本日の最高裁判決が話題となっています。
戸籍上は男性で、女性として働く経済産業省の職員が、省内の女性用トイレの使用を制限されたとして処遇改善などを求めた裁判で最高裁は、制限を認めないとの判断を示しました。裁判では、経済産業省が戸籍上は男性で女性として働く職員に対し職場があるフロアの女性用トイレの使用を制限したことを人事院が是認したことの違法性が争われました。11日の判決で最高裁は職員が女性用トイレを使用することに明確に反対した人がいないことや別の階の女性用トイレを使用してトラブルが起こっていないことなどから職員の不利益を不当に軽視するものと指摘し人事院の判定について「裁量権の範囲を逸脱・乱用したもので違法」と判断しました。最高裁がLGBTなど性的少数者の職場環境をめぐり判断を示すのは初めてです。
この判決について、SNS上では色々と盛り上がっております。
最高裁判所は、この判決で生じる社会混乱をどうするのだろうか。女性や女児の中には怖くてトイレに行けない人も出るだろう。
【有村治子】最高裁が衝撃「不当」判決!トランスジェンダー「女子トイレ利用制限」は違法/エマニュエル大使の影響工作・世論誘導【デイリーWiLL】 https://t.co/djJ0mT4S1X— Koji Hirai 平井宏治 (@KojiHirai6) July 11, 2023
https://twitter.com/takigare3/status/1678656325528743936?s=20
遂に恐れていた判決が出た。
身体が男性で心が女性であるトランスジェンダーの“女性用トイレ“の使用制限は「不当」だと認定。
この判決を受けて今後は性自認を含め、女性スペースからの排除は難しくなるだろう。
狂った世の中になっていく…https://t.co/N6DFr5Dy5T— あんかけナポリ (@napori_ankake) July 11, 2023
不安をあおるようなコメントを紹介しましたが、一方で冷静なコメントもあります。
要は「今回の判決は、本事例のみに適応されるべきものであり、トランスジェンダー女性が一般的に女性用トイレに入ることを認めるものではない」ということです。
全文読みました。常識的な判断かと思います。また、本件に限った事例判断の色合いが強いです。女性であることをカミングアウトしてから5年近く、何の問題もなく解け込んでいたにもかかわらず、当該階と1階上下の階のトイレの使用を禁ずるという措置について見直しを図らなかったことは違法ということで… https://t.co/SyGuMBB3cR
— 板垣勝彦 (@itagaki_katsu) July 11, 2023
https://twitter.com/LawyerDialyzing/status/1678704720570109953?s=20
https://twitter.com/LawyerDialyzing/status/1678704735506034689?s=20
最高裁判決を読みました
経産省で他の人が同じことを言っても同じ措置になるかはわかりませんし、ましてや他の公共施設や民間施設の話とは関係がありません勘違いした地方自治体とか企業が出てきてLGBT活動家がそこに付け込んでゴリ押ししそうなので要注意ですhttps://t.co/7y1IOEvaqM
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) July 11, 2023
経産省生物学的男性トランスジェンダートイレ訴訟最高裁判決文の射程
本件の重要事項を箇条書きにします。
1.既に管理権者たる経産省が、2階離れた女性トイレの利用を当該男性について認めていた
2.当該人物は生物学的男性で、性同一性障害の診断を受けてホルモン治療を受けてるが健康上の理由で未手術であり、よって戸籍上も男性
3.性自認が女性であり(トランス女性)外見は女性に見える者として扱われていた
4.当該男性が女性トイレを利用することについては説明会が開催されていた1番について、当該男性(冒頭画像アカウントの運用者)は職場の女性トイレを自由に使用させることを含め、原則として女性職員と同等の処遇を行うこと等を内容とする行政措置の要求をしたのが今回の訴訟の請求内容の一つです。
つまり、既に施設の管理権者の側が、個別に相談した上で、身体男性の女子トイレの利用を認めたのであって、誰もかれもがいきなり女性用トイレを使ってよい、という話にはならない。
したがって、本判決は不特定多数の人々の使用が想定されている公共施設・民間施設の使用の在り方について触れるものではありません。これは今崎幸彦裁判官の補足意見の末尾(PDFの最下部)でも指摘されていました。
最高裁の判決文の最後の部分を共有します。
(最後の部分)
こうした種々の課題について、よるべき指針や基準といったものが求められることになるが、職場の組織、規模、施設の構造その他職場を取りまく環境、職種、関係する職員の人数や人間関係、当該トランスジェンダーの職場での執務状況など事情は様々であり、一律の解決策になじむものではないであろう。現時点では、トランスジェンダー本人の要望・意向と他の職員の意見・反応の双方をよく聴取した上で、職場の環境維持、安全管理の観点等から最適な解決策を探っていくという以外にない。今後この種の事例は社会の様々な場面で生起していくことが予想され、それにつれて頭を悩ませる職場や施設の管理者、人事担当者、経営者も増えていくものと思われる。既に民間企業の一部に事例があるようであるが、今後事案の更なる積み重ねを通じて、標準的な扱いや指針、基準が形作られていくことに期待したい。併せて、何よりこの種の問題は、多くの人々の理解抜きには落ち着きの良い解決は望めないのであり、社会全体で議論され、コンセンサスが形成されていくことが望まれる。
なお、本判決は、トイレを含め、不特定又は多数の人々の使用が想定されている公共施設の使用の在り方について触れるものではない。この問題は、機会を改めて議論されるべきである。
ということで、判決文を読めば、特殊な事例のみに適応すべき、という趣旨なのですが、報道は一般事例に適応されるように報じており不安をあおる意図が見えます。
冷静に判断する国民が増えることを願いつつ、私も努力していこうと思います。
コメント
単純な疑問なのですが、トランス女性が女性として生きることは本人の権利として認められるべきとして、男性器がついているのであれば女性でも男性用トイレ使ったほうが楽なのでは…と思います。
トランス女性が男性用トイレを使用したとして、排便器の使用制限が性的なアイデンティティを侵害することにはなると考えにくく、また容姿や生まれ持った遺伝子によって性別を定義するべきではないという昨今のジェンダー論を許容するのであれば、身体的に男性の特徴を持つ女性が男性用トイレから出てくる事は許容されるべきである事から、当該女性の女性用トイレ使用制限に違憲判決が降されるのは違和感を持ちます