先日、SNS上で次のようなコメントがありました。
立岩陽一郎さんによるこちらの関連記事で、解説コメントしました。「政治資金規正法は政治資金の透明性を確保することを目的としており、最終的な支出について1円単位で明らかにすることが本来の趣旨です。それを確実にするための法制度の改正に着手する必要があるでしょう」https://t.co/q98SmXmgCK
— 田中 信一郎 (@TanakaShinsyu) August 30, 2021
立岩陽一郎さんによる第3報でも「デジタル庁が出来て行政のデジタル化が進められていますが、まず先にこの政治資金の収支報告書こそデジタル化するべき」と解説コメントしています。総裁・幹事長が変わっても、自民党政権の問題として追及されるべき問題です。https://t.co/QM0SBRvYyZ
— 田中 信一郎 (@TanakaShinsyu) September 4, 2021
良いアイデアだと思い、政治資金の「完全透明化・デジタル化」と「企業団体献金の全面禁止」を盛り込んだ政治資金規正法の改正案について、参議院法制局に相談してみました。
さて、法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。
先日、法制局から法案についての回答をいただきましたので公表します。こちら↓が法制局に作っていただいた資料です。
政治資金の「完全透明化・デジタル化」について
ご依頼のメールにある田中信一郎氏の投稿で言及されている東京新聞の記事(令和3年8月 31 日)や立岩陽一郎氏の記事(同年8月 31 日・9月1日・9月3日)における田中氏のコメントを基に検討したもの
<政治資金収支報告書のデジタル化について>
○ 現在、総務省の「政治資金関係申請・届出オンラインシステム」が整備されており、これを利用することにより、政治資金収支報告書のオンライン提出は可能である。○ 国会議員関係政治団体は、政治資金収支報告書のオンライン提出に努めるものとされている(政治資金規正法第 19 条の 15)。
→ 例えば、政治資金収支報告の「デジタル化」を促進するため、政治資金収支報告書のオンライン提出の努力義務を課す政治団体の範囲を拡大することや努力義務よりも強い義務を課すこととする方向での法改正が考えられるか。
その場合、政治団体の組織や規模には大小様々なものがあることから、一律にオンライン提出を義務付けるのは困難ではないか。オンライン提出に係る義務を課すことが適当であると考えられる政治団体の範囲について精査する必要があるのではないか。
また、上記システムの利用率が低迷している理由として、領収書等のデータ化等の作業量が増加すること、担当者が不慣れなこと、対面提出であれば選管の担当者に相談できること等が挙げられており、オンライン提出に対応しやすい環境をどのように整備していくのかについても併せて検討する必要があるのではないか。<政治資金の使途を1円単位まで明らかにすることについて>
○ 政治資金収支報告書への支出の明細(支出先、支出の目的・金額・年月日)の記載及び領収書等の写しの添付が求められるのは、
① 国会議員関係政治団体については、人件費以外の経費のうち1件当たり1万円を超えるもの
② 資金管理団体(国会議員関係政治団体以外)については、人件費以外の経費のうち1件当たり5万円以上のもの
③ その他の政治団体(国会議員関係政治団体及び資金管理団体以外)については、政治活動費のうち1件当たり5万円以上のもの
とされている。出典:「政治資金規正法のあらまし」
○ 国会議員関係政治団体については、少額領収書等(人件費以外の経費で1件当たり1万円以下の支出に係る領収書等)の写しの開示制度が設けられている。
→ 例えば、政治資金の透明性の向上を図るため、人件費以外の経費のうち1件当たり1円以上のものについて、政治資金収支報告書への支出の明細の記載及び領収書等の写しの添付を求める方向での法改正が考えられるか。
その場合、
・ 田中氏は、政治資金収支報告書の「デジタル化」によって使途は1円単位まで明らかにできるようになると指摘しているが、政治資金収支報告書の「デジタル化」については、上記<政治資金収支報告書のデジタル化について>に記載したような課題があるのではないか。また、そもそも、1円以上の支出の記載等をさせることに伴う事務負担について、「デジタル化」によってどの程度の軽減が図られるのか精査する必要があるのではないか。
・ 「デジタル化」に対応できない政治団体にとっては、政治資金収支報告書を作成する事務負担が増えるだけになってしまうのではないか。結果として、政治活動の自由の妨げになるのではないか。
・ 総務省や都道府県選管による政治資金収支報告書のチェックの事務負担が大きくなってしまうのではないか。<“政策活動費”の使途の透明化について>
○ いわゆる“政策活動費”は、政治資金規正法上、政治活動費に係る支出のうち、「組織活動費」(政治資金規正法施行規則第7条第2項)に分類される。【参考】
○政治資金規正法施行規則(昭和 50 年自治省令第 17 号)(抄)
(収入及び支出の項目等)
第七条 〔略〕
2 法第十二条第一項第二号及び第十八条第四項第二号に規定する総務省令で定める項目は、人件費、光熱水費、備品・消耗品費、事務所費、組織活動費、選挙関係費、機関紙誌の発行その他の事業費、調査研究費、寄附・交付金及びその他の経費とする。
3 〔略〕* 「組織活動費」とは、政治団体の組織活動に要する経費(選挙に関するものを除く。)で、例えば、大会費、行事費、組織対策費、渉外費、交際費の類をいう(政治資金規正法施行規則第 14 号様式)。
○ 組織活動費が政治団体から政治家個人に支出された場合、政治資金収支報告書には、①組織活動費である旨、②支出された金額、③支出年月日、④支出を受けた者の氏名・住所が記載されるにとどまり、その先、組織活動費を受領した政治家がそれをどのように使ったのかなどについて明らかにすることは求められていない。
→ 例えば、組織活動費が政治団体から政治家個人に支出された場合には、政治団体がその政治家個人から組織活動費の使途(相手方・目的)や使用した金額を聴き取り、その内容を報告するといった仕組みを設けることが考えられるか。
仮にそのような仕組みを採用する場合には、報告を義務付けるのが適当と考えられる政治団体の範囲、報告すべき項目、報告の方法や時期など具体的な制度設計について検討していく必要があるが、どのように考えるか。
色々と参考になり、検討すべきことは多々ありますが、国会議員自身がデジタル化を進めることで対応可能なことがそれなりにあると思いました。現状はおそらく不十分と思われますが…。
次に、企業団体献金の禁止についてのメモです。こちらはポンチ絵です。
ひとまず、有権者の要望に応じて、法案骨子作成など検討してみようと思います。
ところで、今後のNHK党の選挙方針である「諸派党構想」に関する書籍が発売予定となりました。NHK党をよく取材いただいているライターさん(立花孝志かく闘えり、のライターさん)が書かれたものです。もしよければ書店や図書館などで手に取ってみてください。