スポンサーリンク

不動産鑑定士に係る懲戒請求を可能とする法案を法制局に相談しました

約2か月ほど前の話になりますが、次のような質問主意書を提出しました。

質問主意書というのは、国会議員が内閣に対する文書による質問と考えてもらっていいと思います。

この質問主意書は、ある方(一般人)からの相談を受けて提出したものです。相談者の方によると、西武信金の融資に協力したものとして、建築士や不動産鑑定士が、融資の際の担保となる不動産物件について不当?な不動産鑑定評価をした可能性があるとのことでした。

質問主意書という形でひとまず形にはなったわけですが、それだけで問題が解決するわけではありません。今後も似たようなことは起こる可能性があります。

そこで、相談者さんからさらに法案の提案をいただきました。

今回の事件のように、建築士や不動産鑑定士に被害を被った場合、被害者がこのような国家資格保持者に対して懲戒請求をかける制度を作ってみてはどうか、それを法案にしてはどうか、というものです。

ちなみに弁護士や司法書士は、一般の方が懲戒請求をかける制度がすでにあります。

というわけで、このような法案作成について、参議院法制局に相談しておりました。色々な国家資格が考えられるわけですが、今回対象としたのはひとまず不動産鑑定士に絞りました。対象を最初から広げすぎて話がややこしくならないようにという配慮からです。

さて、法制局は法案作成において、国会議員のサポートをしてくれるのですが、その際に作成予定の法案の趣旨や意義、その他背景知識など調査したうえで教えていただけるので、私にとって大変勉強になります。

先日、法制局から法案についての回答をいただきましたので公表します。こちら↓が法制局に作っていただいた資料です。

不動産鑑定士に係る懲戒請求について

<御依頼の内容>
不動産鑑定士が不当な鑑定評価等を行った場合に、弁護士と同様に一般人から懲戒請求をすることができるようにするための法改正を検討すること。

○ 不動産の鑑定評価に関する法律(以下「不動産鑑定評価法」という。)では、国土交通大臣は、不動鑑定士が不当な鑑定評価等を行ったときは、懲戒処分として、戒告、1年以内の期間の業務禁止、登録の消除をすることができるとされている(第 40 条)。そして、不動産鑑定士が不当な鑑定評価等を行ったと疑うに足りる事実があるときは、何人も、国土交通大臣等に対して、適当な措置をとるべきことを求めることができ(第 42 条)、「適当な措置」には懲戒処分も含まれるとされているが(資料1)、不当な鑑定評価等により被害を被った者の救済を図る制度とは位置付けられていない。

○ また、御指摘のあった弁護士の懲戒請求については、弁護士法において、何人も、弁護士・弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その弁護士・弁護士法人の所属弁護士会に懲戒することを求めることができるとされている(第 58 条第1項)。懲戒請求は、「申立をする者の個人的利益や満足のために設けられたものではなく、弁護士懲戒制度の運用の公正を担保するため、もつぱら公益的見地から認められたものである」(東京高判昭和49.3.28)とされ、弁護士会の懲戒権の発動を促す申立てにすぎないとされている(資料2)。

○ 以上を踏まえると、不動産鑑定評価法第 42 条に規定する要求と弁護士に係る懲戒請求は、懲戒権の発動を促す手続であって被害者救済のための制度ではないという点において共通しており、御依頼の内容は、現行法上既に規定済みといえるのではないか。

○ なお、不当な弁護士活動によって損害を被った者の救済については、懲戒請求の手続とは別に、民事手続において図られるのが基本となっており、不動産鑑定士の不当な鑑定評価等による被害の救済についても、同様に、民事手続によることを考えるべきではないか。

(以下略)

参議院法制局の見解によると、既存の法律(不動産鑑定評価法や弁護士法)の枠組みで考えていると、相談者さんからの要望を可能とするような法案作成は難しいようです。この枠組みから外れて考えるなどの必要がありそうです。

とりあえず現状を報告させていただきます。

↓もしよろしければ応援クリックお願いします。
人気ブログランキング

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク