先日Twitter上で、新型コロナウイルス感染症によって日本の医療が逼迫している原因について考察したツイートが目にとまりました。
なぜ日本は欧米の100分の1の感染者で医療が逼迫しちゃってるのか、やっと報道された。国の医療政策が間違ってるから「ガラガラの民間病院に受け入れ義務がなくて、一部公的病院を中心とするコロナを受け入れた病院が逼迫してるだけ。病院全体では余裕ある」ってことなのね。https://t.co/06ry6je0Uf
— 渡邉正裕 (@masa_mynews) December 22, 2020
新型コロナウイルス感染症に対する医療の現状を考える際にこれまで様々な知見を見聞きしてきましたが、このように「民間病院」と「公立病院」のおかれた状況を分けて考える意見は恥ずかしながら初めて知りました。
ガラガラの民間病院では医師も看護師も暇そうにしてるわけだが、そもそもマスコミの取材を受けてバレたら困るから当然、取材拒否。逼迫してる感染症指定の公立病院だけがメディアで、大変だ大変だと言ってる姿が報道される。緊急時なんだから民間病院に受入れ義務を課したらそうとう平準化されるはず。
— 渡邉正裕 (@masa_mynews) December 23, 2020
元となる記事はこちら↓。
日本のコロナ対策論議に根本的に欠けているもの/米村滋人氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授・内科医)12/19(土) 20:05
記事内では上記の
・「民間病院」と「公立病院」の置かれた状況の違い
に加えて、以前から指摘されていることですが、
・人口あたりのICU病床不足
も医療状況逼迫の原因として指摘しています。
国会が開いている状況であれば、これらの指摘について国会で質問したいところなのですが、あいにく閉会中ですので、政府(各省庁・今回は厚生労働省)の国会連絡室を通じて質問してみました。
・新型コロナ患者受け入れのための病床の転換やICU設置が現時点で不十分であること。
・民間病院が新型コロナ患者受け入れに対して消極的であること。以上2点について、指摘の妥当性、そして妥当であれば現状あるいは今後の対策について、政府に質問を送りました。週明けにご回答いただく予定です。 https://t.co/zThSQrW7kD
— 浜田 聡 参議院議員 NHKから自国民を守る党 YouTubeチャンネル登録お願いします (@satoshi_hamada) December 25, 2020
そして、本日、質問に対する回答が届きました。重要な案件であり、共有します。
【御回答】
○ 各都道府県において、一般医療とコロナ医療とを両立した持続的な医療提供体制を確保するため、感染拡大のフェーズに応じた病床確保計画を策定しており、地域の感染拡大の状況に応じて、これに沿って必要な病床の確保に向けた取組を行っています。○ 12月23日時点で、全国で約28,000床の病床、そのうち約3,600床の重症者用病床を確保しており、公立・公的病院、民間病院含めコロナ患者の受け入れに協力いただいています。
○ 政府としては、新型コロナウイルス感染症への対応や患者数の減少による収入の減少などに対応するため、補正予算と予備費を合わせてこれまで約3兆円の措置をしてきました。さらに、12月8日に閣議決定された「総合経済対策」に基づき、今般の第三次補正予算においては、新型コロナ緊急包括支援交付金の増額や、医療機関等に対する感染拡大防止等の補助などの支援を行うこととしました。
○ 加えて、先週金曜日に予備費の使用を閣議決定し、今年度内の緊急的な措置として、病床逼迫地域において新型コロナ患者の受入を行う医療機関に対して、医療従事者を支援し受入体制を強化するため、重症者病床1床につき1,500万円、その他病床1床につき450万円の補助を行うこととしました。
○ なお、これまでの平時におけるICU等病床数に関する国際比較については、ICU病床に関しての国際的な定義は明確にされていないものの、OECDの資料等で引用されているRhodesの方式に基づいて人口10万人あたりの各国のICU等病床数を算出すると、アメリカ:34.7床、ドイツ:29.2床、日本:13.5床、イタリア:12.5床、フランス:11.6床、スペイン:9.7床、英国:6.6床となり、日本は他国と比べて必ずしも少ないというわけではありません。
お忙しい中でご回答いただいた関係者の方々にまずは感謝申し上げます。そして政府は補正予算や予備費を利用して新型コロナウイルス感染症の対応(特に受け入れ体制の整備)にご尽力いただいていることがうかがえます。
これに関する私の見解を長々と述べても仕方がないので、この回答に対する私の批判的な意見を一点だけ述べます。
上の渡邉正裕さんのツイートで「ガラガラの民間病院に受け入れ義務がなくて、一部公的病院を中心とするコロナを受け入れた病院が逼迫してるだけ。病院全体では余裕ある」という指摘については回答がうやむやの印象を受けました。
「緊急時なんだから民間病院に受入れ義務を課したらそうとう平準化されるはず。」というのは、意義のある提言と思います。※政策実現がどの程度可能であるかは議論の余地があるかもしれませんが。
上の回答によると、人口あたりのICU病床に関して先進諸国と比較して少ないことを否定するようなニュアンスがあり、一理あるかもしれません(※)。
そうであれば、なおさら「民間病院」と「公立病院」の置かれた状況の違いが、医療体制逼迫の原因でないか、そしてそれを適切に是正することで医療逼迫の状況を改善することができるのではないか、と思うわけです。
政府の新型コロナ対応がうまくいくことを願うともに、一国会議員として皆様の意見を取捨選択しながら政府に提言をさせていただこうと思います。
※ICU病床の問題については、病床や人工呼吸器など設備の問題のみならず、専門知識を必要とする集中治療医を育てる必要があるために、一朝一夕での解決は難しいと考えます。
コメント
アメリカやドイツの突出した数字は、ICU, HCU, SCU, CCU +救急部病床を全部ひっくるめての数字なような感じがします。
日本集中治療学会の「ICU等の病床に関する国際比較についての見解」を紹介します。
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https://www.jsicm.org/news/news200510.html
令和2年5月6日の、厚生労働省による「ICU等の病床に関する国際比較について」の中では、「人口10万人当たりICU等病床数」が、「13.5床」であると示されています。諸外国の病床数データは、ICUにIntermediate care bedsを含めて計算が行われております。当該病床は「ICUでの治療後に一般病床に至るまでの間に行われる治療を行うための病床」を指すものであり、日本ではハイケアユニット(HCU)に相当すると考えられます。したがって、諸外国の病床数との比較においては、日本のICUベッド数にこれを加えて計算を行う、という厚生労働省の考え方や算出方法は、本会としても妥当であると考えております。