまた、そのために、ソ連情勢が一段落をするということを見込んで、日本政府としてソ連に特使を送って、私が先ほど申し上げたようなことを中心に対ソ外交を展開されたい、あるいは世界の一員として頑張っていただきたい、このように申し上げたいと思うのです。
○海部内閣総理大臣 情勢が大きく変化をしたわけでありますから、日本としても、ソ連の今後に対してどのような対応をしていくかということは御指摘のように極めて大切であります。
なお、日ソ共同声明のときに十五の協定を結んでおりますけれども、ペレストロイカ支援を含める技術協定や、あるいはそれに基づいて既に実行し始めた軍民転換への調査団なんかも既に行っておりますけれども、そういった拡大均衡の考え方を一層進めると同時に、新しい陣容、新しい事態にどのように対応するかということで、しかるべきレベルの接触、交渉はもちろんのこと、日ソの平和条約締結に向けてのことも共同声明に向けての大事なテーマでありますから、あらゆる手段を使って積極的に対応していきたいと思っております。

【第121回国会 参議院 予算委員会 第2号 平成3年8月26日】
○片上公人君 北方領土問題への波及の問題でございますが、今回の事態によりましてソ連の各共和国の独立性が強まることになって、北方領土問題の解決にこれほどのような影響を生ずるものと政府は考えていらっしゃるか。
また政府は、この際政経不可分の原則を緩和して、連邦、ロシア共和国の双方に、北方領土問題を解決し、日ソ平和条約を締結する動きを加速化する考えはないか。このことを伺いたいと思います。
○国務大臣(海部俊樹君) 平和条約を締結するということは、隣国との関係を正常化する一番わかりやすい方法で、領土問題を解決して平和条約を結ぶその作業を第一義的に大切なものと共通の認識をしようというのが共同声明の趣旨でありますから、その線に従って加速化しなきゃならぬのは当然だと思っておりますし、このことはゴルバチョフ大統領とのクーデター復帰後の電話のときにも、そういった基本的な考え方は伝えてありますし、そのことはゴルバチョフ大統領もわかったと、こう言っております。
同時にまた、四月のときも、ロシア共和国の外務大臣が終始ゴルバチョフ大統領についてきて首脳会談には出ておりました。小人数会談のときは席を外してもらいましたけれども、それ以外のときは絶えずロシア共和国の外務大臣が同席しておったということもあり、また今度ロシア共和国の首相がそのままソビエト連邦の首相の地位につくということにもなれば、その辺のところは相交わる円のようなものですが、両方の立場に対して日本政府としては言うべきことも言い、平和条約の締結は今の状況ですと連邦政府ですけれども、共和国がどれだけの権限を持つのか、どれだけの参加をしようとするのかはロシア側の事情だと思いますが、十分見きわめて対応していきたいと思っております。

【第121回国会 参議院 予算委員会 第3号 平成3年8月27日】
○寺崎昭久君 対ソ外交についての質問でありますが、ソ連共産党が解体する、そしてソ連が民主化あるいは市場経済の方向に向かいつつあるということは歓迎すべき出来事であると存じます。また、情勢というのはいまだ混沌としており、流動的でありますから、この段階で日本の対ソ外交あるいは経済支援の詳細まで求めるのは難しいかと思いますが、さりとて手をこまねいているわけにもまいりませんので、現段階における対ソ外交あるいは対ソ支援について、とりわけ北方四島返還絡み、平和条約絡みで総理の見解を伺わせていただきたいと思います。
○国務大臣(海部俊樹君) 対ソ外交の基本につきましては、ソ連がずっと進めてきておる一連のペレストロイカとか、あるいは新思考外交という改革がクーデターの挫折、失敗、そして昨日のゴルバチョフ大統領の反省を込めてのより一層強力に推進させるというあの演説を聞いても、基本としてはきょうまで同様にソ連の自由と民主主義と市場経済への普遍的な価値を共有する国として、我々と国際社会の中で協調できるようなその改革に支援すべきであるという基本は、これは変わらないと思います。
それから、おっしゃるように今刻々情勢も変わりつつありますし、特に気をつけなきゃならぬのは連邦と共和国との権限関係であり、その連邦条約の問題についても今動きつつあるさなかでありますから、斉藤外務審議官をモスクワに派遣いたしまして、しかとその状況を調査し、確かめてくるように今指示もいたしております。
具体お触れになった北方領土の問題につきましては、これは四月の日ソ首脳会談で共同声明を発出して基本方針は確認してありますが、七月のロンドン・サミットのときにも別にゴルバチョフ大統領と首脳会談を持って、それ以後の情勢、例えば軍民転換の調査団を出す話とかあるいはいろいろ技術研修生を受け入れるとか、十五の協定についての日本側の対応や進捗状況、そういったものを伝えるとともに、ゴルバチョフ大統領にもそのときの声明に従った、とにかく平和条約を絡んでいない二国間関係というものは正常ではないわけですから、領土問題を解決して平和条約を締結するという方向に向かってさらに一義的にこれを進めていこうということは確認をいたしてありますから、領土問題については共和国と連邦政府の権限の問題等不透明な部分はあるにしても、いずれにしてもこれには適切な対応をしながら所期の目的を達成するために、拡大均衡の中で精力的に続けていかなければならない問題である、このように基本的に受けとめております。

【第121回国会 衆議院 外務委員会 第2号 平成3年8月30日】
○新井委員 ソ連邦の政変を受けて我が国としてやはり一番最初に考えることは、この政変と北方領土の関係というふうに思います。北方領土がこの政変によって返還されるには我が国がどういう作戦を新たにとるのか、こういうことをもう一度考え直す必要があるんではないかと思います。
ロンドン・サミットあるいは米ソ首脳会談で、北方領土が日本の正当な領土であり、また、その返還なくしては対ソ大型金融支援といいますか、直接投資を含む大型金融支援はないということがサミット参加国の合意になっているのが現状であります。その中でこの政変が起きた。そういうことで、我が国としては注意深く物事を運ばなければいけない、そういう時期に差しかかったと思っております。
まず最初に外務大臣にお聞きしたいのですが、新連邦条約をめぐってこの政変が起きたと言われておりますが、新連邦条約が締結される、似たものが締結されるとして、我が国の北方領土の交渉相手は連邦であるのか共和国であるのか双方であるのかということにおいて、これからの政策の重きをなす方向が変わってくると思うのですね。新連邦条約を読みますと、国境線の変更というのは連邦と共和国の共管となっています。外務省の考えでは、連邦の方が強いんじゃないかという見方を、これは政変の前ですけれどもしておりますが、一方、この新連邦条約の資源のところを見ますと、土地の所有権というのは明らかにこの共和国の所有物である。そうなりますと、北方領土自体の所有権は明らかにロシア共和国に属している、境界線の変更は共管である、どうも共和国の方の主権が北方領土の問題に関しては強い、そういう色彩が強く見られるような気がしておりますが、大臣のお考えはいかがでございましょう。
○中山国務大臣 連邦条約案なるものが二十日に五カ国と署名がされるという一応の予定がございましたが、それがクーデターによって一挙に延長、延期されるという事態に相なっておることは御承知のとおりでございます。今お述べになりましたような点から、政府といたしましては、連邦の国境線にかかわる諸外国との交渉権及び条約締結権は引き続き連邦が有しているという認識を持っております。一方、ロシア共和国は、実態面で持つ重要性が増大していくことは事実でございまして、政府としても同共和国との関係をこれから強化していくという考え方でございます。
いずれにいたしましても、改めてこの新連邦条約の案が練り直されました際に、もう一度国境線の画定問題、領土の所有権問題等につきましては、新しいソ連の連邦条約が成立した段階において政府としては対応する考え方を確立しなければならないと考えております。
○新井委員 大臣のお答えになるとおりだと思いますが、今後の民主化、そして連邦と共和国の力関係を推測しますと、一つ言えることは、やはり共和国の権限が強くなる。特にロシア共和国は北方領土を持っております。もう一つはやはり民衆の意思、今までのように独裁者が例えば返すといって返せるというものじゃない。それは、ことしのゴルバチョフさんの来日のときにも足かせになったのでありましょうけれども、いわゆるロシアの民衆の中に北方領土は日本のものであるという世論が起きなければ、これからの民主化したソ連邦あるいはロシア共和国というのは、幾ら首脳と会談をしても、この民衆の意思を無視して北方領土返還ということはできないと思うのです。
その観点から見ますと、いわゆる極東、ハバロフスク地方、沿海州あるいはサハリン州、こういう極東との交流というのが必ずしもその観点がらは、なされてはおりますけれども不十分ではないかという気がしてなりません。最近、外務省の方で行っておられることは私も承知しております。各極東やサハリン州の知事との意見交換あるいは極東を重視したミッションの派遣等を行っておりますが、さらに極東のマスコミ、インデペンデントなマスコミがありますから、そのマスコミ、それからテレビ局、そういうものともう少し接触を強く図る。
それから、日本の方から北方領土に関する日本のビデオ作成、ロシア語でつくったビデオですね。正当な日本国の権利というものを主張する、そういうビデオを出すことは何も恥ずかしいことはありませんから、そういうものもやはり極東のマスコミや新聞社やテレビ局にどんどん、日本に技術支援のときに招く人も青年で二百人、三百人来るわけですから、そういう人もどんどん入れて、なるべくマスコミのリーダーシップを持った人をたくさん招いて、北方領土を含めたロシア語のビデオを持って、日本のハイテクやそういう向こうが望んでいるような直接投資、工場、そういうものもあわせて渡して帰す、あるいはそれをつくって現地で渡す、そういういわゆる世論に対して、日本に返還は当然なんだという、味方をつける運動を起こす必要があると考えております。
これについては、大臣どうお考えですか。そのために予算獲得もぜひすべきだ。現在の技術支援の範囲内でできると思いますけれども、どうでしょう。
○中山国務大臣 今委員からお話しのように、昨年来、都甲北海道大使を極東地域、サハリンもずっと訪問をさせて、いろいろと現地の指導者と意見の交換をさせておりますけれども、御指摘のように、極東地域あるいはサハリン地域におけるマスコミあるいはオピニオンリーダーの方々に日本の事情をよく御理解いただくと同時に、我々が抱えている二国間の問題の解決がいかに日ソのこれからの協力発展に貢献をするかということも踏まえて、歴史的事実も十分紹介していくようにこれから努力をさらに続けなければならない、御指摘のとおりだと考えております。
○新井委員 それでは大臣、ひとつそういうマスコミあるいは向こうの青年、そういうものに対するプレゼンテーションというものを、ビデオを含めてよく検討していただきたいと思います。そういう時代に入ったというふうに思います。
あともう一つは、北方領土と関連しますのは、ソ連邦の立場から見ますと、やはりバルト三国と北方領土というのは、私から見ればスターリンの対外政策の明らかな過ちの連結した一つである、こういう見方は決して間違いではないと思うのですね。それで、そのために今、例えば一九四一年の大西洋憲章、そして連合国勝利の後の原則を決めた連合国憲章の中には明らかに領土不拡大、戦勝によって領土不拡大という項目がありますけれども、それを破ったのがまさにヤルタのルーズベルト、スターリンの秘密協定による、要するに、いわゆる北方領土の引き渡しと書いてありますけれども北方領土であり、もう一つはモロトフ、リッペントロップの秘密協定のバルト三国だと思うのですね。ですから、このバルト三国に対する日本の外交姿勢というのは、人の国のことではなくて我が国のことなんです。ですから、バルト三国に対してソ連邦がどういう態度をとっているかということは、翻って北方領土に対してどういう態度をとるか、まさにこれは「誰がために鐘は鳴る」のではないという切実な問題をバルト三国というのは持っていると私は思います。
そういう中で今、バルト三国がそれぞれ独立宣言を出して、しかもこれをもうスウェーデンとかデンマークとか承認していっているわけですね。ヨーロッパ諸国の中にも、承認するまでもない、もともとあれは独立国なんだ、アメリカとかそういうふうに思っている、措置している国もあって、もう承認するまでもなく独立国だと考えている国もあるわけですね。もう一方ではスウェーデンやデンマーク、新たな承認を早々と打ち出している。
私はこの機会に、やはり北方領土、北方領土というなら、当然バルト三国を日本が早期に一日も早く承認をして、それで、返す刀でスターリンの対外外交の誤りを全部直してくれ、そうなると必然的に北方領土を返還しなければいかぬというのが論理的な筋道だと思うのです。これは大臣、バルト三国の承認を一日も早くやっていただきたいと思いますけれども、お考えはどうでしょう。
○中山国務大臣 政府は先日、バルト三国の独立声明について、これを支持するという政府声明を出したわけでございますが、九月一日から大阪におります新井大使、これを団長にしてバルト三国の政府をそれぞれ訪問する予定にいたしております。そういう中で私どもは、このミッションは一週間の予定で帰ってまいりますが、帰国次第そのミッションとの意見の交換をして、できるだけ早く御指摘のような措置をとるようにしたい、このように考えております。
○新井委員 大臣、いつも日本はおくれる、おくれると言っております。特にこのバルト三国の場合は北方領土との密接な関連性というものはだれの目にも明らかでございますので、これは後で後でという形にならないで、我が国のことだと思って、今言われたとおり、ひとつ承認を早急にやってくださるようにお願いする次第でございます。
それからもう一つは、大型金融支援という問題はロンドン・サミットのときでも先送りになってまいりました。我が国は当然政経不可分という原則を貫くべきであると私は考えておりますし、それは我々決定したことでもございますし、そのことに全く変わりはございません。しかし、この政変の中の情勢でちょっと最近弱まったと言われておりますが、ドイツやフランスを中心として大型な金融支援を何とかやっていこうじゃないかという勢力が極めて強くなっていることは言うまでもない事実だと思います。その中で、我々の方もはっきりとその前提条件をもう少し言って、このドイツやフランスが本当に世界全体のためにというよりは、やはりドイツも東ドイツに置かれた三十万のソビエト兵というような問題を抱え、三百億マルクを出して、要するに国益なんですね、彼らの言ういわゆる大型金融支援も、自分のところで持てないという。明らかにみんな国益でしゃべっているわけですから。フランスもそうですね。ですから日本も、ああいうサミットの場で日本だけ北方領土と言うとおかしい、そんなこと全然おかしくありませんよ。外交の基本は、自分の国益にかなったことを主張していって大概のものをとるということはヨーロッパ諸国と一緒なんで、そういうことをぜひやってもらいたいのですが、このままずるずると大型金融支援に引き込まれていく可能性があるのじゃないかと思うのですね。
この間政府の方でそれに対する歯どめ措置ということで、例えば贈与というのは行わないとか、それから国際機関では、例えばWHOに医療機器を買ったりするのは本当はあるのですね。しかし、IMFのルーブル安定化資金のような一種の完全なお金をやってしまうというようなことはできない。いわゆる出資ですね、そういうのはできない。物を買うならばいいかもしれない。あるいはまた考えようによっては食料援助一億ドルというのも、これは百四十億円という巨額なお金ですけれども、金融支援といえば輸出入銀行の貸し出しですが、何らかの形で、こういう形でお金がどんどん出ていく可能性もないではない。
そういうなし崩し的に、気がついてみるともう現在でも、この間大臣ちらっとおっしゃいましたけれども、多分日本が今持っている対ソ債権というのは百億ドルくらい実はあるのじゃないかと私は思うのです。オフィシャル、パリ・クラブやBISの方で合わせると八十何億ドルくらいと出ていますけれども、実際はカウントされていない細かいのがありますから、百億ドルというと一兆四千億円ぐらい実は日本というのは対ソ債権を抱えていると思うのです。これでも実はほとんどトップクラスなんですね。もう現在ですらやらない、やらないと言っているけれども、ドイツ以外の国よりはすべて多分大きい債権を持っているのじゃないかと思うのです。
そういう状況で、この政変に乗じてなし崩し的に大型金融支援に行ってしまって北方領土問題がいつまでも解決されないということを一番恐れているわけですけれども、これについてはどういうふうに態度すればいいと大臣はお考えになっておられますか。
○中山国務大臣 委員御案内のように、昨年のヒューストン・サミットではドイツ、フランス、それぞれソ連に対する金融支援を強く要請いたしましたけれども、私は率直に申し上げて日本は北方領土問題を抱えておりますし、ECの加盟国としての拘束もありません、そういうことで、この北方領土問題が解決されることが日ソ間の協力の前提であるということを強く主張し、それが首脳会議でも議事録に、報告書に載せられたという経過がございましたが、一年たったことしのサミットでは各国の首脳、特にブッシュ大統領やメージャー首相あたりから、北方領土問題の解決というのが必要なんだということの発言が先方からございました。私どもは、やはりこの領土問題を解決して日ソ間の拡大均衡をやって平和条約を結んでいくということが、どんな理由があろうともこの原則を曲げるわけにはいかないという姿勢を堅持しております。
今お示しのように、大型の金融支援をやるのかどうかということにつきましては、先般のロンドン・サミットでも大型金融支援はやらないということが申し合わせになっておりますし、昨日ロンドンから報告が参りましたシェルパの会合でもそのような考え方でございます。我々がやるべきこととすれば、それは来るべき冬に大変苦労が多かろうと思う人道的支援、これを当然やらなければならない、このように考えております。
○新井委員 大臣、日本は、サミットでもそうですけれども、技術支援、人道的支援、それから同じですが、知的な支援はやると言っているわけです。これは非常にいいことなんです。それならば私は、日本は対ソ経済、要するにテークオフのプログラム、これを日本の経済学者あるいは財界人の知恵をかりて、要するにソ連経済、ソ連を視察して、ソ連の経済はどうしたらテークオフできるのか。これはIMFなんかが入ったりしていますけれども、やはりこれは日本なんですよ。IMFじゃなくて、戦後これだけの経済成長を遂げた日本という国がソ連に対して経済復興プログラムを持っているのか持っていないのかということが大切なんですよ、大臣。ゴルバチョフさんのやり方を見ていると、日本という国自体は余り大切にしなくても周りをぎゅうぎゅう締めてコンと頭をたたくと小切手だけぼんと出てくる、こういう見方で見ていることは確かですよ、今までのゴルバチョフさんなんかの日本に対する姿勢は。
しかし私は、大型金融支援、もちろん今ソ連に必要なのはお金よりもむしろ直接投資ですね。要するに、例えば軍需工場に対して日本の三菱重工や新日鉄やあるいはロボット製作やという会社が入っていって出資をして、それは当然貸し付けを伴いますけれども、こちらから技術者が行ってそういうことをやらないとソ連の経済というのは浮揚しないと思いますし、それから今のような例えば基礎物資は公定価格を上げて、ぜいたく品は自由価格で好きなようにさせて、間は価格上限を決めてなんという自由経済とは絶対相入れないようなシステムはだめだと言えるのも、やはり資本主義経済の中の学者や経済人だと思うのです。
そういう、いかにしたらソ連という国が経済的にいつまでたてばテークオフできるかというプログラム、これはゴルバチョフ側にもエリツィン側にもありますけれども、やはり日本という国が行ってそういう対ソ経済復興プログラムというものを作成して、これでうまくいくでしょう、日本ができることはこれだけです、しかしこのお金は出しませんよ、こっちが、北方領土の主権を回復しない限りできないけれども、こういうプログラムがあるのじゃないですか、これを世界に提示し、ソ連に提示したら私は一番いいのじゃないかと思う。これはそんなお金もかかることではないし、今の技術支援程度のお金でもできる可能性がありますので、そういうプログラムをつくるお考えはないでしょうか。
○中山国務大臣 先般来の日ソ外相会談あるいは首脳会談においても、ソ連側が戦後の日本の復興がこんなにうまくいっているということに対して、日本の持っている繁栄の秘密というのを、ノーハウを知りたいというのを私も直接伺っております。渡辺外務審議官がこの日曜日に東京へ帰ってまいります。ロンドンでのシェルパの会合の結果を踏まえて関係各省庁と協議を直ちに開くようにさらに今準備を進めておりますけれども、これからソ連の経済をどういうふうに軌道に乗せていくかということにつきましては、IMFといったような機関、先日調査に参りました四機関でございますね、そういう機関の意見あるいはサミットの加盟国の経済専門家の意見等を踏まえながら、日本政府としても、日本政府ならどういう考え方をしたらいいのかということは当然私どものこれからの日ソの交渉の中においても、日本がアドバイスできるものは大いにアドバイスをする、それこそ知的協力であり技術支援である、このように考えております。
○新井委員 これは大臣、細かくはあれなんですけれども、要するに今のソ連の経済は見ているともうめちゃめちゃになっているのですね。結局ゴルバチョフさんが所得倍増計画を立ててうまくやろうとしたのですけれども、投資過剰になってしまう、消費物資が回ってこない、それで価格を抑えている、やみのインフレが進行する、札を刷り増す、インフレが起きる、さらにインフレを生んでいく賃上げが起きるで、しかも軍需から民需への転換というのは思っているほど簡単じゃない、こういう実際壊滅的な状態になっているわけです。
ですから大臣、もう一歩突っ込んで、これはお金がかかることじゃないのです。要するに専門家の皆さんに例えば二カ月行っていただくにせよ、技術支援の一億五千万円ですか、予算もありますし、多分大きなお金がかかることじゃない。要するに頭を使えばやれることなんですね。外務省主導で対ソ経済復興のプログラムだけは提示する、こういう主導をされるお考えはないでしょうか、私は非常に大切なことだと思いますけれども。
○中山国務大臣 ソ連の経済復興プログラムといいますか、それはソ連側から先般御案内のようにパブロフの案とヤブリンスキーの案が出てきたわけでありますが、このいずれをとってみてもなかなか問題が多過ぎる、こういうことでこの案を下敷きにやるということはとても難しいだろうと私は思います。
やはり一番合理的なのは、昨年の末に発表された国際四機関の報告書をベースにして、ソ連の経済の専門研究所が恐らく各国にございますから、日本も民間でも随分研究しておられる組織がございますから、そういう知恵をいかに結集していくか。日本は日本なりに極東地域に近いわけでありますから、日本の考え方もおのずからそういう地域の距離に基づいて意見が出せるのじゃないかな。そういう問題につきましては、いずれにいたしましても日本がひとり独走するのではなしに、各国と協力をしながら、日本も日本の考え方というものを十分示す機会を持たなければならないと考えております。
○新井委員 これでこの関係を申し上げませんが、この問題は日本が独自にやっても、プログラムを出すことぐらいはかえっていいと私は思っています。何でもかんでも協調、それはプログラムをつくってどこの国がどれだけ支援をするかということも、頭の問題ですから、何も独走ということじゃなくて、知的には独走しても構わないのですね。ですから、外務省の関係機関であれやはりそれをつくって、ソ連経済を本当にどうさせたら復興させ得るか、日本人はこれぐらい全力を絞って考えているということは、対外協調、対外協調というような話では全然ないと私は思いますので、これは大臣、もう一回考えてみていただきたいと思います。プログラムをつくるということですから。
時間もございませんのでちょっと人道的支援の問題ですが、一億ドルの食糧援助の計画がございましたが、バルト三国のことが起きたりしてペンディングになっているわけですね。そういううちにこの政変が起きて、今度はいつの間にか三億ドルという記事が、これは新聞記事ですから別にお聞きすることもございませんが出ております。この一億ドルというものの約束してある食糧援助の実施は一体いつになるのか、ずうっとペンディングだらけなので一体いつ実施するのか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
○河上説明員 ただいま御質問の日本輸出入銀行の対ソ連緊急食糧等支援のための一億ドルの融資の件でございますけれども、これにつきましては、昨年十二月にソ連の緊急的な支援という人道的な側面を考慮いたしまして決定したものでございますが、その後交渉を続けておりまして、現在、輸銀とソ連側で融資条件等について交渉を行っている、こういう状況でございます。
この一億ドルの融資につきましては、ただいまお話しいたしましたとおり人道的見地から行うということでございまして、こうした性格も十分考慮いたしまして、またソ連の国内の状況の推移ということも十分踏まえまして、今後適切に対応してまいりたいと考えております。
○新井委員 これは時間がないので意見だけ申し上げますけれども、この一億ドルのいわゆる輸出入銀行の融資の形をとった食糧援助ですね、日本から物を買って。これは、ことしの秋にもまた食糧援助の話が出てくるのですね。私は、もうここまで来たら秋の食糧援助と一緒に計画を練った方がいいのじゃないかと思いますよ。
といいますのも、この食糧援助の中で相手の在日のロシアの代表部から出てきているリストは、例えば家畜用の薬剤とか、それからハム、ソーセージ。用の包装材料とか、たばこのフィルターとか、必ずしも冬に予期されている食糧不足、これが事実とすれば、それに直接対応するようなものじゃない、いわゆる生ぬるい感じの要求が多いのですね。加工用部品みたいなものなんですね。ですから、これは結構ずるずるやっても、去年の十二月からもう一年近くなるのだけれども、ずるずるやっても一向に差し迫った感じにならないのです。
ですから、こういうことをだらだらやるなら、しっかりとした要求リストをもう一回出し直してもらって、本当に庶民の手にその援助した食糧が行っているかということもちゃんとモニタリングをして食糧援助をやってもらいたいと思います。
また、食糧援助はモニタリングチームを送られるということですけれども、悪いうわさだと思いますけれども、送ったラーメンが外貨ショップに並んでいたとか、必ずしも対ソ援助がちゃんと本当に必要な庶民に回っていないのじゃないか、そういううわさも実は今すごくあるものですから、そういう意味で行き先をも踏まえた上で適切な、早急にこれは対処していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○中山国務大臣 今委員お話しのように、食糧援助あるいは医薬品援助ということは、冬に向かっていくソ連に対しては当然必要だと思います。そういう中で、日本の善意というものがいかにソ連の国民の肌に直接触れることができるかということが一番大切なことでございまして、それには格段の注意を払ってできるだけの努力をしていくという考え方で臨みたいと考えております。
○新井委員 私はこの間大臣に、貿易保険のことですけれども、貿易保険の中で、要するに政経不可分の原則は原則なんですが、現在、小口の投資というのは非常に、ある意味では衰えていないのですね。新潟あたりにある小さい企業が、例えばハバロフスクでレストランをつくるとか、そういう草の根レベル、地方都市レベルの交流というのは実はこの政変の間もしっかりと続いていて、これは逆にハバロフスクや極東のソ連の指導者の日本に対する信頼感を実は非常に支えているのです、中央政府はともかくとして、草の根の地方の交流というのが。
ところが、新潟あたりの小さい会社がお金を出すとなると、その投資、合弁事業をつくって出資をしてある程度お金を貸し付けとなると、保険が全然ない。要するにリスク分散ができない。大きなものじゃないですよ、レストランをつくるのだから。現地でいえばせいぜい一億円以内ぐらいのお金ですよ。その程度のお金に対する一切の投資保険というようなものがないので、地方と地方の交流、小さい日常的な交流すら本当は危なくなるのじゃないかというおそれを私は持っておりまして、この間、大臣に御検討いかがでしょうとお聞きしましたが、今の貿易保険特会の中でもいいのですが、そういう投資保険をつくって一億円以内ぐらいの投資に対して保険が掛けられる、出資金あるいは貸し付けに対して。そういう考えについて、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
○中山国務大臣 委員からそのような御意見をちょうだいして以降、通産大臣ともいろいろこれからの対ソの支援について、投資問題についての考え方、こういったものについては既に意見を交換いたしておりまして、できれば来週にでも、一応渡辺外務審議官が帰ってきた後で、私どもは関係各省と具体的な問題についての基本的な考え方の調整を始めなければならない、このように考えております。

【第121回国会 衆議院 政治改革に関する特別委員会 第3号 平成3年9月13日】
○佐藤(観)委員 それは御承知のように、ロシア共和国の議長代行でございますハズブラートフさんが見えて、エリツィンさんの親書を総理に持ってこられ、そして、伝えられるところによれば、いわゆるエリツィンさんの五段階案というのが、何もそう五段階一つ一つこうやっていくんじゃないんだよという、大分時間を縮めてもいいのではないかというような話が伝わっているわけでございます。また、これは新聞報道でございますけれども、ソ連の暫定内閣の国民経済管理委員会のヤブリンスキー副議長、ヤルタ協定あるいはサンフランシスコ平和条約等ではなくて、その前の一八五五年の日露通好条約、この線に戻ってもいいのではないかという一つのアイデアも出ているわけであります。
それで、お伺いをしたいのは、今世界の大きな変わり目の中で、我々もソ連の状況がどうなっていくかというのは大変関心を持っているわけでありますが、その中でも我が国との関係でいえば、何といってものどに刺さった四島の返還の問題、この問題が一番国民的に関心があるわけでございますので、ハズブラートフさんとお会いになって、外交でありますから全部が全部総理としてお話しできないにいたしましても、北方四島について若干なりとも前進や明るい見通しができたのではないかというふうに考えられておるのかどうか、その点をちょっとお伺いをしておきます。
○海部内閣総理大臣 北方領土問題の見通しについての御質問でありますから、簡単にお答えいたしますけれども、ハズブラートフさんが日本へ来られて、エリツィン大統領から私も親書を受け取りました。そのとき、親書の内容を詳しく申し上げることは外交上差し控えさせていただきますが、二人で会談をしましたときに、ハズブラートフさんはエリツィン大統領の考えとして、五段階の提案を一九九〇年に日本へ来たときに非公式に述べたけれども、あの中で既に実現されたものもあるし、しかし、あのときの目盛りというものは非常に長い、御承知のように十五年とか二十年とか次の世代とかいう表現までございました。それを縮めていく必要がある。同時に、私もエリツィン大統領に、あのまだ政変のさなかでありましたが、二十二日に電話で物を言いましたときに、あくまで日本は日ソ共同声明の線に従って平和条約、そのための領土問題の解決を加速的に行っていきたいという基本的な考え方を申し上げたときに、それは自分も全くそのとおりだ、そのようにしたいという話をもらっておった。それで、今度の会談で新しい点というのは、エリツィン大統領、そして五段階の提案、それが加速されるということ、同時に公正と国際法の規範の尊重の原則の中で、新しい状況の中で自分たちは努力をしていこうということも言っておられますし、また、今御指摘の日ソ通好条約という物の考え方、それは正しいのであるし、それによってこの問題を片づけていきたいということでありますから、言われておった五段階の当初の予想がある程度短縮されていくのではないであろうか。また、そういう考え方のメッセージを私に親書を通じて伝えられ、またハズブラートフさんもそのことについて触れられたものと私はこのように受けとめておりますから、あくまで日本側としてもその基本をしっかり踏まえて、領土問題を解決して平和条約を締結するという所期の目的に向かってさらに作業を加速化していきたい、同時に、二国間でお約束をしてあるいろいろな技術協力や人的支援協力、その他の問題については、状況に応じて積極的に拡大均衡の形で進めていきたい、こう考えておるところであります。

【第121回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号 平成3年9月19日】
○松浦(昭)委員 まず第一問は、何と申しましても北方領土問題でございます。この問題は当委員会の所掌でもありますだけに、まず第一にお伺いをいたさなければならないものであると思います。
振り返ってみますと、本年四月にゴルバチョフ大統領が訪日されまして、日本の内部では北方領土問題の前進を期待した向きもございますけれども、ゴルバチョフ大統領は領土問題の存在を認めていったものの、期待した足跡は残されていかなかったようであります。
しかし、去る八月十九日のクーデターの失敗によりますソ連邦内の大変革は、特にロシア共和国の強力化あるいはエリツィン大統領の台頭を見たわけでございまして、北方領土問題についても、引き続いて驚嘆すべき変化が生じているような兆候が見られるわけでございます。
すなわち、我々は新聞報道しかわかりませんけれども、この報道によりますと、去る九月初旬に来日いたしましたソ連・ロシア共和国最高会議議長代行のハズブラートフ氏、この方は九日に海部総理にお会いなさいまして、エリツィン・ロシア共和国大統領の親書を手渡したと言われておりますけれども、この親書の内容は、かつてエリツィン大統領が最高会議代議員時代に提唱なすっておられましたいわゆる五段階論を大幅に修正したものだと言われているわけでございます。この五段階論はここで細かに御説明することは要らないと思いますけれども、何と申しましても、最終的には四島の帰属は次の世代にゆだねられるべきだといった点が非常に印象的でありました。
しかしながら、さきのハズブラートフ氏の記者会見によりますと、新しく海部総理に手渡された親書の内容によりますと、この五段階論に大きな修正が加えられ、著しい質的な変化を見ていると述べられています。また、五段階論で述べられた期間をそれぞれ短縮していこうと提案されており、特に、我々の世代で四島問題を片づけようと述べておられるというわけであります。また事実、おいでになったハズブラートフ氏御自身が、具体的に実質的な交渉を始めるとお述べになったそうであります。
また、同氏とともに訪日しておられましたクナーゼ・ロシア共和国外務次官は、親書の内容は五段階の圧縮であるとともに、戦勝国、戦敗国の区別なく日ソ関係を発展させようと述べられていると言われますし、あるいは国際ルールに従って問題を解決しようと書いてあるとも言われているわけであります。
さらに驚くべき事実としては、ソ連の暫定内閣ともいうべき国民経済対策委員会の副議長であるヤブリンスキー氏、この方は。元のロシア共和国の副総理でありますが、この要職にあった方が九月九日、共同通信との会見におきまして、一八五五年の日露通好条約に立ち返って歯舞、色丹、国後、択捉の四島は日本に返還されるべきである、あるいはこの条約は日露両国が戦争ではなく友好的な交渉の後結んだものであるということを述べられたそうであります。これはまさにこれまでソ連側が主張しておりましたヤルタ体制の放棄につながるものでありまして、また我が方の返還論そのものと言ってもいい、そのような大きな転換であります。
このような一連の発言を見ておりますと、ロシア側はこの四島問題について大きく態度を変えまして、返還への千載一遇の好機が訪れたかのように見えるわけでございます。
しかしながら、同時にこの話し合いは決してストレートにいくものではないとも思われるわけでありまして、ロシア側は同時に、一方で日本政府の政経不可分の原則は認めつつも、大規模な緊急援助を日本に要請しているようでありまして、ハズブラートフ氏の言をかりましても、その額は何億ドルの単位ではなくて、何十億ドルの単位の援助を期待すると述べているようであります。
確かに、ソ連は未曾有の経済危機に直面しております。ことしの冬も乗り切れるかという状況であると聞いておりますが、これを打開するのは西側の援助しか道がありません。しかも、米国は今大きな債務国となっておりまして、その援助の力には限界があります。またドイツも、東ドイツの統合によりまして東ドイツを抱えて、援助の力も大きく減殺されている状況であります。アメリカ及びヨーロッパが四島問題の日本側の態度に対してこれをバックアップしてくださることはまことにありがたい次第でありますし、もちろん我が方の主張を正論と認めてくださっている、そのように判断するわけでありますが、彼らのお家の事情もあるのではないかと思うわけであります。とにかく、極論すれば、ロシアにとって我が国は一番頼りになる援助国であるということであります。ここで我々は、四島問題と援助問題のパッケージディールという極めて厳しい外交交渉をロシアとの間で持つことを考慮しなければならないと思います。
課題はほかにもあります。それは四島に住む方々の反対であると聞いております。これを受けまして、サハリン州知事のフョードロフさんは、返還論に傾いたロシア共和国首脳の考え方に強く反対していると伝えられております。
以上が我々が承知している事実でありますが、これらのことに関してはもちろん外務省の方々は十分に情報をとっておられると思いますし、我々以上の情報を持っておられると思います。そこで兵藤局長にお尋ねいたしたいことは、これらの事態を踏まえましてどのような状況であると判断をしておられ、またどのような分析をしておられるか、ひとつ外務省の御見解を承りたいと思います。
また、中山外務大臣には、この事態をとらえまして外務大臣としてどのように問題に対処していくか、お伺いをいたしたいと思います。確かにこの事態は、今まで一度も訪れたことのないような国民の悲願を実現させる絶好の機会とも言えます。しかし、私も長年、日ソの漁業交渉に携わらせていただきましたが、そのいささかの経験をもちましてもまた次元は非常に違うものと思いますけれども、このようなときにこそ冷静に判断をしなければならないとも思うわけでございます。外相はいかがお考えか、外相のお考えのほどを聞かしていただければありがたいと思う次第でございます。
○兵藤政府委員 八月のクーデター以後の日ソ関係、特に平和条約問題につきましての現状をどういうふうに認識しているかということについてでございますが、松浦委員御指摘のとおり、八月以降の、特にロシア共和国政府あるいは最高会議の要路の方々のいろいろな御発言、特に委員御指摘のハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行の訪日並びに訪日後のいろいろな御発言並びに御指摘のございましたヤブリンスキー氏その他の方々のいろいろな御発言を総合いたしますと、まさにおっしゃるように今までに見られなかった、今までと申しますのは、戦後、三十数年の国交を樹立いたしましてからの過程の中で見られなかった基本的に質的に違うこの御発言、違うと申しますのは、北方領土問題に対します基本的な認識と姿勢、このようなものにつきまして、私どもにとりましては大変に歓迎をし、いろいろな肯定的な、積極的な御発言が出てきているというふうに私どもも認識をいたしております。
そういう中で、特にハズブラートフ議長代行の御発言の中で、平和条約締結交渉を加速化したいという御発言、これはゴルバチョフ大統領訪日の際に日ソ両国の政府で確認したことでございますが、その御発言、それから戦勝国と敗戦国の関係、区別、もうそういう関係からこの問題を考えるということはやめたいという御発言、それからあくまでも法と正義、この場合、特に私どもは国際法ということも含めての御発言であると考えておりますけれども、そういう御発言に特に注目し、おっしゃるように、この問題についての解決のための一つの大きな可能性を含む機会というものが訪れつつあるかもしれないという認識を強めている次第でございます。
○中山国務大臣 今、松浦議員に兵藤欧亜局長がお答えを申し上げましたように、ソ連の変化、これは我々も予期しなかった突然の変化でございまして、指導部の人員構成も変わってまいりましたし、今日までの日ソ間の交渉の条件というものが大きく変わってきたものと認識をいたしております。そのような中で、エリツィン大統領が五段階の説を私にも前回訪日されたときにおっしゃっていかれました。ハズブラートフヘロシア共和国最高会議の議長代行どこの間お目にかかりまして、ハズブラートフ議長代行からこれをもっと縮めるという考え方もお聞かせをいただいたわけでございますが、私は、この問題の解決のために首脳間でどのように具体的に詰めるのか、いわゆる短縮するのかといったことを協議する機会をぜひ持ちたいということを、エリツィン大統領に私からのメッセージとしてお伝えをいただきたいということを申し上げたわけでございます。
私は、外務大臣としても領土問題解決のために全力を挙げてこれから交渉に当たらなければならない、このように考えております。

○岡田(克)委員 先ほど、松浦議員の質問に対する御答弁で、外務省の北方領土問題に関する基本的認識については既にお聞きをしたところでありますけれども、この北方領土問題を解決していくに当たって、今なお基本的な障害というものが幾つか存在しているように思うわけであります。そういった問題について、どういう問題が具体的にあると認識しているのか、外務省の御見解をお伺いしたいと思います。
○兵藤政府委員 北方領土問題解決におきまして最大の問題は、四島返還自体にまつわるいろいろな問題であることは委員御承知のとおりでございます。しかし、同時に私どもは、最近のソ連邦内の変化、あるいはロシア共和国あるいはこの場合には関係地域の動きを見ておりますと、ソ連の中におきますこの問題に関する世論という問題、これはっとに最近ソ連の要路の方々が指摘される問題でございますけれども、その問題も、ソ連政府あるいはロシア共和国政府にとってはますます重要な問題になってきているのだろうという認識を私は深くいたしております。私は、やはりソ連の国民あるいはロシア共和国の国民の正しい理解というものを得た上で判断していただくということが大変に重要な問題であるだろう、特に、最近のロシア共和国の中に見られます、いわばロシアナショナリズムの台頭というような潮流にかんがみましても、この問題に対する正しい理解を求めていくということがもう一つ大きな重要な課題であるだろうというように認識をいたしております。
○岡田(克)委員 ただいま政府委員の方から御指摘をいただいたわけでありますけれども、私も、ソ連の国民あるいはロシア共和国の国民の感情、意識というものが非常に重要ではないか、こういうふうに思っている者の一人であります。幾ら学者を初めとする有識者あるいは政治家が北方領土問題を取り巻く歴史的な経緯とかあるいは国際法上の扱いについて理解をし、納得をしたとしても、個々のロシア共和国の国民あるいはソ連の国民がこの問題について納得をしない限りこの問題の解決は難しいのではないか、そういう認識を持っております。とりわけ、かつての共産党一党独裁の国家であり、情報操作も容易である、そういう国からまさしくクーデターの失敗という一つの歴史的な事件を経て、ロシア共和国あるいはソ連は国民の意思というものが強く反映をするという国になっているわけでございます。
そこで質問でありますけれども、それでは、そういったソ連の国民あるいはロシア共和国の国民のこの問題に対する理解は一体どういうものであるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○兵藤政府委員 日ソ国交回復以来、この北方領土問題につきましては、日本におきます世論の活発なあるいは積極的な関心と裏腹に、ソ連におきましては、ほとんどソ連の大多数の国民が北方領土問題の実態を知らないという状態が長く続いてきたことは御承知のとおりでございます。しかしながら、ゴルバチョフ大統領のいわゆるグラスノスチ政策のもとでいろいろな問題がかなり自由に論じられるようになってきたその流れの中で、北方領土問題というものも次第に自由に議論をされ、論じられるようになってきた。その中でソ連側の、最初は学者グループでございましたか、ソ連の公式見解と異なるいろいろな見解が出てきたということも御承知のとおりでございます。かっては、日本政府の広報誌の中に北方領土の四島を含めた地図の入ったものを配っただけでもすぐに送り返されてきた、あるいは没収されたという時代が長く続いたわけでございますけれども、最近では情勢が一変したということでございます。
その中で、御高承のとおり、例えば三月十八日でございますか、サハリン州が行いました北方領土島民のこの問題に対する意識調査というものもございます。その結果によりますと、報道によりますれば、四人に一人は北方領土返還に肯定的であるという回答があったというようなことがあるわけでございますし、四月、これはゴルバチョフ大統領御訪日の直前でございましたが、主としてモスクワ市民に対して行われました意識調査では、二六%が返還に賛成であるという数字等があるわけでございます。この数字については評価は分かれるわけでございますけれども、既にこの時点で、返してもいいという明確な意思表示をするソ連国民あるいはサハリン州の島民がいるということは注目すべきことでございますが、私どもはこの問題について、委員御指摘のとおり、正しい理解、歴史的、法律的な理解を関係者あるいは国民に持っていただくということがぜひ必要だという認識をますます深めております。したがいまして、ロシア語の啓発資料等の作成も含めまして、ますますこの面での努力を加速化いたしたいというふうに考えているところでございます。

○藤原委員 きょうは大変お忙しい中、大臣の御出席のもとに、限られた時間ではございますが、時間をとっていただきまして、そしてまた、今一番関心の深い北方領土問題を中心といたしまして御質問したいと思います。何点かに絞りましてお話を申し上げたいと思います。また、兵藤局長におきましては昨日お帰りになって早々ということで、それだけに非常に大事な立場にあろうかと思うのでありますが、率直な御見解を賜りたいと思う次第であります。
最初に、ことしの四月、ソ連の最高責任者が日本の国に来日するということで、大きな期待、そしてまた大きな局面の打開、こういうことに非常に大きな国民の関心が持たれたわけであります。しかしながら、ソ連の政治状況、いろいろなこともございまして、大方の期待というものが、余りにも期待が大きかったということもございまして、なかなかその期待どおりには進まなかった、こういうお考えの方が多いようでございます。
しかしながら、外務省といたしましては言うべきことを言い、そしてまた四島の明記、そのほかのこともあろうかと思うのでありますが、八月の政変といいますか、これはまさしくゴルバチョフが来日した以上の大きな大変な出来事であったと思いますし、北方領土返還に今日まで一億国民が大きな関心を寄せ、その返還運動を進めてきた者としまして、また国民としましてこの八月革命というものがどういう意味を持つのか、ゴルバチョフ来日以上の大きな変革をもたらすのではないか、こういう一つの大きな期待を寄せていることは間違いないことだろうと思います。そこに至るプロセスは非常に困難な、また時間のかかることだろうと思うのでありますけれども、現実的な問題としましては、おおよその国民はそのような大きな期待感を持っているのではないか、こう思うわけでございます。ゴルバチョフ来日に対する外務省の取り組みとその評価、そしてまたこのたびの八月の革命といいますか、この問題に対して、北方領土という観点から外務省としてはどうこれを受けとめていらっしゃるのか、御見解をお伺いしておきたいと思います。
○兵藤政府委員 ゴルバチョフ大統領の御訪日につきましては、今から振り返りますと、政治的には最も困難な状況下で訪日をされたという気がするわけでございますが、にもかかわらず、その中で日ソ間で合意されました内容は、三十数年の日ソ平和条約締結交渉のいろいろな経過を顧みました場合には、やはり一つの画期的な合意であったというふうに私は思っております。特に、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島、この四つの島が平和条約交渉の対象であるということが、公式の、しかも最高指導者の間での文書に明記されたということは、これは、例えば田中総理の一九七三年の訪ソのときに口頭ではそこまで到達した、しかしどうしてもそれは書けなかったという事実があったわけでございますが、そういう事実に照らしましても、これが明記されたということはやはり画期的なことであったと思うわけでございますし、さらに、先ほど来お話が出ているわけでございますけれども、その領土問題について平和条約締結交渉を加速化する、できるだけ早くこの解決を目指すという認識、合意というものがこの中で明確に書かれたということもまた一つの重要な点であったであろうというふうに思います。
最近、ソ連ではいわゆる革命という言葉が使われておりますが、八月以来の異変の中で一番重要でありますのは、いわゆる民主主義の根幹でございます法と正義というこの原則に従っていろいろなことを処していく、とりわけ国際問題を考えていこうという姿勢、その中でも日ソ間の領土問題、平和条約締結交渉を、まさにハズブラートフ議長代行の御発言にもあるわけでございますけれども、あるいはエリツィン大統領の書簡の中にもあるわけでございますけれども、法と正義というこの大原則にのっとってこの問題を解決していきたいという明確な姿勢が出てきたということは、日本としてもこれは高く評価し、これを歓迎する。まさにその上に立って、私どもは一日も早くこの問題の解決を図りたいというふうに考えるわけでございます。
○藤原委員 今まで三十数年、戦後以来四十数年にわたります領土返還に対しまして、この八月の出来事というのは一つの大きな転衡であった。法と正義の上に立って考えようということでありますから、これは一つの同じ土俵といいますか考えの上に立ってこの話し合いを進めることができる状況になったということだろうと思います。
顧みますと、ゴルバチョフ大統領が大統領に就任いたしまして政権ができて以来、日ソ関係におきましては、八六年の一月から外相の定期協議が持たれまして、年に一、二回の頻度で開催を見ましたし、そのうちまた外務次官協議、平和条約作業グループ協議、または政策企画協議、こういう会合を頻繁に回を重ねて、日本の主張とソ連の当事者との間の話し合いが進められてまいりましたし、また、それらの結果によります実務協定等も締結されたという経過もあるわけでありますが、日本の主張すべきことはこれらの中で十分に主張しているのではないか。今お話ございましたこの法と正義の上に立ってということになりますと、これは日本の主張が今日までこれらの公式の場でつぶさにいろいろな角度から主張されてきた、こういうことの上に立って、同じ土俵で今後の諸課題についての解決の方途というものが話し合われる。こういうことでは、ゴルバチョフ政権ができて以来のこの数々の会議というものは、大変難しい交渉であったのかもしれませんが、それが大きな力になるときが来たのではないかという評価を私は持っておるわけでありますが、これからのことについてはいかがお考えでしょう。
○中山国務大臣 日ソの関係を改善したいという我が方の強い考え方、また、領土問題を解決しなければ真の日ソの友好が確立されない、こういったことで、今委員がお示しのようなあらゆる機会をとらえてこの歴史的な事実を主張し、貫いて今日まで参ったわけであります。ただ、御案内のように、かねてからソ連は領土問題は存在しないという姿勢をとっておりましたけれども、本年のゴルバチョフ大統領の訪日の機会に、この四島が二国間の解決しなければならない領土問題だという認識を明確に共同声明に出すといったようなことで双方が合意をするという画期的な事実が生まれた。さらに、八月革命が起こって新しいロシアの政治体制というものができる、こういう中でエリツィン大統領が海部総理に親書を送ってこられた。そして、五段階を次世代で解決したいということをさらに飛躍的に縮めて加速しよう、こういったことが起こったわけでございますから、私どもといたしましては、このような新しい国際政治情勢の中で、ロシア共和国、ソ連邦との話し合いというものをこれから積極的に日本政府もさらに加速をしていく必要があると考えております。
○藤原委員 過日は、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行ですか、来日されました。それぞれの立場の方々が八月以来、今までのかたくなな考えから法と秩序、法と正義といいますか、そういうものに準ずるという、私どもとしましては非常に好感の持てる発言がいろいろあるわけであります。確かに議長代行かいらっしゃっての発言につきましても、一つ一つ私どもに新しい局面の展開を思わせる発言があるわけでありますが、ただ、先ほど来、同僚委員の質問にもございまして御答弁ありましたが、外交交渉一つにいたしましても、連邦と共和国という関係の中で現在はどこと交渉することがその解決の方途になるのか、こういうことになりますと、非常にまだ確定的でないように受け取れるような御発言がございました。
こういうことでちょっとお伺いするわけでありますが、ハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行という方が日本の国に参りまして、エリツィン大統領の親書を携えて海部総理にお渡ししたということでございますが、日本に参りますにはどういう立場といいますか、資格でそういうエリツィン大統領の親書を携えていらっしゃったのかということ。
それから、外務省のソ連との交渉相手のことでございますが、報ずるところによりますと、パンキン外相のお話の中にも、十四日ですか、連邦と共和国で外相評議会というものを設置して、そこで連邦の外交権限を共和国に大幅に移譲することを初めとしまして、当面は共和国の全権代表を現在の連邦の大使と一致するといいますか、連邦と共和国との評議会のようなもの、外相評議会ですか、こういうものを設置して、そこで連邦と共和国との間の調和を保っていく、こういうことが報じられておるわけであります。実際、十四日ごろというと、兵藤局長は向こうにいらっしゃっていろいろな折衝に当たられた当事者でもございますから、そういう方向にこれが固まっていくのかどうか、その辺のことについてはいかがでしょう。
○兵藤政府委員 前半のハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行の御訪日でございますけれども、これは自由民主党が招待をされて、その自由民主党の御招待に応じて、まさに最高会議議長代行という資格で来日をされたというふうに私どもは承知をいたしております。今、ロシア共和国の中におきましては、最高会議が国権の最高機関であるというふうにうたわれていることは御承知のとおりでございます。したがいまして、その最高会議の事実上の最高指導者が来日されたというふうに申し上げてよろしいかと思います。エリツィン大統領の親書を携行されたわけでございますが、来日に先立ちましてその親書作成に当たっては、ハズブラートフ議長代行も含めましてロシア共和国の中でいろいろ検討された結果、親書の発出ということに至り、その親書を携行されたというふうに承知をいたしております。
それから、二番目の御質問でございます連邦と共和国、特に外交権あるいは国際法上の主体の問題でございますが、基本的には、国際法上の主体は各共和国にあるということが言われているわけでございます。しかし、どこまでその主体性を貫いていくのか。
例えば、国連加盟の問題がございます。これは今、バルト三国が独立をいたしまして十二共和国があるわけでございますけれども、国連の加盟につきましては、御承知のように、ウクライナ共和国と白ロシア共和国は既に国連に別々の資格を持っているわけでございますので、これを除くわけでございますが、十共和国が別々に国連に加盟するのかという議論が一時あったわけでございます。私がモスクワで聞きました範囲では、国連については一応統一的な代表というものが必要であろうということで、今のところはソ連邦が代表して国連でいろいろ活動を行う方向であるという話を聞きましたけれども、この最終的な決着も、先ほどから御答弁申し上げておりますように、連邦と共和国のほかのいろいろな権限の問題もございます。外交権に限りませんが、国防の問題も、まだ細部に入ってまいりますといろいろ不透明な部分がございます。経済はなおさらそうでございますが、そういう中で最終的に決めらるべきものというふうに考えております。
外相評議会あるいは外相理事会と呼ばれるこの組織は、国際法的に各共和国が完全に独立しているということを前提にいたしまして、例えばECのような組織を頭に置きながらそういう組織をつくろうという一つの考え方が出てまいりまして、それに基づいて会合が行われたというふうに承知をいたしております。
○藤原委員 時間もありませんので、はしょって申しわけございませんが、エリツィン大統領の五段階返還論というのは、過日来日したときにこういう発言もあり、周知しておるところでございますが、この五段階返還論の日本政府の受けとめ方というのは公式には私どもお見受けしていないのですけれども、公式にはどういう位置づけといいますか、どういう受けとめ方で現在あるのか。またベーカー長官やいろいろな方々の発言で、これを加速させるとか、いろんなことが言われているわけでありますが、それが一つのシナリオといいますか、今後の話し合いを進める一つの大きな方向性を指し示すものなのかどうか、その辺は外務省としてはどうお受けとめになっていらっしゃるのですか。
○兵藤政府委員 エリツィン大統領の五段階解決論の公的な位置づけでございますが、日本政府がこのエリツィン大統領の五段階解決論を正式に提案として受け取ったということは当然のことながらなかったわけでございますし、今日までないわけでございますが、にもかかわらず、現職の大統領であるエリツィン氏から正式に海部総理に届けられた親書、あるいはハズブラートフ議長代行のお話の中でこの五段階解決論というものが言及をされているということは事実でございます。したがいまして、私どもも、エリツィン大統領のそういうお立場は十分に尊重する必要があるというふうに考えるわけでございますが、具体的な内容について今日本政府が具体的にいろいろ申し上げるということは、この段階では適当ではないだろうということも御理解をちょうだいいただけるのではないかというふうに存じております。
しかしながら、ハズブラートフ議長代行以下、いろいろなロシア共和国政府の中の要路の方々が、いずれも一つのことでは共通している。つまり、平和条約締結を一日も早く急いで行う必要がある、日ソ関係を質的に新しい段階に持っていく必要があるという政治的な認識、政治的な意図表明というものは明確になされている。私は、そのロシア共和国内で示されている意思というものを高く評価し、またこれを歓迎をするというのが日本政府の立場であろうと思います。
○藤原委員 ソ連邦が激動の中にあって今後どういう方向に向かうのか、また各共和国の内政がどう展開するのかというのは、今は全く読めないといいますか、そういう状況の中にあるわけでありますが、北方領土問題を解決するために対ソ外交をどう進めたらいいのか、これは非常に慎重を要する一面、しかしながら、慎重に過ぎでそのタイミングを失ってはならないという一面もあろうかと思います。東欧の変革とか東西両ドイツの統一、次いで今回のバルト三国の独立、そしてまた国連参加、スターリンの拡張主義による不合理が是正された今こそこの拡張主義の犠牲となった北方領土の返還実現はまことにその絶好の機会だろうと思いますし、先ほど来、それぞれの立場で局長、大臣の答弁もございましたが、まさしく正念場といいますか、大事なときを迎えたと痛感するわけであります。また、アメリカのベーカー長官のモスクワでの発言、それからロンドン・サミットにおける各国の支持、こういうこと等も考え合わせますと、非常に大事なときだろうと思います。
そういうときであるだけに、慎重である一面、やはりなすべきことは早急になさなければならない、こう思うわけでありますが、そういうことで、大臣は国連に参りまして演説をなさる、その間もソ連の外相といろいろコンタクトをとっていらっしゃるようでございますが、この対ソ交渉への外務大臣の、今こそ大事なときで全精力を傾注して取り組まねばならないという決意といいますか、その認識等についてお伺いをしておきたいと思うのであります。
○中山国務大臣 外務大臣として考えてみますと、今年一月の私のモスクワに訪問をしての外相会議、あるいは三月の東京における外相会議、四月のゴルバチョフ大統領の訪日、さらに八月の革命、そしてこの国連総会における日ソの外相会談というものを考えてみますと、日ソ間では今日まで、今年になりましても相当頻繁に意見の交換をやってまいりました。それで、四月の大統領訪日の際に、十五の協定文書というものの一応の署名ができたわけでありますが、私は、ソ連及びロシア共和国における新しいソ連の内政上の変化、こういう状況の中で、日ソの交渉は、もうとにかく双方とも一日も早く平和条約を結ぼうという意欲は強いわけでありますから、それに対してどのようなスケジュールで交渉を妥結に導くかといったようなことを、私は積極的に、しかも、あらゆる機会をとらえて日ソ間で意見の交換をすることが重要である、私どもは誠意を持ってこの交渉に当たり、国民の期待する平和条約締結の日が一日も早く来るように努力をいたしたい、このように考えております。

○小平委員 そういう中で、先般、エリツィン・ロシア共和国大統領のいわゆる五段階論というもの、そういう発言がありましたけれども、しかし、その後来日したハズブラートフ氏の話の中でもあれを短縮するとか、あるいは連邦の外務省筋からはロシア共和国と交渉していただいても結構だ、こんなような発言もあったり、いろいろ動きがございます。そういう中で私がまず大臣にお伺いしたいことは、北方領土問題について、あたかもソ連邦とロシア共和国の二つのどちらを交渉の窓口にすべきか、このようにとらえがちでありますけれども、前段私が申し上げましたように、例えばつい先日にはカザフ共和国のナザルバエフ大統領は、ロシア共和国のこのような行為に対して非常に反感を持って発言をしておる。その要旨は、例えば北方領土問題に触れて、ロシア共和国が交渉当事者になるのは道理にかなっていない、さらには、連邦の領土は不可分である、こうまで言い切って牽制をしている。そういう中でこれから自己主張がいろいろな地域で出てくると思います。
そういう中で、まず大臣、これからの動きの中でどこにその外交権が真にあるのか。交渉の窓口を一カ所に決めつけることは大変な危険性があると思いますけれども、しかし外交権はどこにあるのか。今の段階では結論は出せないと思いますけれども、こういうことを踏まえて、これからの大臣のこの問題に対する基本的な御姿勢をまずお伺いしたいと思います。
○中山国務大臣 本年一月のモスクワにおける日ソの外相会談におきまして、ソ連邦の外相であるベススメルトヌイフ外相と私との協議の際にもロシア共和国の外務大臣は同席をされておられました。また、今年三月、東京で開かれました日ソ外相協議の際にも同じように同席をされておりましたが、発言というものは特になかったわけであります。四月のゴルバチョフ大統領訪日の際にも同行されておられます。兵藤欧亜局長が昨日モスクワから帰ってまいりましたけれども、今回、ソ連の連邦の外務省あるいはロシア共和国の外務省の責任者といろいろ協議をいたしておりますが、先ほども他の委員の御質問にお答え申し上げましたように、ロシア共和国の発言権が強くなりつつある印象を受けたと言っております。私もそのように報告を受けております。
今後の外相間の協議というものは、もちろんソ連邦の外相ともやらなければならないし、ロシア共和国の外相との協議もやっていかなければならない。しかし、極東地域を直接共和国として支配しているといいますか、そのような立場にあるロシア共和国とは、相当突っ込んだいろいろな話し合いが必要になってくる可能性は十分あると認識をいたしております。
○小平委員 私もその姿勢はよかろうかと思います。しかし、けさの新聞の報道によりましても、シラーエフ・共和国の首相ですか、これが国民経済委員会の議長に就任ということで首相も辞任する、そういうような報道も届いておりますが、ロシア共和国自体の中身についてもいろいろと今までベールに包まれた国であります。したがって、その御姿勢で進まれることは私もよろしいと思いますけれども、いわゆる人的な動きが連邦とまたがっていろいろとあると思いますので、そこのところをひとつよろしく進めていただきたい、こんなふうに思う次第であります。
そこで、今問題になっております対ソ支援のことでありますけれども、八月のクーデター以前にゴルバチョフ当時の大統領が、今も連邦大統領ですけれども、ロンドン・サミットにも出席をいたしましていろいろな要請をした経緯がございますね。その中で、ドイツ、フランス、イタリア等のECはヨーロッパの中でソ連に地続きである、そういう地理的要件からも対ソ金融支援に対しては積極的な態度を表明いたしました。しかしアメリカ、イギリス、また日本などは慎重な態度を示した。こういう中で、その後、八月十九日ですか、クーデターが勃発した。これはいわゆる三日天下という言葉が日本にありますけれども、まさしく三日天下で成功しなかった。その後、今お話ししましたようにソ連の急速な民主化がうなりを立てて進んでいる、こんなふうに想像できますが、その中で、先般来日をいたしましたハズブラートフ・ロシア共和国最高会議議長代行ですか、この方が我が国に対して八十億ドルから百五十億ドルですか、そういう多額の援助を要求した。
そこで、政府は今まで政経不可分という大原則で当たられてきました。そういう中でこれらとの問題。また私はここで同時にお聞きしたいことは、アメリカのベーカー国務長官もあのように積極的にソ連に対しての支援、協力の発言をされている。そういうものにすぐお返しするかのようにソ連はキューバからの全面撤退をする。こんなような外交のいわゆるギブ・アンド・テークといいますか、そういうようなことが今行われている。そういうところで我が国としては、先般湾岸戦争のときに百億ドル以上のああいう多額な拠出をいたしました。しかし、残念ながら、これだけのいわゆる国民の血税を使ってこれだけの協力をしてきながら、国際舞台での評価は御承知のようにいま一つだった。これ以上私は申し上げません。
そういうことから思い起こしまして、日本が今日これだけの経済力の中で、アメリカやEC諸国からいいますと、日本に期待する、要求するものも、ソ連が日本に期待すると同様に大きなものがあると思います。しかし、そういう中で非常に難しい問題がかかっている。しかも、ここ最近の日本国内の世論の動向は、ソ連に対して多額な援助をするのはまだ時期尚早である、こんなふうな意見も強い、こう私は聞いております。そういうところで大臣考えられることは、ソ連に対して多額の援助をすればそのお返しとして北方領土が返ってくるかもしれない、しかし、いろいろな面で問題もある。そういうことを考えますときに、現実にソ連の経済、ソ連のいわゆる国体を立て直すために、ソ連はのどから手が出るように日本の援助を欲しかっていますね。そういう中で、今私がいろいろ申し上げましたことを踏まえて、対ソ支援について大臣はどのように今後考えていかれるのか、そこのところのお考えをお聞きしたいと思います。
○中山国務大臣 対ソ金融支援につきましては、昨年のヒューストン・サミットの際に、既にドイツ、イタリーあるいはフランス等は熱心に対ソ金融支援について発言をいたしておりました。また、イギリス、アメリカ、日本は慎重論を説いておりましたが、その結論として、国際的な機関であるIMFとか世銀とかOECDとかEBRDの経済専門家をソ連に派遣してその調査の結果を待とうということでございましたが、昨年の十二月に出てまいった調査の結果では、大量の資金援助をやることはソ連の経済にとって大きな効果を及ぼさないというのがこのレポートの一項であります。もう一つは、しかし技術的な支援は積極的にやるべきだ、あるいは人道的な援助もやるべきだということで、実は日本政府もそのような姿勢を堅持してまいりました。また、今年のロンドン・サミットにおいても、そのような考え方で七カ国は合意したわけであります。
私どもは、ソ連に対して政経不可分という原則を持っておりますけれども、我々は、ソ連が来るべき冬に大変な困難に遭遇するということも聞かされております。私はかつて衆議院の予算委員会でも五十嵐委員の御質問に答えまして、チェルノブイリの原子力発電所の被曝者の援護のために日本は蓄積された能力と資金を提供しよう、こういうことでWHOに二十七億円の機材を供与いたしますとともに、十億円の食糧及び医薬品の援助を行った、そういうふうな努力をしてまいりました。今年の冬は大変難しいソ連の冬がやってくる。昨日も、欧亜局長がモスクワから真っすぐ帰ってきまして私が一番先に尋ねたことは、ソ連の国民生活の中で、モスクワに肉はあるか、あるいはバターはどうか、食糧事情はどうかということを尋ねたわけであります。現状では肉は思ったよりも多く出回っている、バターも十分ある、こういったことでございましたが、伝えられる食糧の収穫量、農産物の収穫量は今年は大きな落ち込みがあると言われておりまして、私どもは、大変難しい事態にソ連の国民の皆さん方が遭遇するといった場合には、人道的な観点から、特に我々は隣国でございますから、思い切った大規模な人道的支援を行うことが必要であろう、このように考えております。

【第121回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第2号 平成3年9月25日】
○喜岡淳君 八月政変以降、ソビエトの状況が毎日毎日目まぐるしく変わっておるように思います。私どもすぐ疑問に思いますのは、今後の日本の対ソ外交は一体どことやっていくのか、この重要な問題をすぐ考えるわけですが、ソ連の八月政変の結果、連邦政府の権限は大きく弱体したのではないか、一般的にこういうふうに言われておりますが、反対にロシア共和国は発言力を著しく高めておる、こういうようにも受けとめております。連邦自身が今後どういうふうに変わっていくのか、これは不透明なところがたくさんあるわけですけれども、きのうは中山外務大臣とパンキン・ソ連外相が会談をしたようでありますが、その中ではどうもロシア共和国との関係に軸足を移しつつあるのではないかというような報道がされております。これについても外務省の方でマスコミの憶測だなどと言われたら困りますので、御意見を聞かせていただきたいと思います。
○説明員(高島有終君) 今先生御指摘のとおり、ソ連におきまして連邦と共和国との関係がどのようになっていくかという点については相当不透明な部分が残されたままでございます。ただ、この点につきましては、九月二日から五日までモスクワにおきまして人民代議員大会が開かれいろいろと議論されたところでございます。この議論の中におきまして、今後の新しい連邦の形態といたしまして主権国家連合という考え方が基本的に承認されております。これによりますと、各共和国は新しい連邦であるその主権国家連合に参加するかどうかを自主的に決定することができる、こういう形態のようでございます。
このような主権国家連合の構想のもとで外交権がどのようになるかという点につきましては依然として不透明な部分がまだ大きゅうございます。ただ、その中におきましても共和国も国際法上の主体になり得るということは認められております。しかし、それではその実態がどうなっていくのかという点につきましては、共和国のこの国際法上の主体というものが現実にどのような機能を持っていくかという点、あるいは今後行うべきであると見られる共和国の外交活動と連邦の外交活動との関係がどのように規定されていくのかといった点は依然として不透明でございます。究極のところ、このような問題は今後締結されるべき新しい連邦条約の中で明確にされていくというふうに見られているところでございます。
他方、御指摘のとおり、このような新しい形態の中で、共和国の権限が従来よりもはるかに大きくかつ重要になってきているという傾向はもう否定できない傾向であろうというふうに見ているところでございます。そういう意味におきまして、私どもといたしましては、今後の関係を進めていくに当たりましてロシア共和国を初めとする各共和国との真剣な対話と交流を活発化することが同時に連邦政府との対話、交流をも維持するというこの両方の面が非常に重要であろうというふうにとりあえず考えているところでございます。

【第122回国会 衆議院 本会議 第3号 平成3年11月11日】
○石田幸四郎君 周知のとおり、ソ連は八月の政変以降、共産党支配の崩壊、各共和国の主権確立等によって、従来のソ連邦の政治体制は事実上解体したと見てもよい状況にあります。また、北方領土交渉の相手が実質的に連邦からロシア共和国へ移行したことなど、これまでの対ソ政策の前提は大きく変化しています。我が国は政経不可分の政策を含め、従来の対ソ政策全般についての根本的な見直し、再検討を行い、新たに再構築するぐらいの取り組みが必要と考えますが、対ソ支援の基本的な対応と北方四島返還に対し、いかなる方針で臨もうとするのか、総理並びに外務大臣の見解をお伺いをいたします。
○内閣総理大臣(宮澤喜一君)  北方四島に関しましてお尋ねがございました。このような、今世界の新しい平和の構築に当たって、日ソ間に平和条約がないということは、まことに不自然なことでございます。本年の四月にはゴルバチョフ大統領が来日をされまして、北方領土問題について日ソ共同声明が行われました。また、八月革命以降は、ロシア共和国及び連邦おのおのの指導部から、法と正義に基づく領土問題の早期解決についての意向が示されております。したがいまして、政府といたしまして、このような認識に立って、一日も早く北方四島の返還を実現すべく全力を傾注してまいる考えでございます。
○国務大臣(渡辺美智雄君) 石田議員から対ソ支援、北方四島についての基本的な考え方の質問がございました。 結論から先に申し上げますと、総理大臣の答弁で尽きておりますということでございます。
しかし、それでは不親切だというお話がありましょうからちょっとつけ加えさせていただきますが、御承知のように、四十数年間日ソ間に平和条約がないということは、まことに不自然、異常なことだと思います。全く近くて遠い国であります。それではいけないということで、問題は、向こうはもう、領土問題は長い間解決済み、こちらは領土問題を解決しなければ、それは平和条約は結べない、あるいは経済協力もできないという、長い間やってきたわけでございますが、幸いなるかな、四月にゴルバチョフ大統領が訪日されて、それで北方四島については少なくとも平和条約で解決すべき問題だというように多少変化が出てきた。それから八月には革命が行われて、そこで、ソ連の中ですよ、失敗はいたしましたが、その後、法と正義に基づいて北方四島の問題の解決に合意をすると両指導部が言っているわけですから、変化が出てきているということであります。したがいまして、日本政府としても、一億ドルしか食糧の援助をやらぬと言っておったものが、つい最近、新聞で見られるように、二十五億ドルを供与しようというように変わって、少し変化がお互いに出ておるわけであります。
そういうことで、我々としては、政府は二十五億ドルをいろいろまぜて供与しましょうというように変わりつつあるわけですから、したがって、今後ともお互いに対立のしっ放しというのでなくて、それは魚心あれば水心ということで、日ソの親善を、幅を詰めていく、そういうように努力をいたしてまいります。

【第123回国会 衆議院 本会議 第2号 平成4年1月28日】
○森喜朗君 旧ソ連邦は、ロシアなど十一の独立国家共同体加盟国として、民族自決・主権平等、自由、民主主義、市場経済原理に立脚して新秩序に移行せんとしておりますが、核管理、人権、経済運営、債務問題等で依然さまざまな危険な要素を抱えており、また、民族対立という大きな不安定要素を内包しております。こうした危険性、不安定性に対し、我が国としてはどのように対応すべきか、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
また、旧ソ連邦に対する支援については、さきの日米間の合意でも、独立国家共同体の加盟各国に「適切かつ効果的な支援を供与する。」とされております。独立国家共同体やその加盟国、さらにはバルト三国等々に対する支援体制の整備について総理はいかにお考えか、お尋ねいたします。
ロシアとの関係を考えるに当たっては、我が国民の悲願たる北方領土の問題の解決を忘れてはなりません。今後のロシアの動向が不明確なことや、北方領土居住民の問題の解決など困難が予想されますが、総理が述べられたように、法と正義に立脚して、北方領土問題の解決と平和条約の締結を一日も早く実現し、友好な日ロ関係を築くことが必要であります。北方領土問題の平和的解決に向けての総理の決意を改めてお伺いいたしたいと思います。
○内閣総理大臣(宮澤喜一君) 今後の国際秩序を考えます場合、御指摘のように旧ソ連邦諸国の動向は重大な影響を及ぼします。我が国としては、旧ソ連邦の構成諸国が内政、外交両面にわたりまして改革路線を推し進めるとともに、条約その他の国際約束に基づく義務の誠実な遵守、核兵器の一元的かつ厳格な管理、旧ソ連邦の債務の承継など、それらを確保することが重要と認識しております。そして、そのような正しい方向に沿った改革努力に対しては、我々としても適切な支援を実施いたさなければならないと考えております。
また、我が国は、ロシア連邦を初めとする独立国家共同体の参加各国との新しい関係を発展させていく考えでございますが、一月二十六日には、ウクライナ等五共和国との外交関係を樹立いたしました。残る諸国につきましても、順次条件が具備し次第関係を樹立していく考えでございます。
また、旧ソ連邦諸国に対する緊急の人道的必要に迅速、効果的に対応し、また内外政にわたる改革努力に対し適切な支援を行うという考え方に基づきまして、先般ワシントンで開かれました旧ソ連邦支援調整国際会議にも積極的に参加をいたしたような次第であります。また、この会議のその後の、第一回、第二回のいわゆるフォローアップにつきまして、我が国も開催する用意があることを表明したところでございます。
具体的措置としましては、昨年十月発表の二十五億ドルの支援策、また本年一月十七日発表の国際赤十字社連盟への六十五億円に上る拠出、これは食糧、医薬品支援等を着実に実施してまいります。
我が国の隣国であるロシア連邦との関係を抜本的に改善するためには、北方領土問題が解決されなければなりません。そして平和条約を締結することが不可欠でございます。政府としては、北方四島の早期返還を実現するために、この二月の中旬に、日ロ両国の間に既に設けられております平和条約作業グループの会合を開催することで合意をいたしておりまして、この機会に真剣な交渉に取り組む考えております。
それから中・東欧の民主化についてお話がございまして、おおむね順調に進展をしておると申し上げることができると思いますけれども、経済改革につきましては、コメコンがなくなりました。それで依然引き続き困難な状況でございまして、ただ、御指摘になられましたように、中・東欧の支援は冷戦終了後の国際秩序の構築努力の一環といたしましても極めて重要でございますので、八九年以降総額四十二億ドルの中・東欧支援を表明いたしております。今後とも西欧諸国とも、また国際機関とも協力しながら支援を続けてまいらなければならないと考えております。

【第123回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成4年2月4日】
○米沢委員 この前、日ロの首脳会談の中では、総理は記者会見で、かなり北方領土に明るい見通しが立ったような会見をされたそうでございます。いろいろとこれから、九月のエリツィンさんの来日まで数次のいろいろな交渉事がありますが、その間で本当に前進するかしないか、国民は注視しておると思うのです。しかし、今ああいう状況でございますから、一体安定性があるのかどうかとか、だれと話をしたらいいのかとかいうようなところもあると思いますが、少なくとも、我々は対ソ支援という形で緊急的に援助しながら、そして北方領土をいい話を引き出そうというところでございますので、ぜひ、対ソ支援のあり方と北方領土をどう絡めて今外務大臣は交渉しようという腹があるのか、できれば道筋を教えてもらいたいし、どういう構想で北方領土を取り返すという算段をしておられるのか、一回聞かせてもらいたいと思います。
○渡辺(美)国務大臣 もう時間もありませんから意を尽くせませんかもしれませんが、簡単に申し上げますと、北方領土、これは我が国固有の領土であります。たまさか新政権は、北方領土問題については解決済みという態度でなく、やはり法と正義に基づいて解決しようということでございますので、我々は目下額面どおりこれは受けとめていきたい、そう考えております。
もう一つは、ソ連の民主化、自由化あるいは市場経済化、こういうことは我々と同じ価値観を持つ国家として生まれ変わるということでございますので、安全保障上の問題、その他いろいろな関係がございます。これは日本だけの問題ではなくて、世界の政治経済に大きな影響を及ぼすことは間違いない。したがって、それらに対しましては、技術支援あるいは人道上の今困っている現状に対して日本としてはできるだけ応援をしてまいりたい、そう考えております。
しかしながら、何と申しましても我が国固有の領土であるという問題を避けて平和条約を結ぶことはできません。したがって、平和条約は、たまたま新政権は作業グループをつくって条約の準備交渉を始めよう、こういうようなことなので、これは進めていく。あるいは、コスイレフ外務大臣が三月にその状況を見ながらこちらにおいでになる。それから九月には中旬に大統領が日本に来るということを約束された。別に領土問題が解決したわけではもちろんございません。これからの問題でございますが、そういうような交渉の場が正式にセットされつつあるということで、粘り強くやってまいりたい、さよう考えております。
【第123回国会 参議院 外務委員会 第1号 平成4年2月27日】
○宮澤弘君 この北方領土の返還の問題は一時よりは大変いいムードだと思いますけれども、しかし楽観は許されないことは申し上げるまでもございません。そこで、現在事務的にいろいろな問題を折衝しておいでになると思うのですが、現在どういう問題をロシアとの間で折衝しておいでになるのか、事務当局からお答えを願います。
○政府委員(兵藤長雄君) まず平和条約締結作業そのものでございますが、渡辺外務大臣が一月末のモスクワ訪問の際に、コズイレフ・ロシア連邦外務大臣との間で平和条約締結作業をロシア連邦外務省と当方とで行うということが確認をされ、その下に日ロ平和条約作業グループを設置する、その第一回目を二月の十日に始めるという合意がなされました。それに基づきまして二月十日、外務省からは斉藤外務審議官がモスクワに出向きまして、ロシア連邦外務省のクナーゼ外務次官との間で第一回の日ロ平和条約作業部会を開いたわけでございます。
二日間にわたりまして十一日まで及んだわけでございますが、今回の平和条約作業グループの主たる任務は、過去日ソ平和条約作業グループというものがございましたが、これが八回会議を開きまして、その間に北方領土問題の歴史的な側面、法的な側面をかなり深く掘り下げてあらゆる角度から議論をした。そこで、日ソの双方の主張、対立点、見解を同じくする点が出てきたわけでございますが、今回日ロ平和条約作業部会のロシア側の出席者は日ソとは違ったメンバーでございましたので、この八回にわたりました議論を総括をいたして、こういう総括、今までの議論を出発点としていいかどうかという確認を行いました。ほぼ今までの成果の確認はなされたというふうに考えております。これが大きな目的でございました。
そのほかに、これはゴルバチョフ大統領が参りましたときに共同声明の中で合意いたしました四島無査証交流の話がございます。これは別途事務的に今できるだけ早く開始にこぎつけたいということで交渉いたしておるところでございます。

【第123回国会 衆議院 予算委員会 第12号 平成4年3月5日】
○近江委員 まず私は、北方領土問題についてお伺いしたいと思います。
宮澤総理が去る一月の国連安保理サミットに出席されました際に、ロシアのエリツィン大統領との会談後、北方領土問題につきまして、手ごたえをっかんだ、こういうことは一つの潮どきというものがある、こういう発言をされております。また、渡辺外務大臣も二月九日、栃木県で、私の在任中に決着をつけたいとお述べになっておられまして、非常に意欲的なそういう発言が聞かれておりまして、心強いものがございます。非常に期待を抱かせるわけでございますが、そういう具体的な根拠、見通しというものがおありなのかどうか、お伺いしたいと思います。
○渡辺(美)国務大臣 これはそういう具体的な根拠、見通しというものを的確に持っているわけではございませんが、我々としてはそういうような情熱を持って解決をしたい。
それじゃ、全くお先真っ暗でそんなことを言っているのかといえば、別にそんなことはありません。御承知のとおり、前政権は、前のロシアの政権ですね、これは北方領土問題をうたった一九五六年の宣言はもうあれは効力を失ったとか、既にチャンスがなくなったとか、ゴルバチョフさん言っておったわけですが、エリツィン政権になりましてから、法と正義に基づいて解決しようということを言い出したので、我々はそれならば大賛成だ。だから、客観的にこれを史実を、歴史の事実ですね、それは調べようと思えばロシア外務省、ロシア共和国の外務省の中にあるわけですからね。それを表に出してもらう。それからやはり世論。世論ということを言っているわけですから、世論喚起も、事実関係をPRしてくれればだんだんわかってくるはずでございますので、本当に文字どおりそのように向こうが行動をしてくれるならば、私は決してそれはそう長い間かからなくても話し合いがつく情勢が生まれるのでないかという希望を持って、その雰囲気づくりのためにいろいろな緊急援助を初めいろいろやっているということでございます。

【第123回国会 衆議院 決算委員会 第2号 平成4年3月25日】
○宮地委員 この二十日、二十一日の連休に当たりまして、ロシアのコスイレフ外相が日本に参りまして宮澤総理初め渡辺外務大臣と協議をいたしてまいりました。この二国間の日ロ外相会談はまさに北方領土の問題を含めた事実上の第一回の平和条約締結に向けての交渉である、私はこういう位置づけをしているわけでございますが、この日ロ外相会談の意図するところ、またこの外相会談の中における北方領土問題についてはどのような前進が見られたのか、あるいは確認がされたのか、この点について外務省から報告いただきたいと思います。
○津守政府委員 お答えいたします。ただいま先生御指摘のとおり、先週末日本を訪れましたコスイレフ外相と渡辺大臣との間で第一回の日ロ間の平和条約に関する交渉が行われました。それに先立ちまして、宮澤総理がニューヨークでエリツィン・ロシア大統領と会談した際に、ロシア大統領の方から九月中旬に訪日したいという希望の表明があったわけでございます。つまり、現在平和条約交渉は九月中旬のエリツィン大統領の訪日を目標にして行われているわけでございます。
具体的には、既に二月の十日、十一日にモスクワで第一回の事務レベルの平和条約作業グループが行われました。日本側からは斉藤外務審議官、先方からはクナーゼ外務次官が出席したわけでございます。そして今回第一回の外務大臣同士の交渉が行われたわけでございますが、今回の交渉におきましては、コズイレフ外務大臣の方から、法と正義に基づいて問題の解決を図りたいという確認がございました。さらに、一九五六年の日ソ間の日ソ共同宣言、これを含めたこれまでソ連が締結した国際約束、これをすべてロシア政府も引き継ぐという確認がとれたわけでございます。
こういうことで、私どもとしましては、ロシア側は領土問題を解決して平和条約を締結するという強い意思と意図を持っておるというふうに受けとめておるわけでございます。これを踏まえまして、申し上げましたようにさらに九月の中旬のエリツィンの訪日に向けて鋭意交渉を進めていきたいと思っております。

【第123回国会 衆議院 外務委員会 第9号 平成4年5月6日】
○上原委員 先ほど麻生委員長の方からも御指摘がありましたが、きょうは連休明けで、特に渡辺外務大臣には旧ソ連邦を御訪問なさった直後だけにいろいろお疲れの向きもあろうかと思うのですが、きのうのきょうの話ですから、それだけにまたリアルで生々しい外相の御感想なり、私たちがお尋ねをしたい点がお聞きできるかと思っておりますので、御了解を賜りたいと思います。
そこで、最初に対ロシア関係について、支援問題を含めてお尋ねをいたしますが、今回連休を御利用なさって中央アジア並びにロシア共和国を御訪問をして、エリツィン大統領を初め関係国の首脳ともお会いをなさったようでありますが、まず外相のロシア等の訪問をなさった成果といいます
か、その御感想をお聞かせ願いたいと存じます。
○渡辺(美)国務大臣 今回ロシアを訪問をした主要な目的は、九月にエリツィン大統領を日本にお迎えをするという話になっておりましたが、日時が確定をいたしておりませんでしたので、まずその日時を確定するということであります。それにつきましては、九月の十四日及び十五日に公式の会見等を行うということだけが決まりましたので、十三日においでになるか十六日にお帰りになるか、そこから先はまだ流動的でございます。
私は、エリツィン大統領になりましてから、直接エリツィン大統領に対して日本側のかねての言い分、主張を率直に申し上げて御理解を得るというのが目的でございましたが、幸いに一時間ほど時間がとれまして、率直な意見交換をさしていただきました。これはいずれも九月の訪日を前にして、どのように動かしていくかということの下支えになるものと考えております。
もう一つは、キルギスタン、カザフスタン両国を、中央アジアの独立国の二カ国を訪問したわけでございますが、他にも国家承認をし外交関係を持つに至った国がございますが、時間の関係上とても全部寄ることができないという制約のもとで、日本に近いところからということで二カ国に絞ってきたわけでございます。
いずれも、日本に対しましては大変熱いまなざしを持って友好の促進を図ってまいりたい、ぜひとも日本を訪問いたしたいというような希望を持ち、また、日本の経済的な援助またはいろいろな技術援助等をぜひしてほしいということでありました。特にカザフスタンとは、核不拡散条約に核を持たない国としてぜひとも参加をしてほしいという要望をいたしてまいりましたが、いろいろ話のすれ違いがございまして、その点はまだ決まらないということでございます。
○上原委員 今お答えありましたのは、既に外相のモスクワにおける記者会見、あるいは、きょうは新聞等は休みですが、これまでの報道でほぼ出ておったことで、目新しいものがないのが少し気になるわけです。
そこで、具体的にこれからお尋ねをしていきますが、今回のロシア訪問というのは、もちろん中央アジア、キルギスタン、カザフスタン等もいろいろ友好関係樹立という目標もおありであったでしょうが、特に北方領土返還ということについてより確かなものを目指しておったんじゃないのか、これが国民の非常に注目をし、期待をしておった点だと思うのですね。
相前後して宮澤首相もドイツとフランスを御訪問になって、そこでも北方領土返還についてのフランスやドイツの側面的な協力というものを非常に主張しておられた。これも後ほど関連してお尋ねします。
そこで、今回のロシア訪問で北方領土返還についての見通しは明るくなったという御認識なのか、あるいは領土問題についてはどういうお話し合いがあって、今後はこれが日ロ間でどう具体的に返還のテーブルにのせていけるのかどうか、この点はいかがですか。
○渡辺(美)国務大臣 御承知のとおり、北方領土問題というのは過去四十数年来にわたって対立をし動かないできたわけでございます。我々の方は四島一括即時返還ということを言ってまいりましたし、向こう側は領土問題は解決済みと言って対立してきておるわけですから、それでは何年やっておっても少しも前に進まない。
たまたまロシア政権が交代いたしまして、北方四島については、エリツィン政権としては法と正義に基づいてお互い歩み寄りで解決しよう。エリツィン大統領自身は、大統領になる以前から五段階返還論というものを提案をしておったわけであります。
それで我々といたしましても、ただ四島一括即時ということだけを言っておったのでは前に進まないのでございまして、やはり現実的な対応ということが必要でありますから、我が国の北方四島に及ぶ主権を認めれば返還の時期あるいは手続、条件、その他、住民の問題等は話し合いでやりましょう、住民が非常に不安感を持っておるということも聞いておりましたので、日本といたしましてはスターリンがやったような強制的に撤去させるようなことはいたしませんというようなことなど、いろいろと冷静に対処してまいりましょうというような話をしておるわけでございます。
これは感情的な問題にしてしまうと非常に難しい問題になってしまうので、静かに静かに、少しずつ世論を起こしながら、冷静に受けとめられるような形の話し合いを今後も継続していきましょうということで意見の一致を見たわけであります。
○上原委員 どうも余り釈然としないのですが、そこで、ずばりお答えいただきたいのです。
今度の外相の訪日でエリツィン大統領が九月の中旬に来られる、日程が確定したことは外交のスケジュールとしてはっきりしただけのことであって、九月に来られるということは前々から決まっておったことなんです。
そうしますと、今度の外相訪ロで北方四島の返還問題は前進したのですかしなかったのですか、これまでの話よりは進んだものはあったのかなかったのか、そこはひとつはっきりさせてください。
○渡辺(美)国務大臣 交渉事でありますから、一々言葉のやりとりを御紹介するわけにはまいりませんが、そろりそろりと前進をしておるということです。
○上原委員 肝心なところになったらそういうふうにおっしゃったら困ります。それじゃ具体的にもう少しお尋ねしてみましょう。
そこで、今も外務大臣おっしゃったのですが、これまでは四島一括即時返還論だったわけです。拡大均衡とか、その後いろいろ理由はつけてきた。だが、ここは非常に大事な点なのでぜひ明らかにしていただきたいわけですが、この間も本委員会で与党の方の御質問にもありましたが、外務大臣は最近盛んに、北方四島に対する日本の主権を認めれば返還の時期、態様は柔軟に応じる、こういう発言をなさっているわけですね。これは、四島一括返還論から段階的返還論に切りかえたものと見て差し支えないと思うのです。
一体この北方四島に対する日本の主権を認めれば云々、返還の時期とか態様は柔軟に応じる、国後、択捉にいるロシア在住者の生存権というか生活権というか、そういうものももちろん私は、外相のおっしゃっていること、考え方、それを全面的に否定しているわけじゃありません。だが、こういう外交案件が閣議でいろいろ議論をして決められたのか、外務省の全体的な協議の中で決められたのかわからないで、にわかに何か外相の地元の講演会でぽつんと出て、それが日本の北方四島返還のいわゆるカードのようになっているということは、いささか私は国民に疑問、疑念を与える面があると思うのです。
また、今おっしゃったように外交交渉ですからそれを一々表ざたにできないということも、我々素人だってその程度のことは常識論としてわかるわけですが、ここは閣議で了解されているのですか、どういう経緯を経てそういう返還論に日本政府は切りかえたのか。重要な点なので、このことはぜひ明確にしておいていただきたいと思うのです。
○渡辺(美)国務大臣 これは、四島一括即時返還ということをいつまで言っておっても前へは全然進まないという見通しのもとで私が、こういうものはいろいろな反応を見なければならぬわけですから、私の責任において、柔軟に——主権については四島一括ですよ、主権については。しかしながら、現実の対応の仕方はやはり現実を踏まえた上で話をしていく以外にはない。大体そういうようなことで向こうどの内々の話ができれば改めて閣議その他にかけて決定をするということになるのが順序だろうとは思います。
○上原委員 ですからそれは、外相がおっしゃったわけだから、そういう提案というか話し合いをしているわけですから、ロシア側はそれを一つのベースとしてこれからの返還交渉論というのをやるでしょうね。その考え方というのは政府全体の意思統一されたものと理解していいわけですか。それが一つと、そうしますと柔軟に対応するというその中身についても今度エリツィンさんとか向こうのロシアの外相と話し合ったのかどうか、あわせてお答えください。
○渡辺(美)国務大臣 それは、どこまで話をしたか、どうしたかということを今の段階で明らかにすることはできません。いろいろな話があって、合意をされるということになれば手続上の問題は必要でしょうし、御承知のとおり、いろいろな条約を結ぶに当たってもいろいろな交渉事があって、署名がされても、その後で国会にかけて是か非かの御承認を受けるわけでございます。したがって、今のところは、今交渉の最中でございますので、改めてこれこれのものを提案し、向こうからこれがあってというような段階にまだ至っていない。いろいろな意見の交換は行われているという段階であります。

【第123回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 平成4年5月21日】
○上田(哲)委員 北方領土についてお伺いします。
宮澤総理も五月に西欧を回られたし、渡辺大臣は四月の二十九日から五月の三日までエリツィンあるいはコズィレフ外相との会談を進められた。九月の十四、十五日には初めて大統領資格でエリツィンさんも訪日される。二段階論とか条件つき施政権論とかさまざまな話題がございました。返還交渉はどのような見通しですか。
○渡辺(美)国務大臣 実は私はエリツィンさんがロシア共和国の議長のとき、去年の五月に会って議論をしたことがあるのですが、彼が正式に大統領になられてからは会ったことがないので、日本の立場、主張というものをきちっと直接エリツィンさんに申し上げたいということが一つ。それから、北方四島問題に関して日本に来て話し合うということで、ことしの秋ごろ、九月ごろ日本に来たいという意思表示は、ことしの一月宮澤さんと会ったときに話があったのですが、その後半ばよりももう少し早めてもらえないかというふうな情報も入ったので、日にちが確定できないとこちらもいろいろ準備もございますしね、一国の元首を迎えるわけですから。そこで来日の日取りを確定してもらいたいというのが最大の目的なんです。これにつきましては、九月十四、十五と二日間を協議の場にしたいということははっきりしたわけであります。
あとは向こう側から、いわゆるソ連の考え方がいろいろ御説明がありました。別に目新しいものはありません。五段階返還論を要約して言ったということであって、彼はその中でもう一、二、三は大体目安がついたんじゃないか。つまり、北方四島というものはもう日ソ間に問題として存在しないとソ連は言ってきたのだが、これは問題として存在するということは認めたんだから一つは終わった。第二番目の北方四島と日本との交流という問題については、旧島民間のビザなし交流というものが既に始まっているから、これも緒についたねということです。もう一つ三つ目だ。私は第三番目として北方四島の軍事基地、これを非軍事化するということも申し上げる。ことし、来年のうちに北方四島の非軍事化、つまり軍隊を引き揚げる、必要な国境警備隊だけにいたします。人数は言わなかったけれども、そのようにいたしますから、そうするとこれももういいから、あと残っているのは要するに条約の締結と四島の返還交渉だけじゃないかというわけです。
しかし、それは大変いいことではあるけれども、しかしながら来世紀になって新しい世代の人がうまいこと考えるだろうというようなことでは困ります、それはうんと早めてもらわぬと困るということが一つ。それからもう一つ、我々としては、返還の時期とか態様とかいろいろな条件がありましょうが、住民の扱いとかこういうことについては、今まで日本としては北方四島即時一括返還ということでずっとやってきているわけですから、しかしこれは、北方四島が日本のものである、主権は一括して認めるという見通しが立ては、そういう見通しを認めてくれれば、我々はあとは条件等については相談の用意がありますということが要約するとこちらの主張であります。
その結論はもちろん出ておりませんが、両外務大臣の間でひとつもっと積極的に、九月に行くまでにどこまでできるかも含めて詰めてもらいたい。ただ、ロシアは今非常に困窮な状態にあって、旧保守派、共産党、車その他私に反対する勢力もかなりある。したがって、これが大きな政治問題になって騒がれるというようなことは困るんだ。だからこれは静かに、余り騒がないで着々と冷静に、時間がある程度かかっても仕方ないじゃないかというようなニュアンスでしょう、それで進めようというのです。ですから我々は、それならばもう一遍私は行くと言ったら、向こうはではサミット後がいいな。ではサミット後私が訪ソする。そして八月の末か九月の初めにコズィレフ外務大臣が日本に来て、そしてどこまで十四、十五の二日の会談でまとめられるかを全部準備をしようというところまでであります。
そういうことで、我々としても予断をもちろん許さないいろいろな周囲の情勢があります。ただ、ロシア側は一般世論、世論ということを盛んに言っておりまして、世論が承知しないと議会が動かない、そういうような案を出してもつぶされてしまったらそれで終わりになってしまう、だからそれにはまだ時間が足りないというようなことを盛んに言っておりましたが、正しい情報を与えなければ世論は動かないわけですから、その正しい情報を与えるという意味で、今までの両方で認められた北方四島に関するいろいろな諸資料、歴史的な条約だとかいろいろなやりとりがありますから、そういうような共同の資料を日本文とロシア文で両方でつくって大いにPRしようじゃないかということで、その中身については大体題目ぐらいは決まっているのですが、これから急いでやりたい、そう思っております。
○上田(哲)委員 その話し合いの中で何とか成果だと思われたのは、一年以内に北方領土から撤兵するという約束だったのです。ところが昨日、ロシアのパーベル・グラチョフ国防相が、日本が北方領土と呼んでいる地域からロシアの軍隊が撤退する用意はない、こう言い切っているんですね。その約束が少しおかしくなっているんじゃないですか。
○兵藤政府委員 仰せのとおり、もしこのグラチョフ国防相の発言がそのとおりであるとすればエリツィン大統領の渡辺外務大臣に対する発言と食い違うわけでございますので、早速我が方のモスクワ大使館に訓令を発しまして今照会をいたしております。
とりあえず国防省の渉外部に照会をいたしましたところ、この渉外部のとりあえずの答えは、グラチョフ国防大臣はクリル諸島から軍を撤退させるつもりはないというふうに述べたけれども、南クリル諸島から軍を撤退するつもりはない、つまり南クリル諸島と言った覚えはないんだ、こういうとりあえずの説明でございました。
それから、ロシア連邦外務省に照会をいたしましたところ、事実関係を把握していない、しかし一国の最高責任者が言った言葉を指針として、自分たちはこれを前提にして考えていくつもりであるというとりあえずの答えでございました。

↓もしよろしければ応援クリックお願いします。
人気ブログランキング

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク