以前、医療現場の最前線で新型コロナウイルス感染症の対応をされている内科医と思われる方がTwitter上で大変興味深いツイートをされていました。新型コロナウイルス感染症に関する4択のクイズです。(医療関係者にとって)基礎知識の確認に良いと思いましたので、紹介していきます。
※1問目~50問目までは、以前の記事に加え、さらに改訂版をまとめています(以下のリンクリストは改訂版のみ)。
今回は61問目~65問目を紹介します。
どの選択肢がどれだけ選択されたのかが既に出ていますが、気にせず皆様も答えを考えてみると面白いと思います。
※最多の選択肢が解答とは限りません。
まずは61問目。
在宅酸素療法を行なうCOPD(慢性呼吸不全)の患者さんが0.5-1Lの流量の酸素で済むのに対し、COVID19急性期の中等症患者さんは4-10Lもの酸素を必要とすることが多い。
仮に6L酸素投与を必要とする場合、上記ボンベは何時間で空になるか。a)48時間ぐらい
b)24時間ぐらい
c)12時間ぐらい
d)1時間ぐらい— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 4, 2021
【問題61】
医療用酸素ボンベは容器の大きさと使用流量によって持ち時間が変わります。使用時間=ボンベ残量(L)÷使用流量(L/分)
で計算できます。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
分かりやすい早見表も出ております。
これは残量がLではなく圧力(ボンベに圧力計で表示が出ます)での表ですが現場ではこの圧力表示を元に、何時間ぐらい持ちそうか判断しています。
ギリギリいっぱいまでは使わず90%いかないところで交換するようにしていますから1時間ちょっとと言う感じです。 pic.twitter.com/enf43X5G9N— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
酸素6L必要な患者さんと言うのはCOVID中等症としてはごく普通の流量です。
上にも書きましたが、重症手前の患者さんでは10-15L必要ということも珍しくありません。このような患者さんを10人収容するホテルは、このタイプの酸素ボンベが1日240本。1トントラックで1日1回搬入でも間に合わない。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
………が、本来そのような設備がない自宅や療養ホテルなどでは、携帯できる酸素ボンベをいちいち搬送するしかないとなると、これはまじで大変です。
天文学的な本数の酸素ボンベが必要になります。💦
例えば小学校や公民館などを、仮設コロナ病床にしたとしても同じ問題が発生すると思います。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
病床を増やせ!というご意見をおっしゃる方々が、ここら辺の問題をどう捉えていらっしゃるのかな・・・・というところは、現場にいる人間としては非常に気になってます。
コロナは「箱だけ用意すれば」管理できる疾患ではありません。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
機器がメーカーからのリースになりますので、手続きや流量の指示書作成(医者が書く必要がある)、自宅への設置に時間もかかります。
また急に何万台も在庫あるわけでもありません。また電力を消費するため、酸素需要の患者さん大勢に対応するためにはそれなりに大量電力供給が必要になります。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 5, 2021
医療施設で使う酸素ですが、私自身、供給体制をあまり気にしてこなかったので新鮮な問題と解説でした。
62問目。
【問題62】
コロナの新しい治療薬ロナプリーブ(抗体カクテル療法)だが、適応となる患者さんが厳密に規定されています。下記の4名の中で、ロナプリーブの適応に当てはまる患者さんを選べ。※4人のうち1名だけが適応。あと3名は適応とはならないためロナプリーブを使用することができない。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 4, 2021
【問題62】正答:c)
ロナプリーブは本年7月下旬に現場に投入されるようになった新しい新型コロナ治療薬です。抗体カクテル療法と言って、言ってみるなら人工的に製造した抗体を点滴で入れてコロナウイルスと戦わせるというお薬です(めっちゃ端折った説明!)
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
<条件②>
酸素投与の必要のない『軽症』の患者さんにしか使えません。酸素が少しでも下がり、酸素が開始になった時点でロナプリーブを使う適応は無くなります。※申し込んでおいて物品が届く間に酸素が開始になったらアウト。
※酸素を必要とする患者さんに投与すると状態が悪化する可能性がある。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
<条件④>
上記の①〜③を満たし、なおかつ、以下の重症化因子を1つ以上有する場合。
👇
ロナプリーブを使う適応があると判断されます。
上記選択肢の中ではc)だけが①〜④の全ての条件を満たします。a)b)d)は条件を満たしませんので使えません。 pic.twitter.com/ummTa7lgqd— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
病棟で使う治療薬の問題については、私は当直など病棟担当勤務を久しくしていないので非常に難しく感じます。
63問目。
【問題63】
2021年5月にインドで発見されたδ変異株(δ VOC)は、2020年までの従来のCOVID-19に比べ、1人の患者さんから排出される平均のウイルス量がかなり多いことが危惧されている。
大体どれぐらいウイルス量が多いと推定されるか。a) 4倍ぐらい
b) 1200倍ぐらい
b) 500倍くらい
c) 60倍ぐらい— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 4, 2021
δ変異株が台湾を襲った本年6月頃、Ct値10前後の患者さんの報告がどどっと出てきて、twitter内でもドクターの先生たちが「これはやばいんじゃないか」という話題が一斉に出てきました。
当院でも6月末に、過去1度も見たことがないCt値1桁という患者さんが立て続けに2名出て、仰天したものです。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
例えばですが、
Aさん:Ct値=20
Bさん:Ct値=14であれば、BさんはAさんよりCt値が6低いですから、
ウイルス量はBさんの方がAさんより2の6乗=64倍
多いことになります。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
α変異株が出てきたとき、私たちは
「Ct値低いなあ〜」
と言いながら、13,14,16,15,….なんて付近の数値を眺めていました。ところがこれがδ変異株になって
「ひえええええ〜😵Ct値低すぎて何がなんだかよくわからん!」
と、10前後が出てくるのが当たり前になりました。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
デルタ株で収まり始めたコロナ禍が再増悪化したように思いますが、そのデルタ株のやばさをしっかりと理解しておきたいものです。
64問目。
【問題64】
日本で現在広く使用されているmRNA系コロナワクチンのファイザー(コミナティ/ BNT162b2)と、モデルナ(COVID−19ワクチンモデルナ/mRNA-1273)だが、1回の投与量と、含まれる有効成分に違いがある。
正しいものを選べ。— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 4, 2021
【問題64解答】正答:c)
添付文書などを調べればすぐ出てくるので調べてもらっていい問題です。わからないことが出てきたら調べましょう。ファイザー:1回0.3ml 有効成分30μg
モデルナ:1回0.5ml 有効成分100μgです。両者にたようなワクチンですが有効成分はモデルナの方が多いのです。
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
65問目。
①未感染者では、ファイザーに比べモデルナは約1.2倍ぐらい抗体量が多い
②未感染者では、ファイザーに比べモデルナは約2.6倍ぐらい抗体量が多い
③既感染者では、ファイザーに比べモデルナは約1.3倍ぐらい抗体量が多い
④既感染者では、ファイザーに比べモデルナは約5倍ぐらい抗体量が多い— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 4, 2021
現時点ではベルギーの報告を元に判断。1647人で接種後6-10週目で調査を行い、
未感染者IgG抗体価
・ファイザー 1108 U/mL
・モデルナ 2881 U/mL(ファイザーの2.6倍!)既感染者IgG抗体価
・ファイザー 8174U/mL
・モデルナ 10708U/mL(ファイザーの1.3倍!)https://t.co/yf6n7w8I5a— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
まあ、抗体が多いとものすごい安心感が得られ😂、少ないとすごいショックを受ける方がおられます。
ですが、まあ、抗体価って『現金の紙幣』みたいなものです。資産って、紙幣の枚数だけでは決まらないですよね?
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
ちなみに、この論文でたの8月30日なんですけどね・・・・
翌日にはもう・・・・https://t.co/OAyW9IKIc1— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
次々と・・・・https://t.co/9GId4pQcm1
— Dr.丼のCOVID問題集 (@sguardo_bot) September 8, 2021
抗体量はそれなりに感染予防の指標となり得るものだとは思いますが、下がったからと言ってすぐに感染しやすくなるというものではありません。時間がたてば抗体量は下がりますが、免疫記憶は残るため、時間経過後の抗原暴露の際には迅速に免疫応答が起こるからです。昨今、ワクチン接種後に抗体が下がる、などの報道がありますが、不安を無駄にあおっているような気がして、報道側の悪意を感じます。視聴者が賢くならないと騙される典型例ではないでしょうか。
今後も引き続き、問題と解答を紹介していきます。
ところで、今後のNHK党の選挙方針である「諸派党構想」に関する書籍が発売予定となりました。NHK党をよく取材いただいているライターさん(立花孝志かく闘えり、のライターさん)が書かれたものです。もしよければ書店や図書館などで手に取ってみてください。