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HPVワクチン接種の積極的勧奨再開に関する質問主意書 ←浜田聡提出

今回は、私が参議院に提出した質問主意書を紹介します。2019年12月2日に提出したものです。

質問主意書とは何か?については以前の記事を一部引用させてもらいます。

質問主意書とは(参議院)

特徴

質問主意書の最大の特徴は、本会議や委員会において議題の範囲内で口頭で行う質疑とは異なり、国政一般について問うことができることです。また、内閣の見解を確実に引き出せること、法律案と異なり議員1人でも提出できることも特徴となっています。
(中略)また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません。
さらに、答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります。

議員一人で提出することができ、その返答は内閣の統一見解であるということです。政府に問うという性質上、野党議員がたくさん提出しています。

質問主意書(参議院)

質問主意書(衆議院)

で、私の提出した質問主意書はこちら↓。本来は質問書と答弁書は別なのですが、質問→答弁(赤字)の順に配列しました。

HPVワクチン接種の積極的勧奨再開に関する質問主意書

 子宮頸がんは子宮下部の子宮頸部に生じるがんである。日本産科婦人科学会ウェブサイトによると、子宮頸がんの発症のピークは以前は四十から五十歳代であったが、最近は二十から三十歳代の若い女性に増えてきており、三十歳代後半がピークとなっている。国内では、毎年約一万人の女性が子宮頸がんにかかり、約三千人が死亡しており、また、平成十二年以後、患者数も死亡率も増加している。若い女性が罹患するがんということで、子宮頸がん対策は少子化に悩む我が国にとって重要であると考える。
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因であり、このウイルスは性的接触により子宮頸部に感染する。HPVは男性にも女性にも感染するありふれたウイルスであり、性交経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があるといわれている。HPVに感染しても、九十%の人は免疫の力でウイルスが自然に排除されるが、十%の人は感染が長期間持続する。このうち自然治癒しない一部の人は異形成とよばれる前がん病変を経て、数年以上をかけて子宮頸がんに進行する。
現在はHPVの感染を予防することにより子宮頸がんの発症を防ぐHPVワクチンが開発されており、世界の七十カ国以上において国のプログラムとして接種が行われている。現在日本で承認されている(二価または四価の)HPVワクチンにより、子宮頸がんの六十から七十%を予防できると考えられており、WHOはその有効性と安全性を確認し、性交渉を経験する前の十歳代前半に接種をすることが推奨されている。
日本ではHPVワクチンは平成二十五年四月に予防接種法に基づき定期接種化された。しかし、接種後の様々な症状が報告されたことにより、わずか二ヶ月後に接種の積極的勧奨が中止された。その後も一部の研究者による科学的根拠のないデータや報道等により、国民の正しい理解を得られないまま、すでに六年半もの長期にわたり積極的勧奨が再開されないままとなっている。現在、国内ではHPVワクチンは対象者に対する定期接種であるものの、接種の積極的勧奨が中止されているという奇妙な状態である。これにより、HPVワクチンが公費助成の対象となった平成二十二年度から接種の積極的勧奨が中止されるまでの間の主な接種対象世代である平成六年度から平成十一年度生まれの接種率が七十%程度であったのに対して、接種の積極的勧奨の中止後の主な接種対象世代である平成十二年度生まれ以降では接種率が劇的に低下している。そのため、このままでは平成十二年度生まれ以降の女性の子宮頸がん発生のリスクはワクチン導入前世代と同程度に戻ってしまうことが推計されている。
WHOは最新の世界各国における解析結果と科学的根拠に基づき、HPVワクチンの安全性と有効性を繰り返し確認する一方で、日本において若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されていない日本の政策決定を批判している。
令和元年十一月二十六日、自由民主党においてHPVワクチン接種の積極的勧奨再開を目指す議員連盟が立ち上がったとの報道があった。このように現在、国内ではHPVワクチン接種の積極的勧奨再開を求める声が日増しに大きくなっており、厚生労働省はその決断をすべき時が来ていると私は考える。
以上のような状況を踏まえ、以下質問する。

一 平成二十五年にHPVワクチン接種の積極的勧奨が中止となった原因と思われる接種後の有害事象について、積極的勧奨の中止から六年半をこえる日時が経過した現在、有害事象に関する様々な研究データがあると思われる。HPVワクチン接種後に重篤な有害事象(注射後の注射部位における一時的な痛み等の重大でない有害事象を除く。)が生じることを、統計的有意差をもって証明した研究データが存在しているか否か、お答えいただきたい。

一について
ヒトパピローマウイルスワクチン(以下「HPVワクチン」という。)接種を含むワクチン接種後の副反応であることが疑われる症状については、厚生労働省において、予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)第十二条第一項並びに医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第六十八条の十第一項及び第二項の規定に基づき、医師等からその情報の収集を行っているが、お尋ねの「HPVワクチン接種後に重篤な有害事象(注射後の注射部位における一時的な痛み等の重大でない有害事象を除く。)が生じることを、統計的有意差をもって証明した研究データ」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

二 稀ではあるものの、HPVワクチン接種後に重篤な有害事象があることを完全に否定することはできない。不幸にもそのような有害事象が生じた方々に対して、その後のケアや妥当な補償をすべきと考えるが、政府の見解如何。また、現在政府がすでに行っている有害事象が生じた方々に対する施策があれば併せてお答えいただきたい。

二について
HPVワクチン接種を含むワクチン接種によって生じた健康被害については、予防接種法、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法(平成十四年法律第百九十二号)等に基づく救済制度等があり、通常の医学的見地によれば接種後の症状の原因として予防接種以外の要因も考えられるが接種後の症状が予防接種によって起こることを否定はできない場合も救済の対象としているところである。また、政府としては、HPVワクチン接種後に症状が生じた方への対応として、厚生労働省が平成二十七年九月十七日に公表した「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する当面の対応」に基づき、健康被害の救済に係る速やかな審査、広範な疼痛又は運動障害を中心とする多様な症状を呈する者に対して、より身近な地域において適切な診療を提供するために、都道府県知事が指定した協力医療機関の医師向けの研修の実施等に取り組んでいるところである。

三 HPVワクチン接種の積極的勧奨を再開した場合に生じる社会的な利益と不利益について、子宮頸がんの予防効果を利益と考え、前記一のような接種後の重篤な有害事象の発生を不利益と考えた場合、利益の方が不利益よりも圧倒的に勝ることが周知されつつある。そのため、前述のような積極的勧奨再開を求める声が大きくなっていると思われるが、HPVワクチン接種の積極的勧奨再開に対する現時点での政府の見解如何。

三について
HPVワクチンの定期接種の積極的な勧奨の在り方を含む接種の在り方については、今後の薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会及び厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の合同会議における議論等を踏まえ、総合的に判断してまいりたい。

四 一般論として、政策を決定する際に、前記三のように政策実施後の利益と不利益を比較することが重要であると考える。HPVワクチン接種の積極的勧奨再開については、ワクチン接種後の有害事象の発生という不利益のみを強調する声があり、その声が積極的勧奨再開を妨げる大きな要因になっているように思われる。HPVワクチン接種の積極的勧奨再開に限らず、政策を決定する際に政策の不利益のみを強調する声は、政策実現の大きな妨げとなると考えるが、政府としてこのような声に何らかの対策を考えているのであれば伺いたい。

四について
御指摘の「政策を決定する際に政策の不利益のみを強調する声は、政策実現の大きな妨げとなる」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、政策の決定に当たっては、幅広く意見を聴くとともに、科学的根拠等を踏まえつつ、適切に判断していく必要があると考えている。

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