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ウェイクフィールド事件について再確認が重要←トランプ人事でケネディ氏が厚生長官が決定

今回はウェイクフィールド事件についてです。色々な教訓があると思います。

MMRワクチンが自閉症と関係するという論文が捏造によるものだった、という事件です。

このウェイクフィールド事件、アメリカ大統領選挙選挙で勝利したトランプ人事が進んでいる中で、再認識しておきたいと思います。

2024/11/15 #newsevery #日テレ #トランプ次期大統領
15日も、アメリカのトランプ次期大統領が次々と打ち出している人事をめぐり波紋が広がっています。この“トランプ流人事”について、日本テレビ・小林史国際部長が解説します。

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https://news.ntv.co.jp/category/international/888a25dfbee24ba89de988ce48541bd3

――トランプ氏は14日、保健行政のトップである厚生長官にケネディ元大統領のおいで弁護士のロバート・ケネディ・ジュニア氏を起用すると発表しました

ケネディ氏を一言で言えば、「ケネディ家の異端児」です。国民的人気を集めたケネディ元大統領は民主党の政治家でしたが、おいのケネディ氏は、今回の大統領選では民主党からではなく無所属で出馬していました。

結局は途中で撤退し、直後に共和党候補のトランプ氏の支持に回っていたのです。

――これまでの人事のように「忠実なトランプ支持者」を起用したということではないわけですね

これまでの一連の人事とはやや性格が異なるところです。ただ、厚生長官というのは、全米の保健行政を統括するポジションで、その権限は絶大です。

たとえば、医薬品の認可などを担当するFDA=食品医薬品局や、コロナ禍で私たちもよく耳にしたCDC=疾病対策センターなどを管轄下においています。米メディアによると、連邦予算のおよそ25%を占める巨大な組織のトップに就く可能性にあるというわけです。

――ケネディ氏といえば、反ワクチン論者でも知られていますが、その人が厚生長官に就くということはどう受け止められていますか

ケネディ氏はコロナワクチンをめぐって、根拠のない陰謀論を広めたり、「自閉症はワクチンが原因だ」と発言したりするなど、科学に基づかない主張を繰り広げてきました。さらに、ワクチンを認可するFDAを敵視していて、FDAそのものを解体すべきだとも主張してきました。

こうしたことに対しトランプ氏も選挙前、ケネディ氏に「Go wild」=「好き放題やれ」と伝えていたということです。もし厚生長官に就任したら、かなり大胆な組織改革などを行うとみられます。

――国民の健康や医療政策にも大きな影響が出そうでしょうか

ケネディ氏は、アメリカの最先端の医療機関や研究機関の予算を大幅に削り、代わりに自然療法や予防医学などにより重点をおく考えを示しています。

そうなると、ワクチンや医薬品の開発に影響が出るなどする可能性もあります。

さらには、自然科学の分野で世界最高水準を誇るアメリカの研究機関などから優秀な人材が流出する懸念なども指摘されています。一部の米メディアは、「国民の健康に信じられないほどのリスクをもたらすだろう」と警鐘を鳴らしています。(以下略)

以下、ウェイクフィールド事件に関する参考資料を転載します。

〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第203回 アウトブレイク(17)李 啓充 医師/作家(在ボストン)(2011.08.01 医学書院)

(2937号よりつづく)
前回までのあらすじ:1998年,『ランセット』誌に「MMRワクチンが自閉症の原因」と示唆する論文が発表されたことがきっかけとなって,英国における同ワクチンの接種率は大幅に低下した。

医学界からの「追放」,自閉症児の親たちの「英雄視」
『ランセット』誌の論文がねつ造されたものであったことは前回も述べたとおりだが,まだねつ造であるとはわからなかった時期,世界の医学界は,すぐさま,「MMRワクチンが自閉症の原因」とするウェイクフィールドの仮説を検証する作業に取りかかった。接種率が大幅に低下するなど,安全性に対する信頼が大きく揺らぐ事態を看過し得なかったからであるが,大規模疫学研究においても,メタアナリシスにおいても,MMRワクチンを自閉症と結び付ける証拠は見いだされず,ウェイクフィールドの仮説は繰り返し否定されることとなった。

一方,ウェイクフィールド本人も,上司のロイヤル・フリー・ホスピタル院長から研究結果の再現を命じられたものの再現することに失敗,2001年,彼は同病院を辞職した。その直後,英国を去ったウェイクフィールドは,米国に渡って自閉症研究を続けることとなった。

その後,2004年に,サンデー・タイムズ紙の記者,ブライアン・ディーアが,ウェイクフィールドの『ランセット』論文にまつわる「利益相反行為」および「ねつ造」に対する追及を開始するのだが,やがて彼の粘り強い取材が英国医事委員会(General Medical Council)を動かし,論文作成にかかわった医師たちの「適性」審査が行われることとなった。2010年1月,同委員会は,ウェイクフィールドおよび直属の上司であったジョン・ウォーカー・スミス教授の倫理違反行為を認定,5月には,2人に対し,「医師免許取り消し」という,厳しい処分を下した。

かくして,ウェイクフィールドは,科学的にその仮説がほぼ完璧に葬り去られただけでなく,医師としての適性さえも否定され,医学界からも医療界からも「追放」されることとなったのだが,皮肉なことに,自閉症児の親の間では,逆に,これまで以上の支持を集めるようになった。「自閉症児のために,職や国を失ってまで医学界と闘う偉い医師」と,「英雄視」さえされるようになり,講演会などで,「私の身に何が起こったかなどどうでもいいのです。大切なのは,自閉症の子どもたちに何が起こっているかなのです」と発言するたびに,感動した親たちが目を潤ませる光景が繰り返されるようになったのである。

「科学的証拠」よりも「ねつ造」を信ずる背景
ウェイクフィールドは,ただ「データねつ造」という科学者として絶対に犯してはならない罪を犯しただけでなく,ねつ造に当たって弁護士から報酬を得たり,子どもに大腸鏡など不必要な侵襲的検査を実施したりと,多くの倫理違反行為を重ねた。その「悪行」の数々は,質・量ともに他を圧するものがあるのだが,なぜ,彼のような「札付き」の医師(研究者)が熱烈な支持を集めるのかというと,私には,その最大の理由は,自閉症児の親たちが医療界から冷たい仕打ちを受けてきた歴史そのものにあるのではないかと思えてならない。

例えば,自閉症という疾患の存在が明らかになった当初,「権威」とされた医師たちは,「学歴・インテリジェンスが高い母親の子どもに自閉症児が多い」という傾向があることを根拠として,「母親が子どもに対して冷たいことが原因」とする仮説を立て,「Refrigerator mom(冷蔵庫母)」なる新語まで作って,「子どもを自閉症にした母親の責任」を責め立てた。ただでさえ障害児を抱えて苦しむ親たちが,医師・医療界の冷たい「仕打ち」に,根深い不信を抱くようになったとしても不思議はない歴史があったのである。

さらに,非常に皮肉なことに,消化管の病態と自閉症を結びつけたウェイクフィールドの論文が全くの「ねつ造」であったのとは裏腹に,最近は,自閉症児における消化管病変の合併に新たな関心が寄せられるようになっている。自閉症児の一部に重い便秘や下痢などを合併する患者群が存在することが認識されるようになっているのだが,これまで,親たちが子どもの消化管症状を訴えても医師たちは「自閉症は消化管と関係ない」と聞く耳を持とうとしなかっただけに,「消化管の訴えを真剣に聞いてくれる」ウェイクフィールドに,親の信頼が集まるようになったのである。

換言すると,科学的にはほぼ完璧に否定された「MMRワクチン原因説」を,いまだに信じる親たちが多い最大の理由は,「医療そのものに対する不信の大きさにある」と言ってよいだろう。不信が根底にあるからこそ,どれだけ意を尽くして「科学的証拠」を説明しても,その説明を受け入れていただくことができないようなのである。

社会の「予防接種不信」
以上,自閉症児の親たちが「科学的証拠」よりもウェイクフィールドの「ねつ造」を信ずる背景について論じたが,実は,自閉症に限らず,予防接種一般に対する不信も,医療そのものに対する根深い不信がその背景にあるようである。個々の予防接種について,リスクとベネフィットに関する正確な科学的情報を提供することが不可欠であるのは言うまでもないのだが,たとえどれだけ正確な科学的情報を多量に提供したとしても,それだけで予防接種に対する社会の不信が解消されることは望み得ないのではないだろうか。

翻って日本の状況を見たとき,いま,社会の「予防接種不信」を解消する一層の努力が求められているというのに,例えば,いまだにポリオ経口生ワクチンが漫然と使用され続けていることが如実に示すように,一向に「やる気」が感じられない状況が続いている。麻疹といい,百日咳といい,死ななくてもいいはずの病気で子どもたちが死ぬのを見なくてはならないほど,悲しく,かつ,情けないことはないのだが……。

患者登録の手法や倫理委員会の承認などに虚偽ありと判断 Lancet誌がMMRと自閉症の関係を示唆した論文を抹消 2010/02/05(日経メディカル)

 10年以上にわたって物議を醸していた1本の論文が、Lancet誌から消えた。同誌の編集者たちは、2010年2月2日、この論文をLancet誌の掲載記録から完全に抹消するとの声明を発表した。

問題の論文は、Lancet誌1998年2月28日号に「Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children」とのタイトルで掲載された(アブストラクトはこちら)。英London大学のWakefileld氏らが、London大学Royal Free and University College Medical Schoolの小児消化器部門に紹介された、慢性腸炎と退行性の発達障害を示す小児を連続的に12人(平均年齢6歳、11人が男児)登録し、侵襲的な方法も用いて調べた結果を報告したものだ。

論文によると、12人は、それまでは健康で発達も正常だった。12人に見られた腸の障害は、回腸のリンパ小節過形成やアフタ様潰瘍などで、11人は慢性炎症と判定された。行動異常については、9人が自閉症、1人は崩壊性障害と診断され、残る2人はウイルス感染後性脳炎または予防接種後の脳炎の可能性例と考えられた。

Wakefield氏らは、このうち8人の小児について、腸の障害と行動異常の発生はMMRワクチン(麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合ワクチン)接種後だったと述べ、小児のこうした疾患とMMRワクチン接種の関係をさらに調べる必要がある、とまとめていた。

この論文は、英国その他の国におけるMMRワクチン接種率低下の主な原因と言われ、公衆衛生に大きな影響を及ぼした。その一方で、Lancet誌には様々な疑惑が寄せられた。

Lancet誌の編集者であるRichard Horton氏は、この論文について同誌2004年3月6日号で声明を発表、「Wakefield氏らは同誌の方針に沿った情報公開を怠った」と非難した。

Horton氏によると、98年の論文に対する主な疑惑は以下の6点だ。

(1) 侵襲性の高い検査を行うことについて倫理委員会の許可を得ていない。

(2)この試験自体は倫理委員会の承認を得ておらず、25人の小児を対象とする別の研究に対する承認の下に行われた。

(3)病院に紹介された小児を連続的に登録したと書かれているが、実際には著者のうちの2人が直接参加を呼びかけた患者だった。

(4)小児患者はLegal Aid Board(法律扶助委員会)のパイロットプロジェクトの対象者でもあった。このプロジェクトはワクチン有害事象の被害者による訴訟を有利に進める目的を持っていた。著者らはこれをLancet誌に告知しなかった。

(5)研究データはLancet誌に公開される前に弁護士の手に渡り、訴訟の正当化に利用された。

(6)Wakefield氏はプロジェクト実施に際し、Legal Aid Boardから5万5000ポンドの資金を得ていた。このプロジェクトとLancet誌に掲載された論文の対象患者は多くが重複しているため、この金銭的な利益相反について告知すべきだった。

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