2021年の通常国会で、特例公債法改正案が提出される予定です。
まず、特例公債法とは何かについて、Wikipediaより拝借。
特例公債法(とくれいこうさいほう)とは、赤字国債を発行するための1年限りの特例法。 公債特例法や赤字国債発行法と表記されることもある。
日本の予算において大雑把に言うと、歳入の3分の2は税収ですが、3分の1は借金です。借金の是非はさておき、借金しないと予算が成り立たない現状では、この特例公債法が仮に成立しないとなると、予算執行に大きな支障をきたす可能性があります。
赤字国債、特例5年延長へ コロナ対策、財政規律に懸念 時事通信 2020年12月05日
政府が、赤字国債の発行に関する特例措置を5年間延長する方針であることが5日分かった。新型コロナウイルス対策などの財源を柔軟に確保するのが狙い。延長すれば国会審議を経ずに赤字国債を発行でき、政治の混乱などで予算が執行できなくなる事態を回避できる。
(中略)
年明けの通常国会に特例公債法の改正案を提出する。以前は、赤字国債を発行するには毎年国会審議を経る必要があった。2016年に成立した現行改正法からは、20年度までの5年間は政府の判断で発行が認められている。
以前は、この特例公債法は毎年国会で審議されていました。
↑で紹介したように、この法案が成立しない場合、予算執行に支障をきたす可能性があります。実際に2012年にそのような例があり、予算執行抑制の方針を政府が出すといったものでした。
2012年、民主党政権時、通常国会でこの法案が成立せずに国会閉会となってしまったことがあります。当時、参議院では民主党が法案を可決するための過半数の議席がなかった(いわゆるねじれ国会)からです。
その時の記事がこちら↓。
政府、予算執行抑制策を閣議決定 財源枯渇、11月末に後倒し 日本経済新聞 2012年9月7日
政府は7日午前、赤字国債発行法案が成立しない状況を踏まえた今年度予算の執行抑制策を閣議決定した。9月から3カ月間で合計5兆円程度の抑制効果を見込む。財源がほぼ枯渇すると政府が説明してきた時期は、従来の10月末から11月末に後倒しされる計算になる。政府が本格的な執行抑制に踏み切るのは戦後初めて。
(中略)
赤字国債発行法案は12年度予算の歳入の約4割を占める重要法案。衆参で多数派が異なる「ねじれ国会」では野党の協力がないと成立せず、国会運営の駆け引き材料になりやすい状況が近年続いている。財務相は「このままでは例外扱いしている国土防衛や警察にも支障を来しかねない」と危機感を表明。
この時は、衆議院解散を条件に、当時野党の自民党・公明党が協力して特例公債法が成立しました。
特例公債法案成立が確実に、民自公が修正案合意 ロイター 2012年11月13日
その後は、この特例公債法は、政局によって国民が犠牲になることを防ぐため?に毎年審議するものではなく、複数年にわたって有効な法律となりました。前回は2016年に5年間有効な法律として成立しています。
改正特例公債法が成立 赤字国債、5年間発行可能に 日本経済新聞 2016年3月31日
2016年に成立した特例公債法の期限が今年までなので、来年の通常国会で改めて審議されるというわけです。今回取り上げた特例公債法は、ねじれ国会ではない現状において成立しないことはあり得ませんが、過去を振り返ってみると、今後も政局の駆け引きに使われる可能性のある法律と言えます。