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制度・規制改革学会「コメ不足に対する緊急政策提言」

1か月ほど前、コメ不足が話題となりました。

この件について、制度・規制改革学会が提言を出していました。

ここでその内容を共有します。

内容の一部に、2018年に安倍政権で減反政策廃止という誤解があるが、事実上継続している(主食用米の生産を減らすために補助金を出す制度自体は維持・強化されている)、というものがあります。

事実上の減反政策があることの弊害は大きいようです。

・今後も米不足発生の可能性

・補助金が必要なことで国民への税負担

・消費者が高いコメを買うはめになる負担

ということで、提言の中心は減反政策廃止、と認識しました。

減反政策廃止で生産量を増やす→輸出を増やすことも可能。

食料安全保障上も健全であり、減反政策廃止は合理的と思いました。

コメ不足に対する緊急政策提言

2024 年 9 月 2 日
制度・規制改革学会有志

主食であるコメの値段が上がっており、棚からコメが消えたスーパーもある。それなのに、コメ不足を認めない農林水産省は 100 万トンもある備蓄米の放出を拒否している。しかし、コメが消費者に十分に届いていないことは事実であり、政府は備蓄制度の本旨に則り速やかに備蓄米を放出して、上昇しているコメ価格を鎮静させ、国民の不安を払拭すべきである。

コメ不足の背景
コメ不足の原因として、猛暑の影響で割れたり白濁したりしたコメを流通段階で取り除いたので消費者への供給量が少なくなったことや、外国人観光客の増加などでコメの需要が増加したことがあげられているがその影響は小さい。農林水産省は 9 月になると新米が出回ると言うが、今年の不足分を先食いすると来年の 7~8 月の端境期には再び不足が生じる可能性が大きい。
農林水産省と JA 農協は、コメの需要が毎年 10 万トンずつ減少するという前提で減反(生産調整)を進めてきた。猛暑以前の問題として、作年(2023 年)産のコメの供給量は前年に比べ 10 万トン減少させていたのである。農林水産省や JA 農協による減反の強化で、この 2 年間に米価は 2 割上昇した。来年はさらに 3 割上昇して食管制度時代の米価に近づき、コメの取引手数料に依存する農協にとっての大きな利益となる。今回の米不足でも備蓄米を放出しないのは、米価下落を防ぐ生産者保護政策である。かつて政府は米価が低下した際、市場から備蓄米として一定量を買い上げ隔離して米価を支えたことがあったが、今回はその逆のケースといえる。

減反政策の非国民性
減反は、国民の税金から約 3,500 億円の補助金を出してコメの生産量を制限し、米価を上げるというものである。2018 年に安倍政権で「減反廃止」したと称したために一部誤解があるが、主食用米の生産を減らすために補助金を出す制度自体は維持・強化されている。備蓄も米価維持のため 20 万トンのコメを市場から買い上げ隔離するもので、毎年 500 億円ほど財政負担がかかっている。米価が高いので輸入せざるをえないミニマムアクセス米に 500億円。国民は合計 4,500 億円を毎年納税者として負担して、かつ消費者として高い米価を払うことで二重の負担を強いられている。
減反は水田面積の 4 割に及ぶ。また、コメの面積当たり収量(単収)を増加させる品種改良もタブーになった。今では、カリフォルニアのコメ単収(生産性)は日本の 1.6 倍、1960年頃は日本の半分しかなかった中国にも追い抜かれている。
仮に、日本の水田面積の全てにカリフォルニア米ほどの単収のコメを作付けすれば、長期的には 1,700~1,900 万トンのコメを生産することができる。単収が増やせない短期でも、900 万トン程度のコメは生産できる。ところが、JA 農協と農林水産省は、主食用のコメの生産量を 650 万トン程度に抑制することを目標にしている。1960 年から世界のコメ生産は3.5 倍に増加しているのに、逆に日本は補助金を出して 4 割も減少させた。
減反は JA 農協発展の基礎である。米価を高く支持したので、コストの高い零細な兼業農家が滞留した。彼等は農業所得の 4 倍以上に上る兼業収入(サラリーマン収入)を JA バンクに預金した。また、農業に関心を失ったこれらの農家が農地を宅地等に転用・売却して得た膨大な利益も JA バンクに預金され、JA は預金量 100 兆円を超すメガバンクに発展した。
減反で米価を上げて兼業農家を維持したことと、JA が銀行業と他の事業を兼業できる日本で唯一の法人であることとが絶妙に絡み合って、JA の発展をもたらした。

減反廃止と直接支払いでコメ不足解消と食料安全保障の確立を
減反政策は、消費者に大きな負担を課す農業保護政策である。EU は農家の所得を保護するために、日本のような高価格維持ではなく、農家への直接支払いという政府からの交付金に転換している。米価を下げても主業農家に直接支払いをすれば、主業農家だけでなくこれに農地を貸して地代収入を得る兼業農家も利益を得る。減反を止めてコメの生産量が増加すれば農村の雇用機会も増え、地域の振興にも役立つ。
減反を止めれば、コメ不足は解消できるだけでなく食料安全保障にも貢献する。国内で1,700 万トン生産して 1,000 万トン輸出していれば、国内の需給が増減したとしても輸出量を調整すればよいだけである。平成のコメ騒動も冷夏が原因と言われているが、根本的な原因は減反のやり過ぎである。当時の潜在的な生産量 1,400 万トンを減反で 1,000 万トンに減らしていた。それが不作で 783 万トンに減少した。しかし、通常年に 1,400 万トン生産して400 万トン輸出していれば、冷夏でも 1,000 万トンの生産・消費は可能だった。
コメの輸出が着実に増えている。今ではカリフォルニア米との価格差はほとんどなくなり、日本米の方が安くなる時も生じている。減反を廃止すれば価格はさらに低下し、輸出は増える。国内の消費以上に生産して輸出すれば、その作物の食料自給率は 100%を超える。
上記の場合、コメの自給率は 243%となり、全体の食料自給率は 60%以上に上がる。
最も効果的な食料安全保障政策は、減反廃止によるコメの増産と輸出である。平時にはコメを輸出し、食料危機時には輸出に回していたコメを食べるのである。平時の輸出は、財政負担の必要がない無償の備蓄と同じ役割を果たす。4,500 億円の財政負担は解消される。主業農家への直接支払いは 1,500 億円で済む。国民は納税者としての負担を減少し、なおコメを安く消費できる。
小麦等の穀物に比べ、コメの国際市場は、貿易量が生産量に比べ少ないばかりか、上位の輸出国が頻繁に輸出制限する極めて不安定な市場である。また、輸入国もフィリピンなど途上国が多い。日本が 1,000 万トンのコメを安定的に輸出すれば、世界の首位を争う輸出国になり、世界の食料安全保障に大きく貢献する。

コメの減反廃止と輸出の増加は、経済安全保障として指摘される「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」を同時に達成する、日本経済再生への切り札ともなる。
(注)「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」
「戦略的自律性」とは、国民生活や社会経済活動の維持に不可欠な基盤を強靱化することに
より、いかなる状況下でも他国に過度に依存せず、正常な国民生活と経済運営という安全保
障の目的を実現すること。「戦略的不可欠性」とは、国際社会全体の産業構造の中で、自国
の存在が国際社会にとって不可欠な分野を戦略的に拡大することであり、自国の長期的か
つ持続的な繁栄および国家安全保障を確保することである。

今後の国会での議論に注目しつつ、私の方も上記提言内容を踏まえた質問主意書や委員会質問等を検討しようと思います。

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コメント

  1. 4-YouMe より:

    この夏の米騒動は「南海トラフ地震」騒ぎと直結しました。
    本当の理由は分かりませんが、わざわざ岸田総理がウズベキスタン、カザフスタン、モンゴル外交をキャンセルしたため大騒ぎになったことも要因です。ほとんど意味がないのに新幹線の徐行運転を行い、やっております感を出すなど、わざわざ大きな演出をしていました。(真実は???身に危険が迫るような危機の情報を受けていたので、地震の予知めいたデマを振りまいてキャンセルしたのではないかなど、ミステリアスな想像をしたくなります。)

    玄米ではなく白米であればエネルギーは大きいながらも、これ以上の米飯食は体によくありません。しかし、減反の水田にソーラーパネルを置いているのは、情けない勘違いです。

    穀物としては、パンやお団子などの蒸し焼き調理系、おかきやあられなどのチップス系に使用することもできますので、水田はフル活用してもらいたいながらも、それらの材料はほぼ海外からの『安価な輸入品』です。

    お米売り場には、減らない新米が溢れています。8月以降の買いすぎで持て余して買えない方が大勢いるのを感じます。(だまされた皆様、お気の毒。私はお米の粒が充実しはじめる新米の二次出荷分を購入します。笑)

    https://diamond.jp/articles/-/324157
    政策の大切さは当然ながら、私たちが住んでいるのは自然豊かな地球です。
    感謝を忘れずに、おいしい新米を頂きたいと思います。

  2. とろろ より:

    今年の米不足は様々な要因が重なっているのではないかと思います。
    私の住んでいる地域の農家さんは「米の取れる量は昨年と変わらない。米を作りたがらない農家が増えたのでは?今後米不足は続く」と言っていました。
    米は儲からない為農家が作るのを止め始めています。
    作っていても高温などの影響で品質が低下している。減反を進めすぎた結果、優良品質の開発を怠って来ました。
    これら条件が複合的に組み合わさり、今後日本の米作は縮小して行くことが懸念されます。

    ふるいにかけ選別された小さな米の事を”こごめ”と言います。今年は少なかったのかもしれません。

    余談として店頭に出回る「新米」には、古米ブレンドのものもあります。