2か月ほど前に、ある法案を検討していました。
被選挙権を引き下げる法案です。
乙武洋匡さんが、動画で提案されていました。
動画内での乙武洋匡さんの意見によると、「義務教育終了は社会に出る準備を終えたことを意味し、その時点で選挙権も被選挙権いずれも与えるべき」とのことです。
なるほど、と思いましたのでこれをもとに法案作成を参議院法制局に相談していました。当初は義務教育終了後(つまり15,6歳)に選挙権も被選挙権も引き下げることを想定していました。ただこれですと、18歳からの選挙権が数年前に実現したところ、さらに選挙権の年齢を引き下げることになります。段階を踏むべきと考えて、今回はひとまず被選挙権のみを18歳以降に引き下げることを設定してみました。
さて、法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。
先日、法制局から法案についての回答をいただきましたので公表します。こちら↓が法制局に作っていただいた資料です。
被選挙権年齢の 18 歳への引下げについて
<被選挙権年齢の引下げ自体に関する論点>
① 被選挙権年齢と選挙権年齢の差をなくすことは適当かとの指摘があり得るが、これにどう答えるか。
※ 「一定の公職につくということであれば、やはりある程度の経験を積んで、相当の知識や豊富な経験を必要とするのではないかということで、現在の被選挙権年齢が定められている」旨の政府答弁がある。
② これまで、参議院議員及び都道府県知事に係る被選挙権年齢は他の公職に係
る被選挙権年齢より高くなっており、その差をなくすことは適当か、との指摘
があり得るが、これにどう答えるか。※ 「衆議院議員などの選挙権に比べ五歳高くなっている理由、趣旨でございますが、参議院議員の被選挙権については、二院制における参議院の役割を踏まえ、社会的経験から出てくる思慮分別に着目し、年齢が高く設定されたこと、都道府県知事の被選挙権年齢につきましては、行政の執行に当たる独任制の機関であって相当の経験を必要とすることや、都道府県の規模や事務の性質、管轄区域の広さなどの点を踏まえたものといった説明がなされてきた」旨の政府答弁がある。
※ 国会図書館の調査によると、海外の例では、二院制を採用している国の中で両院の被選挙権年齢に差がない国の割合は 36.5%。<被選挙権年齢の引下げに伴い政策的検討が必要な点>
③ 公職選挙法上の被選挙権を有する者であることを要件とする職についてはど
うするか。18 歳以上に当然に引き下げることでよいか。※ 例えば、都道府県公安委員会の委員には当該都道府県の議会の議員の被選挙権を有する者であることが、教育委員会の教育長及び委員には当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者であることが、それぞれ必要とされている。
④ 少年法の適用対象の年齢の上限(20 歳未満)は、どうするか。
※ 18・19 歳の者が公職に就き、収賄罪を犯した場合等について、少年法を適用し、推知報道の禁止等の特別の措置を講ずることは適切か、という指摘があり得るのではないか。
※ なお、現在、法務省及び与党が少年法の改正について検討中であり、報道では少年法の適用対象の年齢の上限は引き下げない方針と報じられているが、この議論は被選挙権年齢が現状と変わらないことを前提としている。⑤ 他の法令で 20 歳以上等の年齢要件が置かれているものについてどうするか。
※ ①の被選挙権年齢を引き下げる理由の説明の仕方によっては、他の法令で定める年齢要件についても引き下げるべきという結論になることも考えられる。
※ 例えば、銃刀法の猟銃の所持許可の年齢要件は 20 歳以上、民法の特別養子縁組の養親の年齢要件は 25 歳以上とされている。
色々と興味深い論点を提示していただいたように思います。前半の経験うんぬんのところは、「有権者に判断させろ!!!」でいいと思いますが、いかがでしょうか。
現職の議員さんにとって、被選挙権を18歳に引き下げるというのは、若い人に門戸が開かれる分、自分たちが議員でい続けられる可能性を狭めることになるので、この法案が成立するのには色々と困難がありそうですが、ひとまず法案化を目指してみます。