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国家公務員法八十一条の三による検事長の定年延長等、公務員法に関する質問主意書 ←浜田聡提出

今回は(も?)、私が参議院に提出した質問主意書を紹介します。2020年2月14日に提出したものです。

質問主意書とは何か?については以前の記事を一部引用させてもらいます。

質問主意書とは(参議院)

特徴

質問主意書の最大の特徴は、本会議や委員会において議題の範囲内で口頭で行う質疑とは異なり、国政一般について問うことができることです。また、内閣の見解を確実に引き出せること、法律案と異なり議員1人でも提出できることも特徴となっています。
(中略)また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。
さらに、答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります。

議員一人で提出することができ、その返答は内閣の統一見解であるということです。政府に問うという性質上、野党議員がたくさん提出しています。

質問主意書(参議院)

質問主意書(衆議院)

で、私の提出した質問主意書はこちら↓。本来は質問書と答弁書は別なのですが、質問→答弁(赤字)の順に配列しました。

国家公務員法八十一条の三による検事長の定年延長等、公務員法に関する質問主意書

 東京高検検事長黒川弘務氏の定年が国家公務員法八十一条の三により延長された。我が党は直接民主主義の採用を予定しているので、個別の検察官の定年延長の是非については国民それぞれの評価に任せることとし、これを機に一般的な公務員法の解釈について質問することとしたい。

一 いわゆる相手方の同意を要する行政行為説(公務員と国や公共団体の関係を契約関係とするのではなく、行政処分関係と解する学説をいう。以下同じ。)について

1 国家公務員法八十一条の三による定年の延長決定は、行政事件訴訟法三条二項にいう処分(いわゆる行政処分)か。

2 相手方の同意を要する行政行為説を採る場合、公務員は自らの意思のみで退職することはできないので、定年で辞めて余生を謳歌したいと思っている公務員個人にとって定年延長は不利益ともなりうる。定年延長がなされた国家公務員は、その取消を求めて人事院に対し審査請求をすることができるか。また、定年延長決定の取消や無効確認、勤務義務の不存在確認等を求めて訴訟を提起することができるか。その際、審査請求の前置は必要か。訴訟提起にあたっては、行政事件訴訟法に規定される訴訟類型のうちどの訴訟類型を使用すべきか。

3 定年延長がなされた国家公務員は、その不服を訴えるべく、人事院に対し行政措置要求をすることができるか。

4 近年、民間企業の人手不足により、採用市場において売り手が有利となる状況が続いていることから、公務員においても特に技術職において採用が困難になっており、倍率一倍を切る、募集に対しそもそも応募がないといった状況が珍しくない。ところが、「臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等について」(平成二十六年七月四日付各都道府県知事、各指定都市市長、各人事委員会委員長宛て総務省自治行政局公務員部長通達。総行公第五十九号)において「二十一年通知の趣旨が未だ必ずしも徹底されていない実態が見受けられ」なる文言が存在するなど、労働関係法制を守ろうとしない地方自治体は少なくなく、勤務条件の同意に必ずしも瑕疵がないとはいえない任用が存在することは明らかである。そうすると、相手方の同意を要する行政行為説を採用する限り、優秀な人材を逃すまいとする地方公共団体は、同意に瑕疵があったとして離職しようとする職員に対し、自らが行った行政処分について職員の同意に瑕疵がなかったと争うことが予想され、「例えば脅迫詐欺に基づいたとき又は法定代理人の同意を得ない未成年者の意思表示であるやうな場合でも、それに対して国又は公共団体の意思表示が有った上は、行政行為は完全に有効成立し、相手方は最早取消権を対抗し得べきものではない。」(美濃部達吉「日本行政法 上巻」(昭和十五年五月二十日発刊)二百四十一頁)状態が擬似的に復活してしまう。勤務条件の同意に瑕疵がある場合は、その相手方の同意を要する行政行為は有効に成立せず、同意の有効性を裁判で争っている間は、当該地方公務員は当該地方公共団体に勤務する義務を有しないと考えるが、政府の見解如何。

5 政府はことあるごとに「公務員に退職の自由はなく、退職には任命権者の行政処分を必要とする」との旨の立場で答弁しているが、これは昭和二十八年四月八日最高裁判所大法廷判決の判示「人格を無視してその意思にかかわらず束縛する状態におかれるのではなく所定の手続を経れば何時でも自由意思によつてその雇傭関係を脱することもできる」を無視するものであり、公務員には退職の自由が存在すると認めるべきであると考えるが、政府の見解如何。また、同判示にいう「所定の手続」とはどのようなものがあるか例示されたい。

6 地方公務員法は、労働基準法十五条二項を除外も読み替えもしておらず、条件さえそろえば地方公務員は労働契約を一方的に解除する権利を有する。存在しない契約を解除することはできないし、私人が一方的意思表示によって取り消せる行政処分が存在するなどという学説は寡聞にして知らない。よって、少なくとも地方公務員と地方公共団体の関係は労働契約関係であり、相手方の同意を要する行政行為説は採用できないと考えるが、政府の見解如何。また、相手方の同意を要する行政行為説を採用するのなら、地方公務員はどのように労働基準法十五条二項で保障された権利を行使すればよいか、労働基準法百十二条の趣旨を踏まえて、その手続きを明らかにされたい。

7 そもそも、地方公務員法の立案の責任者だった角田禮次郎(角田禮次郎が地方公務員法の企画立案者であることについては、第八十回国会参議院地方行政委員会会議録第四号十七頁や、第九十五回国会参議院地方行政委員会会議録第四号九~十頁を参照)は、著書「地方公務員法精義」(昭和三十年十二月五日発刊)の十頁にて、「地方公共団体に勤務する者とは、右の意味における各種の地方公共団体との間に私法上の雇傭契約に準ずる公法上の契約によつて、勤務を地方公共団体に提供するものをいう」と述べていることからして、地方公務員法は、地方公務員と地方公共団体の関係を契約関係であることを前提に起草されたものであることは明らかである。政府は、なぜ条文上も労働契約の存在が明らかであり、地方公務員法の企画立案者が自ら契約関係説を採っているのに、地方公務員と地方公共団体との関係において相手方の同意を要する行政行為説を採用しているのか。

一について
お尋ねについては、個々の学説を前提としたものであり、個々の学説について政府として見解を述べることは差し控えているところであるため、お答えすることは差し控えたい。また、政府としては、個別具体的な事件における裁判所の判断に関するお尋ねについては、お答えすることは差し控えたい。その上で申し上げれば、一般職の国家公務員の国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第八十一条の三の規定による勤務期間の延長は、人事院規則一一-八(職員の定年)第八条において、勤務期間の延長を行う場合には、あらかじめ職員の同意を得なければならないと規定されており、また、一般職の国家公務員の辞職は、人事院規則八-一二(職員の任免)第五十一条において「任命権者は、職員から書面をもって辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとする。」と規定されていることから、勤務期間の延長及び辞職については、これらの規定に沿った運用がなされるべきものである。
一般職の地方公務員については、勤務条件に不服がある場合には、地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第四十六条の規定に基づき勤務条件の措置の要求を行うことができるとされているが、そのことは当該一般職の地方公務員の採用の効力に影響を及ぼすものではないと考えている。また、その採用、離職等は、地方公務員法等の規定に基づき行われるものであり、一般職の地方公務員から所属する地方公共団体に辞職の申出があった場合には、特別の理由がない限り当該地方公共団体はこれを承認すべきものと考えている。

二 検察庁法等について

1 国家公務員法八十一条の三によって定年が延長された検察官の身分は検察官のままか。それとも、検察庁法二十二条により検察官としては退官していることとなるから、検察事務官となるのか。

二の1について
国家公務員法第八十一条の三第一項の規定により勤務期間が延長された検察官は、引き続き、検察官の身分を有する。

2 法務大臣は、六十四歳以上の検察事務官に対し、検察庁法三十六条を適用して、検察官の事務を取り扱わせることができるか。

二の2について
検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第三十六条に規定する要件を満たす場合には、可能である。

3 国家公務員法八十一条の三は「定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」と定められているから、国家公務員法八十一条の二第一項によって退職するのではなく、検察庁法二十二条によって退官する検察官には適用できないように思われるが、政府の見解如何。

4 昭和五十六年四月二十八日の衆議院内閣委員会にて、国家公務員法八十一条の三を追加する国家公務員法の一部を改正する法律案を審議する際、政府は、「検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。」と答弁している。前記二の3にて検察官にも国家公務員法八十一条の三を適用できるとする場合、これは法令解釈を変更したと理解してよいか。解釈変更があったとすれば、いつ行われたのか。

二の3及び4について
一般職の国家公務員の定年制度の導入等を内容とする国家公務員法の一部を改正する法律(昭和五十六年法律第七十七号)が制定された昭和五十六年当時、検察官については、国家公務員法第八十一条の三の規定は適用されないと理解していたものと認識しているが、検察官も一般職の国家公務員であるから、本年一月、一般職の国家公務員に適用される同条の規定が適用されると解釈することとしたものである。

なお、本質問主意書については、答弁作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法七十五条二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から三十日以内には答弁されたい。

長い質問主意書に対して根気強く答弁を書いていただき、感謝しています。

現在、国会ではこの件が最も議論されていると言っても過言ではないかもしれません。

ややこしいですが、下の朝日新聞の記事にあるポイント

不可解な高検検事長の定年延長 詳細語らぬ首相や法相(朝日新聞2020年2月4日 7時30分)

国家公務員法
→法律に別段の定めのある場合を除き、定年は60歳
→退職により公務の運営に著しい支障があれば引き続き勤務

検察庁法
→検察官は63歳、検事総長は65歳で退官

は豆知識として知っていてもいいかもしれません。

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