今回は(も?)、令和3(2021)年10月8日に私が参議院に提出した質問主意書を紹介します。
質問主意書とは何か?については以前の記事を一部引用させてもらいます。
特徴
質問主意書の最大の特徴は、本会議や委員会において議題の範囲内で口頭で行う質疑とは異なり、国政一般について問うことができることです。また、内閣の見解を確実に引き出せること、法律案と異なり議員1人でも提出できることも特徴となっています。
(中略)また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。
さらに、答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります。
議員一人で提出することができ、その返答は内閣の統一見解であるということです。政府に問うという性質上、野党議員がたくさん提出しています。
また、衆議院事務局がYouTubeで質問主意書に関する動画を作っており、参考として紹介しておきます。分かりやすくまとまっていると思います。動画の最後にあるメッセージが良いと思いました。
今回は、私にメールでご相談いただいた方からのご依頼による質問です。
その方によると私のブログで参議院の「行政に対する苦情の受理状況報告書」の存在を知り、苦情を送ったとのことでした。
上の報告書にある以下の意見の送り主とのことです。
[不適正な永住許可等について]
外国人配偶者との間で離婚協議を行う際、当該配偶者の在留期間更新の必要があり、在留期間更新のための身元保証書を手交 した。しかし、この身元保証書が自分の知らないところで入国管理局 (当時)に対する永住許可申請に使用され、許可がなされた。 これにより意に反して永住許可についても自分が身元保証人とされ、不利益を被つている。そのため、本年、出入国在留管理局に対してその訂正を求めたが訂正できないとの回答であった。また、同局に対して不正な手段をもって永住許可申請が行われたことについて情報提供を行ったが、特段の対応はな されていない。同局の対応は、入管法を誠実に執行しているとはいえず、不適正である。
問題の原因は、在留期間更新と永住許可の同時申請を行う場合、1枚の身元保証書の提出で受付可能とされている点にあるため、身元保証人となる者本人への確認や、希望する在留資格の記入欄を身元保証書に設けるなどの対応を早期に行うべきである。
私にご相談いただき、その後質問主意書として提出する次第となりました。
今回紹介する質問主意書はこちら↓。本来は質問書と答弁書は別なのですが、質問→答弁(赤字)の順に配列しました。
出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案を審査した平成三十年十二月八日の参議院法務委員会において、永住許可申請に対して厳格に審査を行うべきとの附帯決議がなされている。しかし、令和三年七月、参議院行政監視委員会に、不適正な永住許可等があるとの苦情が申し立てられたとの報告が私のもとに届いている。当該苦情の内容は、「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ外国人が在留期間更新許可申請と同時に永住許可申請を行う場合、一枚の身元保証書で両方の申請を出入国在留管理庁が受け付けているために、苦情の申立人である日本人配偶者から離婚を求められていた外国人が、在留期間更新許可申請を行うためと偽って当該日本人配偶者に身元保証書を作成してもらい、これを永住許可申請にも使用して永住許可を受けているというものであった。
「日本人の配偶者等」の在留資格の審査については、入国・在留審査要領中の「在留資格の審査」(第十二編「在留資格」の第二十八節「日本人の配偶者等」中の「在留資格の審査」をいう。以下同じ。)において「夫婦の一方が離婚の意思を明確にしている場合」は在留期間六月と定めている。この規定は、日本人配偶者が外国人に対して離婚を求めている場合でも、当該外国人が日本人配偶者から身元保証書を受け取ることを前提としていると考えられる。
以上を踏まえて、以下質問する。
一 出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)における身元保証人の定義は何か。
一について
出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和五十六年法務省令第五十四号。以下「入管法施行規則」という。)第二十二条、別表第三及び別表第三の六に規定する身元保証人とは、外国人が本邦において安定的、継続的に入国・在留に関する所期の目的を達成できるよう、必要に応じて当該外国人につき経済的な保証及び法令遵守等の生活指導を行う旨を法務大臣に対して約束する者を指す。二 「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に滞在する外国人が在留期間更新許可申請と同時に永住許可申請を行う場合、一枚の身元保証書で両方の申請を受け付けているというのは事実か。事実である場合、その手続きの法的根拠は何か。
二について
在留期間の更新の許可の申請については入管法施行規則第二十一条及び別表第三の六の規定において、永住許可の申請については入管法施行規則第二十二条の規定において、それぞれ身元保証書を提出することが必要であると定めており、これらの申請を同時に行った場合には、それぞれの申請について身元保証書の提出を求めている。三 永住許可申請の際に提出する書類の一つに資料転用願出書があるが、転用を認める資料に身元保証書は含まれるか。含まれる場合、出入国在留管理庁は身元保証人に対して身元保証書の転用の意思確認をどのようにして行っているか。
三について
資料転用願出書については、過去の在留に関する申請において提出された資料の転用を希望することの意思を示すものであるが、出入国在留管理庁の運用において資料転用願出書による身元保証書の転用は認めていない。四 入管法施行規則第二十二条第一項第三号において、永住許可を申請しようとする外国人は「本邦に居住する身元保証人の身元保証書」を提出しなければならないと定められている。在留期間更新許可申請のための身元保証書が身元保証人の知らないうちに永住許可申請にも使用された場合、その身元保証書は永住許可申請の身元保証書として有効であるか。有効である場合、その法的根拠は何か。
四、六及び七について
身元保証書は、外国人が本邦において安定的、継続的に入国・在留に関する所期の目的を達成できるよう、必要に応じて当該外国人につき経済的な保証及び法令遵守等の生活指導を行う旨を法務大臣に対して約束する目的で求めているものであり、在留の許可の申請の目的で作成されるか永住許可の申請の目的で作成されるかでその機能に本質的な違いはないことから、申請種別ごとに異なる様式とする必要はないものと考えている。
お尋ねの「在留期間更新許可申請のための身元保証書が身元保証人の知らないうちに永住許可申請にも使用された場合、その身元保証書は永住許可申請の身元保証書として有効であるか」及び「日本人配偶者から離婚を求められている外国人がその事実を秘したまま、在留期間更新許可申請のための身元保証書を永住許可申請にも使用し、在留期間更新許可申請と永住許可申請の両方を同時に行う可能性を出入国在留管理庁は想定しているか。想定している場合、出入国在留管理庁はそのような経緯でなされた永住許可申請を適正なものとして受け付けているか」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、在留期間の更新の許可の申請や永住許可の申請の受付後に出入国在留管理庁において把握した事実によっては、身元保証人に身元保証をする意思がないものと判断することもあり得る。五 入国・在留審査要領中の「在留資格の審査」において、「日本人の配偶者等」の在留資格について「夫婦の一方が離婚の意思を明確にしている場合」の在留期間は六月と定められているが、この規定は、外国人に対して離婚を求めている日本人配偶者が在留期間更新許可申請のための身元保証書を当該外国人に手交することを前提としたものか。
五について
お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、身元保証書は、外国人が本邦において安定的、継続的に入国・在留に関する所期の目的を達成できるよう、必要に応じて当該外国人につき経済的な保証及び法令遵守等の生活指導を行う意思がある者が作成すれば足り、必ずしも日本人配偶者が作成する必要はない。六 日本人配偶者から離婚を求められている外国人がその事実を秘したまま、在留期間更新許可申請のための身元保証書を永住許可申請にも使用し、在留期間更新許可申請と永住許可申請の両方を同時に行う可能性を出入国在留管理庁は想定しているか。想定している場合、出入国在留管理庁はそのような経緯でなされた永住許可申請を適正なものとして受け付けているか。
四で回答済み。
七 身元保証書には外国人が申請しようとする在留資格や在留期間を記載する欄はなく、各申請共通の書式となっている。紛失または汚損を理由にして複数枚の身元保証書を作成させる可能性もあるため、永住許可申請の身元保証書については独自の書式とし、永住許可申請のための身元保証書である旨を明記する必要があると考えるが、政府の見解如何。
四で回答済み。
なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。
右質問する。
相談者の方の意向により、今回の質問主意書の提出となりました。問題の性質として、外交・防衛上重要な問題となり得ると思います。相談者の方に感謝します。今後、相談者の方にとっても、その他の関係者の方々にとっても、ある程度納得できるような形に落ち着くことを願っております。
最後に、今回の質問に関連する動画を紹介しておきます。