今回は(も?)、令和3(2021)年11月10日に私が参議院に提出した質問主意書を紹介します。
質問主意書とは何か?については以前の記事を一部引用させてもらいます。
特徴
質問主意書の最大の特徴は、本会議や委員会において議題の範囲内で口頭で行う質疑とは異なり、国政一般について問うことができることです。また、内閣の見解を確実に引き出せること、法律案と異なり議員1人でも提出できることも特徴となっています。
(中略)また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。
さらに、答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります。
議員一人で提出することができ、その返答は内閣の統一見解であるということです。政府に問うという性質上、野党議員がたくさん提出しています。
また、衆議院事務局がYouTubeで質問主意書に関する動画を作っており、参考として紹介しておきます。分かりやすくまとまっていると思います。動画の最後にあるメッセージが良いと思いました。
今回は丸山穂高前衆議院議員が衆議院に提出した質問主意書を私が内容をそのまま引き継いで参議院に提出したものです。丸山穂高前衆議院議員が提出して間もなく衆議院が解散となり、答弁先がなくなったために答弁書が作られないこととなりました。
そのままではせっかく書かれた質問主意書が無駄になるので、私がフォローして提出したという次第です。
今回は老朽化マンションの建て替え等に関する質問です。今後、この問題に直面するマンションが多数出てくるのは容易に想像可能です。
関連動画を紹介しておきます。
今回紹介する質問主意書はこちら↓。本来は質問書と答弁書は別なのですが、質問→答弁(赤字)の順に配列しました。
老朽化が進行したマンションは、外壁の剥落等によって居住者や近隣住民の生命、身体、財産に危険を及ぼすおそれがあり、また周辺地域の景観や治安の悪化にもつながるなど、その弊害は極めて大きい。令和二年末時点において築四十年超のマンションは約百三万戸存在し、その数は十年後には約二百三十二万戸、二十年後には約四百五万戸へと急速に増加することが見込まれており、適切な対応がなされなければ、我が国の経済社会全体に深刻な悪影響をもたらす懸念がある。令和二年にはマンションの老朽化等に対応するための「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、除却の必要性に係る認定(以下「要除却認定」という。)の対象の拡充等が措置されたが、赤羽国土交通大臣が自ら答弁で認めたように「一歩前進」に過ぎず(第二百一回国会参議院国土交通委員会会議録第九号、令和二年四月七日)、更なる対策強化が不可欠である。
上記を踏まえ、以下質問する。
一 老朽化等マンションの建替え等に対する容積率緩和特例の効果等について
1 国土交通省の資料によれば、平成二十六年の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」(以下「マン建法」という。)の一部改正で導入された耐震性不足のマンションを対象とした容積率緩和特例の許可の実績は、令和二年四月時点で三件とされている。令和二年四月以降の実績について政府として把握しているか、また把握しているならば何件か。
一の1について
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成十四年法律第七十八号。以下「法」という。)第九条第一項の規定に基づくマンション建替組合の設立認可又は法第百二十条第一項の規定に基づくマンション敷地売却組合の設立認可を受けた上で、法第百五条第一項の規定に基づく容積率の特例に関する許可(以下「容積率の特例許可」という。)を受けたマンションとして、令和二年四月以降に新たに把握した件数は、令和三年五月末時点で三件である。2 令和二年末時点において、築四十年超のマンションは約百三万戸存在し、その中には相当数の耐震性不足のマンションが含まれており、その建替え等を促進する必要性は高い。しかしながら、令和二年四月時点における実績を見る限りでは、容積率緩和特例の活用が進んでいるとは評価しがたい状況にある。その要因について政府としてどのように分析しているのか、また、今後の活用の見通しについて、政府の見解を問う。
3 令和二年のマン建法一部改正により、要除却認定の対象が拡充され、外壁の剥落等により危害が生ずるおそれがあるマンション等についても容積率緩和特例が活用できることとされた。新たに対象とされた類型における容積率緩和特例の活用の見通しについて、政府の見解を問う。
一の2及び3について
マンションの建替え等に当たっては、区分所有者等において、マンションの建替え等に係る制度について十分に理解し、広く合意形成を行った上で建替え等の方針を決定する必要があり、容積率の特例許可を受けるまでに一定の時間を要すると認識している。また、マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律(令和二年法律第六十二号。以下「改正法」という。)により、法第百二条第一項の規定に基づくマンションの除却の必要性に係る認定(以下「要除却認定」という。)の対象が拡大されたところであり、新たに要除却認定の対象となるマンションに係る基準(以下「要除却認定の基準」という。)についてもマンションの客観的な状況に基づき判断できるものとするとともに、要除却認定を含むマンションの建替え等に係る制度の内容を広く周知することにより、要除却認定の件数が増加するものと考えられ、これに伴い、容積率の特例許可についても活用が促進されるものと考えている。4 要除却認定の対象となり得るマンションであっても、容積率以外の斜線制限や日影規制等の建築規制により、容積率緩和特例が活用できない場合が生じ得る。特に既存不適格建築物については、建替え前と同規模のマンションでさえ建築できない可能性もある。そのような実例について把握しているのか、それらが容積率緩和特例の活用に及ぼす影響についてどのように分析しているのか、政府の見解を問う。
一の4について
御指摘のような実例については具体的に把握していないが、容積率以外の建築規制により、容積率の特例許可の活用が限定されるマンションが存在する可能性があることは承知している。また、建替えにより新たに建築されるマンションは、原則としていわゆる斜線制限、日影規制等の現行の建築規制に適合させる必要がある一方で、いわゆる斜線制限については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第五十六条第七項による適用除外があり、いわゆる日影規制については、同法第五十六条の二第一項ただし書による特定行政庁の許可による緩和が可能であること等から、容積率の特例許可を活用する際の容積率以外の建築規制による影響について、一概にお答えすることは困難である。5 これまでの活用実績やその他の建築規制等を考慮すれば、容積率緩和特例による老朽化等マンションの建替え等の促進に対する効果は限定的なものにとどまると考えられる。容積率緩和特例が活用できない老朽化等マンションに対する建替え等促進策を早期に導入する必要があると考えるが、政府の見解を問う。
一の5について
改正法では、容積率の特例許可の対象を拡大したほか、マンション敷地売却制度の対象も拡大するとともに、老朽化したマンションを含む団地における敷地分割制度を創設しており、既存の制度の周知に加え、これらの制度の活用を総合的に推進することにより、老朽化したマンションの建替え等を円滑化することとしている。二 令和二年のマン建法一部改正で拡充された要除却認定の対象に係る要件の在り方等について
令和二年のマン建法一部改正で拡充された要除却認定の対象の認定基準については、国土交通省に設置された「要除却認定基準に関する検討会」(以下「検討会」という。)において検討が行われ、令和三年八月二十七日には認定基準案の概要が検討会において概ね了承され、引き続き施行に向けた検討が進められている。
1 新たな要除却認定の対象のうち、外壁の剥落等により周辺に危害を生ずるおそれがあるもの及び配管設備の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものに関しては、容積率緩和特例を受けるために、故意に修繕等を行わずに劣化を放置するといった行為を誘発する懸念がある。検討中の認定基準は、この懸念に十分対応したものとなるのか、政府の見解を問う。
二の1について
要除却認定の基準については、特定行政庁において適正かつ円滑に要除却認定が行われるように、マンションの客観的な状況に基づき判断できるものとするよう検討している。また、御指摘の故意に修繕を行わずに劣化状況を放置することを抑制する観点からも、改正法による改正後のマンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十九号。以下「改正マンション管理適正化法」という。)第五条第一項において、管理組合がマンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを適正に管理するよう自ら努めることとされていることを踏まえ、マンション管理適正化指針において、長期修繕計画の作成や見直し等の必要性について記載し、適時適切な維持修繕を促すこととしている。2 バリアフリー性能が確保されていないものに関する認定基準により要除却認定を受け、マンションを建て替える場合、建替え後のマンションがバリアフリー基準を満たすことは要件とはされない見込みである。この点について、検討会の議事要旨によれば「運用面での対応」がなされるとのことだが、具体的にはどのような対応が想定されているのか。また、「運用面での対応」で建替え後のマンションがバリアフリー基準を満たすことを確実に担保することができるのか、政府の見解を問う。
二の2について
容積率の特例許可を受けた上で建替えにより新たに建築されるマンションについては、基本的にバリアフリー化を求めることとし、改正法による改正後の法第百二条第二項第五号の規定に基づき国土交通大臣が定める基準等を満たすことを、特定行政庁が確認できるようにすることを検討している。三 老朽化等マンションの建替え等促進策の抜本的強化の必要性について
既に述べたように、現状においても、容積率緩和特例による効果は限定的である可能性が否定できない。さらに、我が国の世帯数は令和五(二〇二三)年をピークに減少局面に入ると推計されていることを踏まえれば、今後は容積率緩和特例の恩恵を受けることができるのはごく一部の好立地のマンションに限定されることとなり、中長期的に持続可能な施策ではない。急増する老朽化等マンションに対応するには、建替え等促進策を抜本的に強化する必要がある。
1 我が国ではマンションの建替えや敷地売却には区分所有者等の五分の四以上による決議を要することとされているが、韓国では、一定の場合、区分所有者等の四分の三以上による決議で足りるとされている。我が国でも少なくとも韓国並みに要件を緩和する必要があるのではないか、政府の見解を問う。
三の1について
今後、老朽化したマンションが更に増加していくこと等を踏まえ、規制改革実施計画(令和二年七月十七日閣議決定)に基づき、建替え決議等の在り方について、要件の緩和等の方策も含めて検討していくこととしている。2 国土交通省は平成二十三年に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定し、適正な修繕積立金の設定や積立てを促してはいるものの、同ガイドラインでは、建替えや除却などは想定されておらず、それらに要する費用に関する記載はない。また、実態として修繕積立金の水準が不十分なマンションも多数存在している。老朽化が進行したマンションが大きな外部不経済をもたらすことに鑑みれば、修繕や除却に要する最低限の費用の積立てを法的に義務付けることは十分に正当化され得る施策である。その導入に向けた検討を速やかに開始すべきと考えるが、政府の見解を問う。
三の2について
マンションの管理の主体は、区分所有者等で構成される管理組合であり、改正マンション管理適正化法第五条第一項においては、管理組合がマンションを適正に管理するよう自ら努めるものとされている。国土交通省が策定しているマンション標準管理規約においても、修繕積立金の額は管理組合において自主的に決定されるべきものとしており、同省においては、管理組合において適正な修繕積立金の額の設定及び積立てが促進されるよう、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を策定し、その周知徹底に努めているところであるが、御指摘の修繕や除却に要する資金の積立てについて、法的に義務付けることについては、慎重な検討が必要と考えている。なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。
右質問する。
私は自宅が分譲マンションの一室であり、自身が区分所有者です。そのマンションの理事会役員もさせていただいたことがあり、さらに任期中にそのマンションの大規模修繕のための話し合いにも参加させていただいたことがあります。マンションの建て替えについては、今後その問題に直面するマンションがどんどん出てくるでしょう。その時のためにこのような質問主意書と答弁書が少しでも役に立つことを願っております。
丸山穂高議員には事後報告とさせていただきました。引き続き、丸山穂高前衆議院議員が提出した質問主意書を引き継いで私が提出した質問主意書を紹介していく予定です。