以前、医療現場の最前線で新型コロナウイルス感染症の対応をされている内科医と思われる方がTwitter上で大変興味深いツイートをされていました。新型コロナウイルス感染症に関する4択のクイズです。(医療関係者にとって)基礎知識の確認に良いと思いましたので、紹介していきます。
※1問目~50問目までは、以前の記事に加え、さらに改訂版をまとめています(以下のリンクリストは改訂版のみ)。
今回は76問目~80問目を紹介します。
どの選択肢がどれだけ選択されたのかが既に出ていますが、気にせず皆様も答えを考えてみると面白いと思います。
※最多の選択肢が解答とは限りません。
まずは76問目。
【問題76】
2021年9月に北里大学と興和株式会社により、抗寄生虫薬「イベルメクチン」を新型コロナウイルス感染症の治療薬に用いる第3相臨床試験(治験)の告知がだされた。
この治験の実施内容について、正しいものを選べ。
(選択肢下記)— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 2, 2021
プラセボ(偽薬)とは、本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない偽物の薬の事。
成分として少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のないブドウ糖や乳糖が使われることが多いです。
今回の治験は、本物のイベルメクチンと、プラセボ偽薬との比較試験になります。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 2, 2021
大事なことなのでもう1回繰り返します。
「ウイルス感染性の抑制」
「ウイルス増殖抑制」
「重症化率低下」のいずれでもなく、
『投与開始7日間で臨床症状が改善するか』を検証する目的となっています!!!— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
ああ、そうそう。
「後遺症の抑制」とか
「入院する率」とか
「死亡率」とか
も、見てませんよ。ええ、もう1回言います。
すごく大事なことなのでね。
「後遺症の抑制」とか
「入院する率」とか
「死亡率」とか
も、見てません!!!— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
まあ、大体ワクチンの効果とかを論じるのにいつも、
「感染を抑制できるかどうか」
「発症(ウイルスの増殖性)を抑えるかどうか」
「入院の率を抑えられるか」
「重症化を抑制できるか」
「死亡率を減らせるか」
などが項目になってるので、とても不思議な治験だというのがまず第1印象です。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
疲れてきたので、この辺でこの解説は終わりにさせていただきます(棒読み)
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
77問目。
【問題77】※76の関連問題です。
2021年9月に北里大学と興和株式会社により、抗寄生虫薬「イベルメクチン」を新型コロナウイルス感染症の治療薬に用いる第3相臨床試験(治験)の告知がだされた。
この治験の実施内容について、正しいものを選べ。
(選択肢下記)— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 2, 2021
【問題77解答】正答:d)
北里大学&興和のイベルメクチンの治験の目的については76問目の解説に書いたので、そちらご参照ください。この治験は健常な人は参加できません。
PCRで陽性の「感染者」のみが参加できます。
すでに退院した人や、long COVIDと呼ばれる後遺症の人は治験の対象になりません。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
問題76解説に書きましたがもう1回。
今回の北里&興和のイベルメクチンの治験は、「感染の抑制」
「発症抑制」
「入院の抑制」
「重症化の抑制」
「死亡率の抑制」
「後遺症の抑制」いずれも評価項目ではなく、
『投与開始7日間で臨床症状が改善する優越性があるか』を調査するそうです。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
ワクチンの場合はいつも、
「感染の抑制」
「発症抑制」
「入院の抑制」
「重症化の抑制」
「死亡率の抑制」
「後遺症の抑制」などが評価の項目になっていたので、それに慣れてしまったせいか、私の目には、この治験はとても不思議な感じに見えます。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 6, 2021
78問目。
【問題78】問題58の関連問題
問題58で示したように、mRNAタイプのコロナワクチンを若年者に接種した場合の極めて稀な副反応としてワクチン接種後心筋炎の問題がある。このワクチン後心筋炎を想定し、接種後の運動の可否が問題となっている。この問題について小児科学会の現段階での方針を述べよ。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 8, 2021
【問題78】正答:c)
小児科学会はコロナワクチン接種後の稀な合併症として心筋炎が挙げられることから公式ホムペ内Q&Aにおいて、『ワクチン接種後2~3日できれば1週間程度、運動を控えて過ごすこと』
を推奨しております。https://t.co/DPUCXh2CAj
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
ウイルスの場合は①②③の重症度全てが発生しうるのですが、コロナワクチン接種後の心筋炎の場合は平均入院期間が1日程度の軽症例であり、大半が
「安静」
「非ステロイド系消炎鎮痛剤」
「ステロイド系消炎鎮痛剤」で、快癒しているとの報告です。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
私たち循環器内科医は、心筋炎の治療において、安静が非常に重要なポイントであることを理解しています。
ですから、コロナワクチン接種後の心筋炎の危惧されるごく短い期間に、激しい運動をすることをあまりお勧めできません。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
小児科学会のコロナワクチン接種後のQ&Aを載せておきます。 pic.twitter.com/PfndnSkvxy
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
79問目。
【問題79解答】正答:d)①③⑥⑦
コロナワクチン接種後の心筋炎について、正しい記述は<性別>
①男性に多い
<年代>
③若年者に多い(10-20代)
<ワクチン接種回数>
⑥2回目接種に多い
<発症の中央値>
⑦3-4日(中央値3.5日と報告されているようです)です。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
80問目。
【問題80】
2021年10月段階でワクチン接種率(1回以上接種)が国民の80%を超えた国家を選べ。①米国 ②イギリス ③ロシア ④カナダ
⑤アラブ首長国連邦 ⑥イスラエル ⑦ブラジル ⑧チリ
⑨スペイン ⑩ポルトガル— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 8, 2021
①米国 ②イギリス ③ロシア ④カナダ
⑤アラブ首長国連邦 ⑥イスラエル ⑦ブラジル ⑧チリ
⑨スペイン ⑩ポルトガルこの10カ国に、日本を足したグラフを上記のサイトで作ってみます。国を指定し、METRICの欄を「People vaccinated」にすると1回接種の割合を表示できます。 pic.twitter.com/1xppHBTfQI
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
③ロシア:1回接種率34%程度で接種進んでません。自国のベクター系ワクチンのスプートニクの有効性の論文に色々ケチがついてしまい政府への不信感もあるようです。今後変異株の爆誕地にならなきゃいいのですが。
④カナダ:77%とかなり高く2回目接種も進んでいる。メーカーはファイザーが主体です。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
⑦ブラジル:出遅れましたが1回目接種は72%と人口が多い割には頑張ってるブラジル。ただし2回目はまだ全然。あとここも中国製不活化ワクチンの率が高いのが心配事項。
⑧チリ:なんと1回目接種は83%!世界トップクラスの接種率ですが、ここも中国製不活化ワクチンの率が高いのが心配事項です。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
ちなみに、日本は2021年10月13日現在、1回目接種率は74.3%。
以前にも問題にした通り、11歳以下のワクチン接種対象外の人口が9.3%おりますので、それを除いた人口ですと接種対象年代の81.9%が、すでに1回目の接種を終えたことになります。 pic.twitter.com/NBn9s2we2i— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
A)スペインの最近の感染者の動向
B)スペインの接種率(これは2回目分ですが)
C)スペインのワクチンメーカー比率 pic.twitter.com/ajqHiH9mA3— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
A)日本の最近の感染者の動向
B)日本の接種率(これは2回目分ですが)
イギリスも添えてみました。
C)日本のワクチンメーカー比率※日本のワクチンメーカー比率は8月で職域分を別枠出ししてるので、このサイトで拾ってもらえてないみたいです。実際には16%ぐらいがモデルナだそうです。 pic.twitter.com/oQv7Rw70xc
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) October 13, 2021
問題76と77で扱っているイベルメクチンのコロナへの効用については、1年前は期待がありましたが、その後の調査で芳しい結果が出ていません。
今回紹介した問題と解答において、国内治験において検証している内容が、『投与開始7日間で臨床症状が改善するか』であって、重症化率抑制・死亡率抑制・入院率抑制、などではない(これらは既に否定的な結果が出ているからでしょう)というのは、もはやイベルメクチンに過度な期待はできないのでは、と思います。
今後も引き続き、問題と解答を紹介していきます。
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