今回は、平成22年(2010年)4月19日に田中康夫衆議院議員が提出した質問主意書を紹介します。
質問主意書とは何か?については以前の記事を一部引用させてもらいます。
特徴
質問主意書の最大の特徴は、本会議や委員会において議題の範囲内で口頭で行う質疑とは異なり、国政一般について問うことができることです。また、内閣の見解を確実に引き出せること、法律案と異なり議員1人でも提出できることも特徴となっています。
(中略)また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。
さらに、答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります。
議員一人で提出することができ、その返答は内閣の統一見解であるということです。政府に問うという性質上、野党議員がたくさん提出しています。
今回は、政党「同一略称」についての質問です。
当時存在していた政党、「新党日本」は略称が「日本」でした。その後、別の政党、「立ち上がれ日本」も略称を「日本」で届け出ました。このことに納得のいかない「新党日本」代表の田中康夫氏が提出した質問主意書です。
なぜ、この質問主意書を取り上げるかの理由を説明します。
「NHKから国民を守る党」が党名変更をする予定です。
「NHKから自国民を守る党」となる予定です。そして略称を「自民党」で届け出る予定であり、今回の質問主意書の内容が非常に重要となってくるということです。
ゴルフ党への変更は中止となりました。
今回紹介する質問主意書はこちら↓。本来は質問書と答弁書は別なのですが、質問→答弁(赤字)の順に配列しました。
私が代表を務める新党日本は、二〇〇五年八月に結党し、現在まで三回の国政選挙を何れも、略称「日本」で戦っている。
第二一回参議院議員通常選挙に於いて比例区得票数百七十七万余票、得票比率三.〇一%を獲得し、公職選挙法、政治資金規正法、政党助成法が定める政党要件を何れも満たす公党である。
昨年八月に執行された第四五回衆議院議員総選挙後も、公職選挙法第八十六条の六に基づき、「新党日本」を政党の名称として、「日本」を政党の略称として、中央選挙管理会に届け出ている。これらは何れも受理された後、本部の所在地、代表者の氏名と並んで、官報に告示されている。
然るに今般、「たちあがれ日本」を名称とする政党が、略称として「日本」を届け出る事態が生じた。総務省に拠れば、異なる政党が「同一略称」で選挙戦を戦った事例は過去になく、メディアの選挙報道に於いても投票・開票の現場に於いても、混乱・誤認が生ずる恐れは不可避である。
故に四月十三日、速やかな善処を求めて総務省自治行政局選挙部の責任者と面談した所、正確を期すため、当方から文書で照会したならば、選挙部長名で翌十四日正午迄に文書で回答する旨、通告された。これを受けて同十三日、総務省自治行政局選挙部長宛に、「『たちあがれ日本』がなした『政党の略称に関する届出』につき、以下の各事項に対し、具体的にご回答ください」と計七項からなる質問状を手渡した。
これに対し、約束の期限から丸二日が経過した十六日午後に至っても総務省から返答がないため、再度、回答依頼の書面を送付した所、「二〇一〇年四月十六日付けで貴職よりいただいた回答の再依頼について、現時点では、指定された本日十六時までには回答できませんのでよろしくお願い申し上げます」なる文面の書面が届いた。その後、十九日正午を過ぎても、回答は未着である。
こうした中、「共同通信」は十八日、「総務省、回避策示せず 略称『日本』問題」と題する記事を配信し、「有識者からも『有権者が混乱する可能性があり、対応策を取らないのは責任放棄だ』との指摘が出ている」、「新聞などメディアが政党の公約を報じる際に略称を使うことがあり、読者が両党の政策を取り違える恐れも。ほかにポスターや選挙公報など、混同が予想されるケースは多い」と懸念を表明している。
加えて、「産経新聞」も十五日付紙面で、十四日の会見に於ける私の発言「『本物の民主』とか『まともな民主』という党を(政党要件を満たす五人以上の)国会議員が作って、略称『民主』で届けられるかと総務省に聞いたら、『その通りだ』という驚くべき見解だった。二党だけの問題ではない」を引用した上で、「公職選挙法に同一呼称を禁ずる規定がなく、論理的には、今後結成される新党が略称『民主』や『自民』などを名乗ることも可能」と同じく懸念を表明している。
即ち、今回の政党「同一略称」は、単に二党間に留まらず、衆議院・参議院で第一党の民主党、同じく第二党の自由民主党にも影響を及ぼす、謂わば日本の政党政治全体の問題である。
よって、以下に質問する。一 「同一略称」につき、混乱・誤認が有権者に生じることを総務省は認識しているにもかかわらず、回避措置を何故講じないのか。
二 前記、混乱・誤認の生ずることは、公正な選挙が損なわれると総務省及び中央選挙管理会は予見しながら、何故放置するのか。
一、二、七、十及び十三について
公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)における政党その他の政治団体の名称及び略称については、衆議院又は参議院の比例代表選出議員の選挙における政党その他の政治団体の名称及び略称の届出において、当該政党その他の政治団体に所属する衆議院議員若しくは参議院議員を五人以上有すること(以下「議員数要件」という。)又は直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙若しくは参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政党その他の政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であること(以下「得票率要件」という。)のいずれにも該当しない政党その他の政治団体による、議員数要件又は得票率要件に該当する政党その他の政治団体の名称及び略称と同一又は類似の名称及び略称の使用が禁止されているところである。
一方、議員数要件又は得票率要件に該当する政党その他の政治団体による他の議員数要件又は得票率要件に該当する政党その他の政治団体の名称及び略称と同一又は類似の名称及び略称の使用は、禁止されていない。
このような取扱いの差異につき議論の余地があることは承知しているが、現行の公職選挙法の下では、中央選挙管理会には、政党その他の政治団体の政治活動の自由を制限しないよう、法令の規定により受理しないことが認められる場合を除き、届出の受理に関する裁量権の行使は認められていない。そのため、中央選挙管理会は、同一又は類似の名称及び略称を有する二以上の議員数要件又は得票率要件に該当する政党その他の政治団体から名称及び略称の届出があった場合でも、当該届出を受理せざるを得ない。
なお、現行の公職選挙法が改正されない限りにおいては、今後同様の事案が生じた場合でも、同様の対応をとることとなる。三 仮に、一票が按分により分割された場合、憲法が認める「一人一票の権利」が阻害されるのではないか。
三及び八について
公職選挙法第六十八条の二第二項及び第三項の規定により、名称又は略称が同一である名簿届出政党等(同法第八十六条の二第一項又は第八十六条の三第一項の規定による届出をした政党その他の政治団体をいう。以下同じ。)が二以上ある場合において、その名称又は略称のみを記載した投票は有効とすることとされており、この有効投票は、同法第六十八条の二第四項及び第五項の規定により、当該名簿届出政党等のその他の有効投票数に応じてあん分し、それぞれこれに加えるものとすることとされている。
投票のあん分については、「同一の氏名、氏又は名の公職の候補者が二人以上ある場合において、その氏名、氏又は名のみを記載した投票を公職の候補者の何人を記載したものか確認し難いものとして無効とすることなく、これを有効として当該候補者のその他の有効投票数に応じ按分して加算しても、それは立法政策上の問題であつて所論憲法の規定に違反するものとはいえない」(昭和三十五年十二月十四日最高裁判所大法廷判決)と判示されているものと承知している。
なお、略称が同一である名簿届出政党等が二以上ある場合においても、名簿届出政党等のいずれを記載したか確認できる有効投票は、あん分することなく当該名簿届出政党等の有効投票数に加えることとなるものである。四 総務省は政党の届出につき申告制をとりながら、実際にはその名称等に関し裁量的審査をし、規制しているのではないか。
四及び六について
政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第六条第一項の規定による届出をする政治団体の名称については、同条第三項の規定において、同法第七条の二第一項の規定により公表された政党又は政治資金団体の名称及びこれらに類似する名称以外の名称でなければならないこととされている。
公職選挙法における政党その他の政治団体の名称及び略称については、一、二、七、十及び十三についてでお答えしたことに加え、その代表者若しくは名簿登載者若しくは名簿登載者としようとする者の氏名が表示され、又はそれらの者の氏名が類推されるような名称及び略称であってはならないこととされている。
総務省及び都道府県の選挙管理委員会並びに中央選挙管理会は、これらについて規定する政治資金規正法及び公職選挙法に従って事務を行っているところである。五 仮に、四でなければ、公序良俗に反する名称(差別的名称、卑猥な名称等)でも、政党の届出をそのまま無審査で受理するのか。
五について
政党の届出について、公序良俗に反する名称が届け出られた事例は確認できず、仮定の御質問に対してお答えすることは差し控えたい。六 政治資金規正法を根拠に、「同一名称の政党」は認めぬ一方で、複数の政党の「同一略称」を認める根拠を具体的に示せ。
七 日本の憲政史上初めて、複数政党が「同一略称」を用いて国政選挙に臨みかねない状況を、総務省は放置するのか。
八 「『意思を示すには正式な政党名を記入してほしい』と総務省は話している」と「共同通信」は十三日に配信しているが、衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙の何れに於いても、全国各地の投票所の投票記載台の上部に掲出されている政党一覧表には、「比例投票」制度導入時から、正式名称と共に「略称」も記されている。この事実は、「略称」での投票を中央選挙管理会が自ら認めているものであり、「共同通信」に示した見解と齟齬を来すと思量するが如何か。更に、「略称」が記載された投票用紙を有効票としてきたのは、「略称」での投票行動に混乱・誤認を生じさせない前提に立った上での歴史的経緯と考えるが、間違いないか。
九 原口一博総務大臣は十七日に総務省で開いた会見で、「今の法律の中では、私たちには止める手立てはない」、「制度的な担保について、国会でもご議論いただければ」と述べているが、直近の国政選挙は本年七月に実施されるため、その実施までに国会での議論の末に一定の方向が得られるのは物理的に不可能と思われる。甚大なる影響を社会全体に及ぼす、こうした「想定外」の事態が発生した場合に、迅速・的確に対処してこそ、政権交代後に掲げる「政治主導」の真骨頂と考えるが如何か。
九、十二及び十四について
公職選挙法における名称及び略称に関する制度については、昭和五十七年に議員提案により設けられたものであることから、その制度を変更するに当たっては、各党各会派において十分に御議論していただく必要があると考えている。十 他方で原口大臣は同じ会見で、「私たちの判断で、AとかBとか言えるかどうか検討してみたい」と発言している。その検討の結果を示されたい。
十一 同じく会見で、新党日本からの質問状に回答がされていない点を質問され、「承知していませんので、後で精査をしたい」と答えているが、精査の後、如何なる指示を出したのか。
十一について
お尋ねについては、原口総務大臣から担当部局に対して、御指摘の質問状の内容について整理の上、回答するよう指示があった。十二 自身も政党人であると同時に、中央選挙管理会を総務省の附属機関に置く総務大臣が、二党間の仲介役として問題解決の労を取る意思はあるか。
十三 今後、「日本」とは異なる名称の「同一略称」問題が、他党を巻き込む形で生じた場合にも、総務省は今回の認識・判断と同じ対応を取るか。
十四 万が一にも、「同一略称」が回避されぬ儘、国政選挙が実施され、混乱・誤認が生じた場合、迷惑・被害を受けた有権者、候補者、報道機関を始めとする国民各位から、統治管理能力という意味合いでの「ガバナビリティ」を問われる事態に陥ると思うが、覚悟の程を問う。
右質問する。
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