(2020年7月22日追記 参議院調査室の行う調査は、各議員の調査依頼に沿うものであり、調査結果については参議院調査室の見解ではありません。ここで公表している内容は、調査室に調査いただいたことではありますが、あくまで立法調査活動の「補佐」いただいたものであり、私の責任のもとの調査結果として公表させていただくものです。)
国会の衆議院・参議院ともに、それぞれの議員を調査面でお手伝いしてくれる調査室という機関?があります。
衆参両院には、議員活動全般を調査面で補佐するため、それぞれ「調査室」が置かれています。
(中略)
調査業務の一端を紹介すれば、例えば、議案審査では、議員立法を起草するための調査、付託された法律案の提案理由・問題点・利害得失等に係る調査、参考資料の作成、決議や審査報告書・調査報告書の原案作成等を行っています。また、委員派遣等により国内外の行政現場等を視察する際には、日程案を調整した上で、現地に赴く議員に随行し、報告書の原案作成等を行います。さらに、国会議員や議員秘書の方々からの依頼に応じ、法律案等の論点整理、政策課題の問題分析、各種公表資料の収集・分析を行い、議員が本会議や委員会等において質疑・討論等を行う際の準備作業を補佐するなどしています。
これまで調査室には幾度となくお世話になってきました。調査内容については、PDFファイルやワードファイルなど、電子データでいただけるのがありがたいです。
さて、先日この調査室に高速道路のピークロードプライシングに関して調査していただきました。ピークロードプライシングとは何かについては次の説明を拝借します。
ピークロードプライシングとは、交通量が多い時に渋滞を緩和するため通行料を課すことをいう。急ぎでない車は混雑する時間を避けることを望まれているが、通行料の徴収方法に難しさがあるため、通過証を販売する案も考えられている。
ロードプライシングと言えば、東京五輪・パラリンピックにおいてロードプライシング導入の方針です。現在は東京五輪・パラリンピックがどうなるのか分かりませんが。
調査室には、以下のような調査を依頼しています。
(1)日本国内でこのピークロードプライシングが取り入れられている事例があるか?
(2)高速道路のピークロードプライシングに関する国会での議論があるか?
(3)国土交通省のピークロードプライシングに関する取り組みがあるか?
(4)東京オリンピックに向けてピークロードプライシングに関する取り組みがあるか?
これらの依頼に関しての回答は次の通りです。
◆ロードプライシングについて
ロードプライシングは、特定の道路や地域、時間帯における自動車利用者に対して課金することで、自動車利用の合理化や交通行動の転換を促し、自動車交通量の抑制を図る施策で、交通需要マネジメント(TDM)施策の一つとされる。
ロードプライシングの概念は下図のとおり、課金型と料金調整型に区分される。このうち、料金調整型は、特定の有料道路を対象に道路料金を調整することによって当該道路の交通需要を調整するものであり、ピークロードプライシングとは、時間帯の交通量の需要調整を行うものを指す。(1)我が国におけるピークロードプライシングの導入事例
首都高・阪高では、昼間の渋滞緩和を目的に期間限定の料金割引社会実験として、平成17年10月から平成22年3月までの期間において、渋滞時間帯と閑散時間帯とで異なる割引率を適用する措置が講じられた(オフピーク割引、ピーク割引。(例)首都高:6~11時・15~18時:3%割引、11~15時・18~22時10%割引)。【資料①:首都高・阪高資料】
なお、参考までに現在、首都高・阪高では環境ロードプライシング割引が実施されている。
https://www.shutoko.co.jp/efforts/environment/roadpricing/
https://hanshin-exp.co.jp/drivers/etc/etc_waribiki/after/about/index.html(2)高速道路のピークロードプライシングに関する国会における議論
ピークロードプライシングの在り方等、それ自体に関する議論は見当たらないが、参・国交委(H26.5.27、H30.3.23)において、ピークロードプライシングに言及した形で議論がなされているものがあったので、参考までに、当該会議の該当部分を添付。【資料②:会議録(抜粋)】
(3)ピークロードプライシングに関する国土交通省の取組状況
平成27年1月、社会資本整備審議会道路分科会国土幹線道路部会(以下「幹線道路部会」)は、高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針を取りまとめた。同基本方針では、大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の料金体系に関する施策に関して、現行の料金体系を見直し、圏域内において共通する新しい料金体系を確立することが必要としている。この点、実現に向けた取組として、料金体系の整理・統一や起終点を基本とした料金を導入した上で、政策課題を解決するため、対象となる路線や時間帯などを区切り、混雑状況に応じた料金施策等を実施することが必要としている。【資料③:高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針】(12頁参照)
以後、幹線道路部会において、首都圏の料金体系等に関して平成27年7月に中間答申が、平成28年12月に近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系基本方針が、それぞれ取りまとめられている。また、幹線道路部会の下に設けられた中京圏小委員会は、令和元年12月、中京圏の高速道路を賢く使うための料金体系基本方針を取りまとめている。【資料④-1:中間答申のポイント 資料④-2:中間答申本文 資料⑤:近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系基本方針 資料⑥-1:基本方針のポイント 資料⑥-2:基本方針本文】
これらを踏まえ、「料金体系の整理・統一や起終点を基本とした料金の導入」に関し、平成28年4月に首都圏、29年6月に近畿圏において、新たな高速道路料金がそれぞれ導入されるとともに、中京圏は当面、現行料金を継続した上で、名古屋第二環状自動車道の開通に合わせ新たな料金制度を導入するとしている。
【資料③:高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針】(12頁)では、料金体系の整理・統一や起終点を基本とした料金の導入の後、検証結果や環状道路整備の進捗状況等も踏まえ、曜日や時間帯などを区切って、都心経由と環状道路経由の料金に一定の差を設ける措置などから混雑状況に応じた料金の導入を開始する旨記載されている。
なお、令和2年7月、幹線道路部会は、新型コロナウイルス感染症対策に対応した高速道路施策の検討を開始し、秋頃、ウィズコロナにおける高速道路の取組(案)に係る中間とりまとめを行うとしている。当該検討に際し、施策の方向性(たたき台)として、料金所のETC専用化や機動的な料金変更が可能となる料金システム等が示されている。【資料⑦:幹線道路部会(R2.7.2)配付資料】(22頁参照)(4)東京オリパラに際してのピークロードプライシングに関する取組
東京都及び大会組織委員会が取りまとめた「東京2020大会における首都高速道路の料金施策に関する方針」に基づき、東京大会期間中は、夜間(0時~4時)に首都高を利用する交通の料金を5割引し、昼間(6時~22時)に首都高の都内区間を利用するマイカー等に料金を上乗せ(1,000円)するとされている(障害者手帳の保有者が運転・同乗する車両及び福祉関係車両は、事前に申請することで料金上乗せの対象外に)。【資料⑧:東京2020 大会における首都高速道路の料金施策に関する方針(東京都資料)】
東京大会の延期を受け、令和2年4月、第12回輸送連絡調整会議において、首都高の料金施策の適用期間も1年後ろ倒しで実施する方針が示されている。
国内での導入事例はあるようですし、国会で議論もされていますし、国土交通省ではかなり熱心に取り組んでいる様に思えますし、ということで東京五輪・パラリンピックでも導入予定とのことで、いずれは取り入れられるものだと思います。
ただ、私が個人的にこのピークロードプライシング導入の際の注文をつけるとすると、
・正月やお盆休みなど、大渋滞には料金を大幅値上げする。
・渋滞すればするほど料金が上がる仕組みにする。
あたりを導入してはいかがでしょうか?
このような↓渋滞の解決につながる可能性があるかもしれません。
毎年思うのですが、(運送業でどうしても使わざるを得ない方々を除いて)このように↑混雑することがわかっている時に高速道路を利用する人が多いことを不思議に思います。
調査室の方々には調査いただきありがとうございました。
そういえば、こういう質問主意書↓も出しておりまして、ご参考までに紹介します。