先日、Twitterで霞が関の官僚の方々がサービス残業を強いられている?とのことで、何とかしてほしいという要望をいただきました。
当該ツイートを参考にして、中央省庁の残業について参議院調査室に以下の調査依頼を出しました。
・200時間を越える4月の残業時間の99時間への修正は事実か否か?
・事実とすれば、どういった法律違反となるか?
・残業時間の増加に歯止めをかける仕組みが何かあるか?https://t.co/oeiHlj9KJq— 浜田 聡・NHKから国民を守る党・YouTubeのチャンネル登録お待ちしております (@satoshi_hamada) July 20, 2020
霞が関の官僚の方々のサービス残業に関して、調査室を使って調査してみました。
以下、調査結果を紹介します。
(問)200時間を越える4月の残業時間の99時間への修正は事実か否か?
(回答)本件の事実関係について確認困難。 →これは仕方がないです。
(問)事実とすれば、何らかの法律違反となるか?
(回答)法律違反の有無についての回答は困難。
以下、一般論としての記述ですが適宜参考にしていただければと思います。
国家公務員の超過勤務手当は、関係法令に従い、公務のため臨時又は緊急の必要がある場合において、職員が正規の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられて勤務した全時間に対して支給されるものであります。
したがいまして、正規の勤務時間終了後、職員が命令を受けずに在庁している場合には、超過勤務手当は支給されません(「衆議院議員長妻昭君提出国家公務員の残業代に関する質問に対する答弁書(内閣衆質189第166号、平27.4.3)<http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumo
n/b189166.htm>」)。
なお、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)の逐条解説によりますと、同法第16条第1項柱書に「『全時間に対して』とあるのは、いわば当然のことを定めたもので、特別の意味を有しているわけではないが、強いていえば、時間外勤務に対する手当の支給を一定の時間数とか、一定の金額で打ち切るものではないことを表明しているという効用はあろう。」とされております(吉田耕三編著『公務員給与法精義 第5次全訂版』(学陽書房、平
30.9)529頁)。(参考)参照条文
○一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号)(抄)
(正規の勤務時間以外の時間における勤務)
第13条 各省各庁の長は、第5条から第8条まで、第11条及び前条の規定による勤務時間(以下「正規の勤務時間」という。)以外の時間において職員に設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他の人事院規則で定める断続的な勤務をすることを命ずることができる。
2 各省各庁の長は、公務のため臨時又は緊急の必要がある場合には、正規の勤務時間以外の時間において職員に前項に掲げる勤務以外の勤務をすることを命ずることができる。
○一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)(抄)
(超過勤務手当)
第16条 正規の勤務時間を超えて勤務することを命ぜられた職員には、正規の勤務時間を超えて勤務した全時間に対して、勤務1時間につき、第19条に規定する勤務1時間当たりの給与額に正規の勤務時間を超えてした次に掲げる勤務の区分に応じてそれぞれ100分の125から100分の150までの範囲内で人事院規則で定める割合(その勤務が午後10時から翌日の午前5時までの間である場合は、その割合に100分の25を加算した割合)を乗じて得た額を超過勤務手当として支給する。
一 正規の勤務時間が割り振られた日(次条の規定により正規の勤務時間中に勤務した職員に休日給が支給されることとなる日を除く。次項において同じ。)における勤務
二 前号に掲げる勤務以外の勤務
2~5 (略)(問)残業時間の増加に歯止めをかける仕組みが何かあるか?
(回答)法規及び施策の両面から以下のとおり回答。
・法規面
国家公務員の超過勤務につきましては、これまで、人事院が定める指針( 「 超 過 勤 務 の 縮 減 に 関 す る 指 針 に つ い て ( 平 成 21年 2 月 27日 職 職 ―73)」)において年間の上限目安時間が示されておりましたが、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)による労働基準法(昭和22年法律第49号)等の改正も踏まえ、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関
する法律(平成6年法律第33号)に基づき、人事院規則15―14(職員の勤務時間、休日及び休暇)を改正して定めることとされました。具体的には、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、原則として月45時間かつ年360時間の範囲内とし、他律的業務の比重が高い部署に勤務する職員に対しては月100時間未満、年720時間かつ2~6箇月平均80時間等の範囲内とするなどの措置が講じられております。
また、長時間の超過勤務を行った職員の健康確保措置を強化するため、人事院規則10―4(職員の保健及び安全保持)等が改正され、月100時間以上の超過勤務を行った職員等に対しては、職員からの申出がなくとも医師による面接指導を義務付けるなどの措置が講じられております。
これらの措置は、平成31年4月から施行されております。
詳細は、資料1「超過勤務の上限等に関する措置について」(平成31年2月人事院)を御参照ください。・施策面
政府においては、これまでに、資料2「国家公務員の労働時間短縮対策について」(平成4年12月9日人事管理運営協議会決定(平成28年9月14日最終改正))や、資料3「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(平成26年10月17日女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会決定(平成28年1月28日一部改正))等を踏まえ、各種の取組が行われております。
令和2年度においては、内閣総理大臣が定める人事管理運営方針の下、長時間労働の是正について、平成31年4月に導入された超過勤務の上限等に関する制度の適切な運用を行うとともに、徹底した超過勤務の縮減等を行うため、各府省等において、
①職員の勤務状況(超過勤務等の状況)を部局ごとに事務次官・官房長等が直接定期的に把握すること、
②「国家公務員の労働時間短縮対策について」に基づき、勤務時間の適切な管理を徹底するとともに、不要・不急業務の見直し等による業務改善を進め、超過勤務縮減に向けた取組と成果に対する適切な人事評価の実施、国会関係業務を始めとした各府省等にまたがる調整業務の合理化及び効率化に取り組むこと、
③職員の勤務時間の状況を把握するための客観的な方法について具体的措置の検討などを進めること、
④月100時間以上の超過勤務を命じた場合は医師による面接指導を行うことなどに取り組むこと
とされております(資料4「令和2年度における人事管理運営方針について」(令和2年3月31日内閣総理大臣決定)10・11頁)。
色々とありますが、月100時間以上の超過勤務という言葉が何度か登場しています。最初に紹介したツイートの内容の真偽はさておき、99時間へ修正をさせることは医師による面接義務などを避けるためなのでしょう。
霞が関の官僚の方々の過酷な労働については以前から問題になっていることでして、色々な問題が複雑に絡み合っていることが予想され、すぐに何とかできる自信はありませんが、少しでも何とかしたいという意思表示として今回の記事を上げさせてもらいました。
参議院調査室に調査いただき感謝です。