サイトアイコン 参議院議員 浜田聡のブログ

地方自治体が訴えを提起された場合は、議会の議決が必要とする地方自治法改正案について参議院法制局に相談していました

先日、有権者の方から次のようなご要望をいただきました。

いつもお世話になっています。○○と申します。浜田議員に地方行政の傲慢な態度を直すきっかけとなるよう、法整備の提案をお願いしたくDMを送付いたします。もし興味を持っていただけるようでしたら、国会に持っていって頂きたくおねがいします。旭川市のイジメ事件をはじめとする行政の無対応によって被った住民の不利益が相次いでいます。住民が行政を訴えたとしても、議会を通さず行政だけの判断で「住民から頂いた莫大な税金」を使い裁判に対応しています。もし、議会の議決を通さないと裁判に対応できないというようにしていれば、有権者で住民の声が反映されると思います。基となっている地方自治法96条(※)1項に「訴えの提起された場合は、議会の議決が必要」との記載を入れて頂きたくお願いします。1国民の勝手なご意見かもしれませんが、ご検討の程よろしくお願いします。

(※)地方自治法第96条

第96条

1.普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設け又は改廃すること。
二 予算を定めること。
三 決算を認定すること。
四 法律又はこれに基づく政令に規定するものを除くほか、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金若しくは手数料の徴収に関すること。
五 その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める契約を締結すること。
六 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。
七 不動産を信託すること。
八 前二号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。
九 負担付きの寄附又は贈与を受けること。
十 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること。
十一 条例で定める重要な公の施設につき条例で定める長期かつ独占的な利用をさせること。
十二 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項 に規定する処分又は同条第3項 に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項 (同法第38条第1項 (同法第43条第2項 において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項 において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第三項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
十三 法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。
十四 普通地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整に関すること。
十五 その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項

2.前項に定めるものを除くほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務に係るものを除く。)につき議会の議決すべきものを定めることができる。

現状、地方自治体が裁判に訴えられた場合にはその行政の判断で裁判に対応しているのが一般的だと思いますが、その対応の際に議会の議決を通せ、という主旨の法案を作ってほしいとのご要望です。


地方自治体への裁判への訴えと言うと、行政事件訴訟法あたりが関係する感じでしょうか⁉(※もし違っていたらすいません)

現状においては行政の長である首長は選挙でえらばれるので、現状でも地方自治体行政の裁判への対応に関する判断は住民の声が反映されていると言えそうですが、さらに議会の議決を必要とすることで、より住民の声が反映されるようにする、というのは一理あるとは思います。

二元代表制(三重県議会)

地方自治体では、国の議院内閣制と異なり、首長と議会議員をともに住民が直接選挙で選ぶという制度をとっており、これを二元代表制といいます。ともに住民を代表する首長と議会が相互の抑制と均衡によって緊張関係を保ちながら、議会が首長と対等の機関として、自治体の運営の基本的な方針を決定(議決)し、その執行を監視し、また積極的な政策提案を通して政策形成の舞台となることこそ、二元代表制の本来の在り方であると言えます。

というわけで、このような趣旨の法案について、参議院法制局に相談してみました。

さて、法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。

法制局から法案についての回答をいただきましたので公表します。こちら↓が法制局に作っていただいた資料です。

地方自治法の改正について

「議会の議決を通さないと裁判に対応できない」とする地方自治法の改正について

○ 「議会の議決を通さないと裁判に対応できない」とする地方自治法の改正を検討するに当たっては、何のためにそのような改正を行うのか(目的)、裁判への対応に当たり「議会の議決」が必要と考えるのはなぜか等について、整理する必要があります。

○ 裁判への“対応”としては、例えば、弁護士への相談などの地方公共団体内部における準備行為や、答弁書の提出などの訴訟行為が考えられるところ、“議会の議決を通さないと行うことができない対応”とは、具体的にどのようなものなのか、上記の目的等との関係を踏まえて検討する必要があります。

○ 議会の議決が得られない場合に、当該裁判にどのような影響が及ぶのかについても検討する必要があります。例えば、訴訟は引き続き係属するものの、被告である地方公共団体は主張や立証をすることができず、その結果として原告の請求が認容されることになるのか、それとも、訴訟の成否にまで影響が及ぶのかなど、どのような帰結となることを想定しているのか整理する必要があります。

○ 上記の制度設計の検討とは別に、地方公共団体が被告として裁判に対応するに当たり議会の議決を必要とする場合には、例えば、次のような点が問題になると考えられます。

・ 地方公共団体が裁判に対応できないこととなった場合には、原告・被告ともに裁判において事実や証拠を提示する機会を失うことになり、それらに基づいた事案の解明や紛争の解決が実現できなくなるのではないか。

・ 地方公共団体が適時に裁判に対応できない結果として、裁判の当初から主張や立証をしていた場合と比べて、地方公共団体にとって不利な内容の判決が下されることもあり得るのではないか。

法制局のご指摘は、なるほど、と思う点が多々あるように思いました。今後法制化すべきか、等について考える必要があります。すぐにどうにかなる問題ではありませんが、ひとまず共有をしておきます。

ご要望を送っていただきました方、そして参議院法制局の方、どうもありがとうございました。

ところで、今後のNHK党の選挙方針である「諸派党構想」に関する書籍が発売予定となりました。NHK党をよく取材いただいているライターさん(立花孝志かく闘えり、のライターさん)が書かれたものです。もしよければ書店や図書館などで手に取ってみてください。

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