今回は支援者の方からご提案いただいた法案について、参議院法制局に相談し、その回答を紹介します。※そこそこ分量があります。
少し前になりますが、2020年7月に支援者の方から次のような法案のご提案をいただいていました。
「司法プロセス可視化、司法プロセスにおける人権保護」に関する法案
・背景
カルロスゴーン逮捕にみられるように、日本の検察、警察は裁量的に強権を発動し、法の下の平等が担保されているとは言い難い状態となっている。
また、証拠隠滅の恐れがなくても、逮捕後の拘留期間が長く、別件逮捕による拘留延長、また不当な自白強要などが横行するなど、近代的司法制度が確立しているとは言い難い状態である。
このような体制下にあり、数多くの取り調べ現場において、人権侵害が今も続いていることが懸念される。またこのような状態は、自白が唯一の証拠とされない刑事司法の根幹が守られていないこととも繋がる。
司法プロセスにおいて人権が保護されないことは、民主主義国家においては大きな問題であり、早急に改善すべき問題である。森友学園問題におけるように、政治家、行政官僚が法律を犯したことが明らかであっても、彼らは取り調べ対象にはならず、恣意的に籠池氏が特捜による捜査を受けるなど不平等な状態が発生している。
籠池氏裁判では、第一審裁判において、事実が明らかにならないまま有罪判決がくだるなど、明らかに政治、検察の暴走、司法の責任回避が、目にあまる状態にあり、早急に改善すべきであると思われる。
・課題
「推定無罪(疑わしきは罰せず)」、「公平迅速な裁判」、「罪刑法定主義」など、法の根幹的な原則が、日本の刑事訴訟裁判プロセスにおいては、非常に軽視されており、マスコミ報道とあわせた感情的な世論形成と、これに影響を受けた恣意的な裁判運営がなされやすい傾向が大きな課題である。
情状酌量なども罪刑法定主義の根幹を無視した、感情的な裁判制度の特徴であると思われる。さらには、民事訴訟ではなく、刑事訴訟において陪審制を採用していることは、この感情的裁判を加速させやすいことも懸念される。
現状、司法制度、検察組織の問題が話題になっているにも関わらず、市民の間では、本質的な議論には到達しておらず、司法制度において人権を守るということを真剣に考えるためにも、法案の提出は重要であると思われる。
・具体的な提案、目的、効果
-可視化:警察、検察の取り調べプロセスを可視化することで、被疑者の人権を確保する。
また、法の下の平等が守られる司法プロセスとする。可視化のプロセスとしては、取り調べを全て録画し保存する。逮捕拘留される際には、弁護士の同伴を要求できるものとする。
-証拠アクセス:司法機関が確保した証拠は、検察側だけではなく、被疑者側の弁護人も全てアクセスが可能な状態とし、裁判プロセスでは、真実の探索ができる状態とする。
-拘留期間:被疑者は不当な拘留を長期継続されず、本当の意味において、公平、迅速な裁判が行われる司法制度を作りなおす。拘留期限が切れるタイミングでの別件逮捕による拘留延長は禁止とする。
-検察の裁量抑制:局長以上の公務員および、国会議員が告発されたうえで不起訴になった場合には、全案件が検察審査会を通るものとし、権力による恣意的な裁量が法の下の平等原則を破壊していないかチェックするものとする。逆に、個別に特別案件だけを、特別扱いする小沢議員陸山会事件のように裁量的に検察審査会を運用することは禁止する。
-推定無罪原則の順守徹底:合理的に疑わしいというだけではなく、確定的な証拠をおさえられていない状態で、自白のみによって有罪とされない推定無罪の原則を司法プロセスにおいて徹底する。証拠がなくても疑わしいけで有罪となるのであれば、恣意的な逮捕により誰もが有罪判決を受ける可能性があり、市民生活の安定性は損なわれる。
・本法案の目的
上述の課題を解決するためである。
・効果
恣意的な逮捕、拘留決定、有罪判決が下せなくなることで、市民生活の安定性が確保されること。また、まっとうな政治家がまっとうな意見を言い続けられること。まっとうなビジネスマンが、まっとうにビジネスを続けられること。日本の司法プロセスの前近代性が、日本への投資を抑制させる効果があることなども指摘されており、国際的な人権保護水準に高めることの派生効果は、さまざまあるものと推定される。
というわけで、
-可視化
-証拠アクセス
-拘留期間
-検察の裁量抑制
-推定無罪原則の順守徹底
についてのご提案を参議院法制局に相談しました。
ちなみに、取り調べの可視化については、以前も国会で審議されており、裁判員裁判の対象となる事件などで導入されているようです。
警察の取り調べ、全可視化は94%に 昨年度から義務化 https://t.co/YSeddgytPS
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) June 18, 2020
さて、法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。
以下、参議院法制局に作っていただいた資料を紹介します。
「司法プロセス可視化、司法プロセスにおける人権保護」に関する法案について(PDF)
参議院法制局からかなりボリュームのある回答をいただきました。ひとまずこの場で共有をさせてもらい、ご提案いただいた方を始めとして皆様の議論の材料となれば幸いです。