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制度・規制改革学会「医療費の長期的な拡大への基本的な政策提言」

制度・規制改革学会が「医療費の長期的な拡大への基本的な政策提言」を出しています。

このシンクタンクが出している提言は毎回参考にしており、ここで共有します。

医療費の長期的な拡大への基本的な政策提言

2024 年 10 月 2 日
制度・規制改革学会有志

1,医療保険における再分配の透明化
今後の人口の減少・高齢化の急速な進展の下で、社会保障費は自動的に膨張する。これをサービスの質を低下せずに、どのように制御するかが日本財政の大きな課題となっている。
このためには、社会保障制度を通じた国民生活上のリスク分散機能と所得再分配機能を切り分け、医療保険における所得再分配機能は、他の社会保障や税の再分配機能と整合性を持たせる必要がある。
現在の医療・介護保険では保険料にも窓口負担にも、独自の再分配機能が盛り込まれている。本来は、日本の公的医療保険も、カナダ、オーストライリア、ニュージーランド、アイスランド、ノルウェー、デンマーク、スェーデン等に倣って、税方式化して、再分配機能を税に負わせることが望ましい。
もっとも現行の医療保険制度の下でも、患者の窓口負担は、年齢等にかかわらず、一律3割とし、それを低所得層(資産に基づく負担能力も勘案)には公費で一部肩代わりすることによって効率的で公平な分配を実現できる。また、現在は国民健康保険から排除されている生活保護受給者についても、介護保険制度の方式に倣い、そのために必要な保険料等の費用を扶助することで受け入れることができる。
公的年金では一階部分の基礎年金が所得再分配を果たす役割があり、給付費の半分に公費が投入されている。基礎年金の税方式化の必要性も指摘されており、医療保険の将来の税方式化は、この改革と整合的である。

2,医療・介護版マクロ経済スライドの導入など
また、公的年金については、すでに保険料率に上限を定め、その範囲内で給付費を抑制するマクロ経済スライドが構築されている。しかし、年金以上に給付の拡大が見込まれる医療・介護については、そうした具体的な手段は存在しない。経済成長率を超えるような医療費の伸びは持続可能ではない。特に高齢者医療費については、公費と現役世代からの支援金に大きく依存しており、キャップをはめる必要がある。このため医療・介護についても年金型のマクロ経済スライドを導入する必要がある。また、現金給付の年金と異なる現物給付の医療・介護については、そのサービス生産面での合理化を行う余地がある。
内閣府の 2060 年までの長期財政試算(2024 年 2 月)の「現状投影シナリオ(一人当たり実質成長率 0.9%)」では、医療保険料(介護保険・子育支援金含む)は、今後 40 年間で現行のほぼ 1.5 倍の水準になると見込まれる。こうした現役世代の負担増を防ぐためには、以下のような医療保険給付の合理化が必要とされる。
第 1 に、医療費の内でも、高齢化の影響を受けやすい後期高齢者医療費の伸びを潜在的な成長率の範囲内に抑制しながら、合意された成長率に沿って安定的に伸ばすため、公的年金のマクロ経済スライドと似た仕組みとして、「医療版マクロ経済スライド」(仮称)を導入する(※1)。このメカニズムでの微調整は、後期高齢者医療制度にかかる診療報酬改定の伸び率を若干抑制することで対処するものだが、それは医療を投資と位置づけながら医療財政の基盤を強化し、医療費を中長期的な名目 GDP 成長率に沿って伸ばす仕組みにも繋がる。
第 2 に、医療・介護費の伸び率を雇用者報酬の範囲内に抑制し、勤労者の負担率を高めないとする「子ども未来戦略(2023 年 12 月)」の既定方針を確実に実施する。また、全国一律の診療報酬を、地域の実情に合わせて、医師数や診療科別の不足する地域には手厚く、過剰な地域では抑制する等、弾力的に見直す必要がある。
第 3 に、医療サービス供給面の効率化であり、とくに包括払い診療費制度およびカルテの電子化を推進すべきである。(なお、包括払い診療費に含まれる薬剤費の透明化などの統計上の問題点の解決も必要である)。また英国、オランダなどの家庭医(総合診療医)による真のかかりつけ医機能の実現で、患者の重複受診・投薬等の防止とともに、病院と診療所の役割分担の明確化を進める。医療保険の内、「小さなリスクは自助、大きなリスクは共助」の原則で、市販類似薬などを保険外診療に移行するなど、保険診療の合理化を進める。人件費や医薬品以外の経費について ICT の活用で合理化を図る等の改革も必要である。さらに、ゼネリックのいっそうの活用を図る等で、GDP の伸び率の範囲内に抑制する。
高齢化社会における医療・介護保険の持続可能性を高めるためには、現行制度の合理化が必要とされる。

※1 医療版マクロ経済スライド(仮称)は、小黒一正著「日本経済の再構築」を参考としている。

提言内容は数多いですが、これらはいずれも合理的で、全て実現することが必要のように思われます。以下、羅列していきます。

・公的医療保険をて、税方式化して、再分配機能を税に負わせること

・患者の窓口負担は、年齢等にかかわらず、一律3割とする

・国民健康保険から排除されている生活保護受給者についても、介護保険制度の方式に倣い、そのために必要な保険料等の費用を扶助することで受け入れる

・基礎年金の税方式化

・医療・介護についても年金型のマクロ経済スライドを導入する

・つまり、医療・介護費の伸び率を雇用者報酬の範囲内に抑制する

・全国一律の診療報酬を、地域の実情に合わせて、医師数や診療科別の不足する地域には手厚く、過剰な地域では抑制する等、弾力的に見直す

・医療サービス供給面の効率化であり、とくに包括払い診療費制度およびカルテの電子化を推進すべき

・家庭医(総合診療医)による真のかかりつけ医機能の実現で、患者の重複受診・投薬等の防止とともに、病院と診療所の役割分担の明確化を進める

・「小さなリスクは自助、大きなリスクは共助」の原則で、市販類似薬などを保険外診療に移行するなど、保険診療の合理化を進める

日本医師会あたりは反発しそうですが、その反発をはねのけて進めないわけにはいかないくらい、現状の社会保険料負担が重過ぎると思います。

それを象徴するように、X上で次のポストが反響を呼んでいました。

約1日で1300万ビューという凄まじい伸びです。ここまで数字が伸びると、さすがに選挙結果に影響を及ぼす可能性はあるのではないでしょうか。

マクロ経済スライド方式については賛否はあるとは思いますが、これをルール化しておくことによる政治的コスト?の抑制という利点は大きいと思います。

※個人的な疑問としては、年金ではマクロ経済スライドが導入されていながら、医療・介護で導入されていなかったのはなぜなのか?というものはありますが。

とにかく、改革が望まれる医療費問題について、現在選挙戦真っただ中、衆議院選挙の立候補者が大いに議論されることを期待しています。

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